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VOL57「マンション管理適正評価制度」業界団体がマンション管理の質を5つ星で評価する制度 執筆:住宅ジャーナリスト/山本久美子

2022年5月18日

国土交通省によるマンション管理計画認定制度が2022年4月1日からスタートしたが、同時にマンション管理会社の業界団体である「一般社団法人マンション管理業協会」による評価制度もスタートした。どちらも客観的にマンションの管理の質を評価する制度ではあるが、管理業協会の評価制度は、国の制度とは目的や評価項目が異なるものになっている。

マンション管理業協会「マンション管理適正評価制度」

マンション管理を5つのカテゴリーで総合的に評価する(出典:マンション管理業協会「マンション管理適正評価制度」パンフレットより転載)

マンション管理適正評価制度の評価項目は
5カテゴリー30項目と広範に

マンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」誕生の背景には、管理の質が市場で評価されていないことがある。客観的に評価する基準を作って、市場に情報開示していくことを目的に、管理業協会は2019年に『マンション管理適正評価研究会』を立ち上げ、研究会で検討を重ねた結果、2020年3月に報告書をとりまとめた。その「とりまとめ」を基にブラッシュアップして評価制度を構築したのが、「マンション管理適正評価制度」だ。

国の「マンション管理計画認定制度」(以下、認定制度)(詳しくは、「話題の不動産キーワードvol.56」参照)の目的は、高経年化したマンションが急増していることから、主にマンションの老朽化を抑制することにある。これに対して、管理業協会の「マンション管理適正評価制度」の目的は、市場において管理の質を総合的に見える化することを目的としている。同時期に制度作りが進められたが、そもそもの目的が異なるため、評価項目や評価方法が異なっている。

国の認定制度の認定基準は、管理組合が維持管理を適正に行えるルールになっているか、大規模修繕工事が実施できる費用を積み立てられる計画になっているかなど、主にマンションの維持管理計画を重視した16項目(地方公共団体で独自の認定基準も追加できる)。認定基準を満たしたマンションだけが、認定される制度となっている。

一方、管理業協会の評価制度は、マンションの管理に総合的に求められる30項目が評価対象で、より広範に管理の質を見る制度となっている。国の認定制度と同じ項目については、同じルールを適用するように調整も行われている。そのため、管理業協会の評価制度と国の認定制度の両方をまとめて申請することもできる。

具体的には、冒頭の図のように「1.管理組合体制」「2.管理組合収支」「3.建築・設備」「4.耐震診断」「5.生活関連」の5つのカテゴリーに分類され、それぞれの項目は○か×かではなく、状況に応じたポイント制で評価される。

たとえば、国の認定制度の管理組合の運営に関する項目では、管理組合の総会の議事録の保存まで求めていないが、管理業協会の評価制度では、直近5年間の議事録の保存を求めており、議事録が保存されていない場合はマイナスポイントとなる。また、「3.建築・設備」では、マンションに義務付けられたさまざまな「法定点検」(エレベーターや消防設備の点検や水質の検査など)を行っているかといった項目も含まれているほか、「4.耐震診断」「5.生活関連」のような、国の認定制度にはないカテゴリーも設定されている。

両者の違いをまとめると次のようになる。

■「マンション管理適正評価制度」と「管理計画認定制度」の違い

運営 制度 地域 審査項目 判定 有効期間
地方公共団体 マンション管理
計画認定制度
管理適正化推進計画を作成した地方公共団体内 16項目
「1.管理組合の運営」「2.管理規約」「3. 管理組合の経理」「4. 長期修繕計画の作成及び見直し等」「5.その他」
認定(○×) 5年間
マンション管理業協会 マンション管理
適正評価制度
全国 30項目
「1.管理組合体制」「2.管理組合収支」「3.建築・設備」「4.耐震診断」「5.生活関連」
6段階(無星〜5つ星) 1年間


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