トップ>話題の不動産キーワード>VOL.38 民法改正:瑕疵(かし)担保責任から契約不適合責任へ
※記載内容は、情報公開時点の法令並びに執筆者による情報に基づいています。
2017年06月21日
民法改正で、売主の責任範囲(買主が請求できる範囲)が変わる
平成29年5月26日に改正民法が成立した。民法の債権関係の部分の抜本的な改正は、明治29年に民法典が制定されて以来、約120年ぶりとなる。時代の変化に対応して、判例などで確立したルールを明文化したり、消費者に分かりづらいものを明確に規定したりなどの改正が行われているが、不動産の売買や賃貸借などの取引については、何が変わったのか、主なポイントを確認しておこう。
今回の改正で最大のポイントとなるのは、不動産売買に関して「瑕疵担保責任」の考え方がなくなることだ。「瑕疵担保責任」とは、事前に知らされていなかった重大な欠陥などがあった場合、売主に対して、損害の賠償を請求できるもので、住むこともできないほどの欠陥であれば、契約の解除を請求することも可能となっている。
→ 「瑕疵担保責任」について詳しくは、「不動産基礎知識:買うとき「9-1 売買契約の基礎知識」を参照
瑕疵の概念が分かりづらいことに加え、買主の過失で瑕疵を見落とした場合に救済されないことなどを考慮しようという背景から、改正後の民法では「契約不適合責任」の考え方に代わる。客観的に欠陥かどうか判断するのではなく、契約の趣旨、目的に適合しているかどうかで判断するというものだ。
これによって、契約の解除や損害賠償だけでなく、代金の減額、補修をして目的に適合する(住めるようにする)などの追完も可能にして、弾力的な運用ができるようになる(上の表を参照)。
また、瑕疵担保責任では、売主が無過失でも契約解除と損害賠償責任を負う必要があり、損害賠償責任を負うのは「信頼利益」までだった。契約不適合責任になると、契約解除は売主が無過失でも可能だが、損害賠償責任は売主に過失がある場合に限定され、「履行利益」にまで責任が及ぶことになる。
法律用語なのでちょっと分かりづらいが、「信頼利益」とは、購入した物件に欠陥があった場合に、買主が欠陥はないと信頼したことによって生じる損害をいい、「履行利益」とは、契約通りに履行されていれば被ることのなかった損害をいう。履行利益にまで及ぶということは、住宅や土地を利用したり、転売したりする場合の利益を失ったことにまで責任が及ぶ可能性があるということになる。
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