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VOL.59

ワークスペース付きマンション

コロナ禍でニーズが高まったマンション内のワークスペース

執筆不動産コンサルタント 岡本郁雄

2023

5.17

新型コロナウイルスによる脅威は、人々のライフスタイルに大きな影響を与えた。なかでもテレワークの普及は、多くの人に働き方の変化を促すとともに、自宅で働きやすい環境の整備などの課題を顕在化した。

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「パークタワー勝どきミッド/サウス」のコワーキングスペース(物件紹介リリースより)

コロナ禍でテレワークが普及、自宅にワークスペースのニーズ

2023年4月に内閣府から発表された「第6回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によれば、コロナ禍発生以降、テレワークの実施率は全国的に上昇。東京23区では2023年3月時点で5割を上回る人が、地方圏でも2割超の人がテレワークを行っている。

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「第6回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」地域別のテレワーク実施率(出典:内閣府)

また、コロナ禍が収まりつつある中でも、テレワークを今後も積極的に採用する企業も現れている。こうした働き方の変化は、部屋数の多い一戸建てなどのワークスペースを身近に確保できる住まいのニーズを高めている。

リクルートが実施した「新築分譲マンション・一戸建て商品ニーズ調査(2021年)」によれば、「住宅・住宅設備(スペース)の必要性/変化」について、「家族それぞれが、一人で仕事や趣味に集中できるスペースがあること」を挙げている人が22.7%に上っている。コロナ禍が収束した後でも必要だと思うかを聞いた場合も変わらず、「家族それぞれが、一人で仕事や趣味に集中できるスペースがあること」は、23.9%の人が希望している。

また、新築分譲マンション検討者に対して「マンションの自室部分のワークスペースに関する希望」について聞いたところ、「費用が変わらないならほしい」とする人が半数近くを占めるいっぽうで、「多少費用が上がってもほしい」という人は5%前後に留まり、必要を感じるが価格には反映しにくいことを示している。

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新築分譲マンション検討者 専有部ワークスペースの希望(出典:リクルート「新築分譲マンション・一戸建て商品ニーズ調査(2021年)」)

コロナ禍以前から少なからずテレワークの動きはあり、戸数規模の大きな新築マンションでは、マンション内の共用施設の中にラウンジやライブラリーに加え、スタディルームやワークブースを設けている物件もあった。こうしたスペースは、テレワークスペースとしても利用されていた。

ただし、テレワークのできる共用空間で重要なのは、無線LAN(Wi-Fi)でインターネットに自在に接続できること。共用のワークスペースがあっても、インターネットにスムーズに接続できなければ仕事がはかどらない。昨今分譲されている新築マンションでは、こうしたニーズを反映して、共用スペースでも無線LAN(Wi-Fi)によってインターネットにスムーズに接続できるマンションが増えている。

個室ブース付きのコワーキングスペースを設けたマンションが分譲・賃貸で次々に誕生

2020年の新型コロナウイルス感染拡大により、マンションの共用部の在り方も変化した。テレワークニーズに応え、コワーキングスペースなどのワークスペースを設けるマンションが次々に登場した。

例えば、2020年11月に販売がスタートした、三井不動産レジデンシャル、鹿島建設、清水建設が売主の「パークタワー勝どき ミッド/サウス」では、約300平方メートルものコワーキングスペースを提案(冒頭の完成予想イラスト参照)。Wi-Fiでの通信環境はもちろん、コピー機、電話ブース、自動販売機等を設置し、備品貸し出し等のコンシェルジュサービスも提供している。LANケーブルや電源、大型モニターを完備した個室ブースもコワーキングスペース内に設置され、さらに複数人が利用できる会議室も用意されている。まさにオフィスと遜色ない実用的で働きやすい空間になっている。

こうしたワークスペース付きマンションは、賃貸マンションでも登場している。三菱地所レジデンスが2020年に立ち上げた「The Park habio SOHO」(ザ・パークハビオ ソーホー)は、1 階にコワーキングスペースを併設した賃貸マンションの新たなシリーズだ。都心部の賃貸マンション内に十分なワークプレイスを確保して24時間利用できることで、居住者は出社せずに働くことが可能。個室タイプの集中ブースやコワーキングスペース専用のインターネット設備も用意されているほか、スペース内には会議室や自動販売機もあり、快適なオフィス用家具も配置されている。なお、法人の登記も可能だ。

分譲マンションでは、間取りのカスタマイズでワークスペースを設ける

分譲マンション、賃貸マンションともに、十分なコワーキングスペースを設けられるのは、ある程度規模のあるマンションになる。小・中規模のマンションの場合、ワークスペースは専有部内になることが多いだろう。部屋数が多ければ、ワークスペースとして利用しやすいが、価格上昇で専有面積が狭くなる傾向もあり、予算を考えると難しいのが実情だ。

そうした中で、専有部内に個室スペースであるDENの設置や仕事場をカスタマイズできるマンションが提案されている。その中でも、提案が目立つのが収納スペースのカスタマイズによるワークスペースのプランだ。

例えば、「ザ・パークハウス 朝霞台レジデンス」では、必要な時だけワークスペースとして活用できる、多用途に使用可能な「カスタムクローゼット」を導入。可動棚を使って空間をカスタマイズすることで、収納空間にするだけでなく、作業台を設けて一人で籠れるワークスペースとして利用することができる。こうした収納スペースのカスタマイズで重要なのは、コンセント電源が設けられていること。パソコン用の電源があらかじめ用意されていれば、テレワーク用にカスタマイズしやすいだろう。

近年、多くのマンションで採用されるようになった、ウォールドアも注目だ。ウォールドアは、床から天井までの高さがあり、間仕切りができるドア。夫婦共働きで互いにテレワークをする際には、リビングと隣接する洋室をフレキシブルに間仕切ることで、それぞれ独立した空間を確保できる。ライフスタイルが多様化する中で、自由度の高い間取りは今後もっと高く評価されるだろう。

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