トップ話題の不動産キーワード>VOL.2 マンションの免震・制震構造:注目される「免震」構造のメリットとデメリット

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VOL.2 「マンションの免震・制震構造」耐震性に加え、デザイン性でも注目される免震マンション

2012年5月16日

免震イメージ図(提供:(有)エムエイチスリー)

免震イメージ図(提供:(有)エムエイチスリー)。免震装置により地震の揺れが低減される。そのため、建物への損傷が少なく、室内の家具も転倒しにくくなる。

注目される「免震」構造の
メリットとデメリット

地震力を低減させること以外に、「免震」建物は、揺れが伝わりにくいことから、建物の柱や梁を細くできる利点が生まれる。その最たる効用が従来3~5階建て程度が限界とされていた壁式構造の中高層化である。10数階建ての壁式構造が実現することで、見た目にすっきりとしたデザイン性に富んだ中高層マンションが、少しずつではあるが普及し始めている。よって、建材の削減、広々とした開口部で使いやすい住空間、これらが免震マンションの二次的なメリットといえよう。
また、耐震基準を満たしていない既存の建物を免震にリフォーム(「免震レトロフィット」という)することで、意匠の優れた外観をそのままに耐震化を果たし、存続させることも可能である。ル・コルビジェが設計した「国立西洋美術館」や赤煉瓦の「JR東京駅舎」などがその代表例。
一方、デメリットはコスト増だ。柱や梁を小さくできても、免震装置を据え置く「免震ピット」の施工費や一体数百万円の「免震装置」などのコストが上回るため、総じて建築費は一般的な耐震構造よりも高くなる場合が多いようだ。

壁式構造とは、壁面や床板などの平面的な構造材を組み合わせた、柱を持たない構造で、主に低層のマンションに多用される。中高層のマンションの場合は、柱や梁を一体化させたラーメン構造が多い。

●今後の課題は、使う側の免震に対する「正しい知識」

免震マンションに住むにあたっては「正しい知識」が必要であろう。積層ゴムが縦揺れには効果を発揮しないことに関しては、多少なりとも理解されているようであるが、建物の重みで積層ゴムの高さが減少する「クリープ変位」や地震発生後に建物が元の位置に戻らない「残留変位」が、設計に加味されていることも認識しておきたい。
さらに、免震マンションに住むうえで、最も注意すべきことは、建物の可動範囲にモノを置かないなど管理上の注意を怠らないことだ。免震は地盤と建物が異なる揺れ方をするため、「クリアランス」と呼ばれるスペースを地上や地下に確保しなければならない。2011年に実施した日本免震構造協会の調査では、「クリアランススペースにモノを置くなどして正常に作動しなかった例が少なからずあった」と報告されている。優れた構造技術は、正しい知識と管理の実践を伴ってはじめてその効果を発揮する。



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