トップ不動産基礎知識:貸すときに知っておきたいこと6.賃貸借契約を結ぶ:6-3 原状回復の取り決めについて
退去時の原状回復に関してはトラブルが多いため、
契約締結前に、原状回復にかかわる契約内容をしっかり確認するようにしましょう。
国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(以下「ガイドライン」)では原状回復を以下のように定義しています。
原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反*、その他通常の使用を超えるような使用による損耗、毀損(以下「損耗等」といいます)を復旧すること。
なお、ガイドラインでは、建物の損耗等の復旧にかかる負担を分かりやすくするために、損耗等を以下の3種類に区分しています。
*善管注意義務:借主は借りている部屋を、相当の注意を払って使用、管理しなければならないということです。そのため、例えば結露のように、発生すること自体は仕方ない現象でも、それを放置して適切な手入れをしないがために、カビなどの被害を拡大させたという場合などは、善管注意義務に違反したとして、借主の責任とされる可能性があります。
ガイドラインでは(3)の損耗のみを借主が負担すべきとしています。例えば、次の入居者を確保する目的で行う設備の交換、化粧直しなどのリフォームについては、(1)(2)の経年変化及び通常使用による損耗等の修理ですから、貸主が負担すべきこととなります。
また、このほかに、震災等の不可抗力による損耗、上階の居住者など、借主とは無関係な第三者がもたらした損耗等については、借主が負担すべきではないとしています。
→ 国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」はこちら
トラブル回避のため、以下の点に注意をしましょう。
原状回復をめぐるトラブルの大きな原因として、入居時の物件確認が不十分であることが挙げられます。特に賃貸借の期間が長期に及ぶ場合には、時間の経過に伴って、入居時の状況や損耗の程度などがあいまいになるため、退去時の責任の所在等がはっきりしなくなることが考えられます。そのため、入居時に、室内の現況、損耗等などを記録に残して、貸主、借主双方で確認をしておくことがトラブル回避のためには有効でしょう。
契約時には、ガイドラインに沿って原状回復義務の範囲を定めるようにしましょう。なお、国土交通省の賃貸住宅標準契約書では、通常の使用に伴う損耗等については、借主が原状回復義務を負わないことを明らかにしています。
→ 「借りる:10-2 原状回復の具体例」を参照
なお、ガイドラインでは、借主に原状回復にかかわる特別の負担を課す特約の要件を以下のように定めています。これらの要件を満たさない場合には、特約が無効となる可能性もあるとしています。
通常の賃貸事業のように費用をかけて修繕や入居者募集を行うことは難しいけれど、現状のままであれば貸してもいいという空き家等の所有者のニーズと、自分の好みの模様替えを行って生活を営みたいという入居者のニーズが一致する事例もあることなどから、国土交通省では、柔軟な賃貸借契約によって個人住宅を活用するためのガイドラインの整備を行っています。
このガイドラインでは、貸主が現状のまま、または一部のみ修繕した状態で低額で賃貸し、借主が自費で修繕やDIYを行う「借主負担DIY」の指針を新たに策定しています。借主負担DIYの賃貸借契約の場合は、DIYを施した部分については退去時の原状回復義務を免除させる仕組みになっています。
→ 借主負担DIY賃貸借については、「国土交通省・最新の動きvol.67」を参照