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「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」の最終報告について・「借主負担DIYの賃貸借」と「適切な空き家管理」の指針をとりまとめ

2014年6月11日

Report
国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
 

国土交通省では、平成25年9月に「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」を設置し、個人住宅の賃貸流通の円滑化に必要な仕組みや契約方法、取引ルールの枠組み等を検討してきましたが、今般、最終報告書をとりまとめ、所有者(貸主)と利用者(借主)双方のニーズや懸念事項に対応した個人住宅の賃貸流通に資する指針(ガイドライン)を作成・公表しました。
今回はその最終報告書についてご紹介します。

「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」についてはVol61参照

検討会における調査検討の方法

検討会においては、既存データやアンケート調査の実施により、個人住宅の管理や賃貸に関する現状や賃貸流通が進まない原因を地域別(都市部/地方部)、種類別に把握・分析するとともに、先進的な取り組みを行っている地方公共団体等へのヒアリング結果を踏まえ、個人住宅の賃貸流通の円滑化に必要な仕組みや契約方法、取引ルールの枠組み等が検討されました。

個人住宅の賃貸流通を促進するための指針

上記検討を踏まえ、以下3つのガイドラインをとりまとめました。
(1)「取組み推進ガイドライン」(報告書第5章)
既存住宅ストックを活用した持ち家の賃貸事業化や住み替えの促進による賃貸住宅市場の拡大は住生活の向上や空き家問題への対応にも寄与することが確認されています。
しかしながら、これまで取引経験のない空き家等の所有者やUIターン等による移住希望者が、円滑に住宅の賃貸借取引を行うためには、地元の地方公共団体やNPO法人、不動産事業者などが官民連携の推進体制を整備し、情報提供や相談窓口の整備など、所有者(貸主)と利用者(借主)の双方のニーズや懸念事項に的確に対応することが求められます。
その際、個人住宅を含めた民間賃貸住宅の流通量が相当程度あり、賃貸市場が成立している都市部と、持ち家比率が高く、賃貸住宅の少ない地方部とでは、求められる対応策も自ずと異なってくることから、地域のニーズに対応した取り組みを推進する必要があります。
そこで、本ガイドラインでは、地方公共団体、NPO法人及び地域の事業者等が、貸主及び借主双方のニーズや希望を踏まえ、連携して取り組むべき対策について記載しています。

1:大家さん(空き家所有者)の不安に対する解決
2:借主の不安に対する解決
3:行政・宅建業者の不安に対する解決

(2)「賃貸借ガイドライン」(報告書第6章)
主に地方部において、地方公共団体が空き家を借り上げて定住対策のための住宅として確保したり、借主が自費で修繕やリフォームを行う形の、事業用賃貸物件にはあまり見られない、柔軟な賃貸借契約によって個人住宅を活用するなどの新たな取組みの動きが見られます。
この背景には、通常の賃貸事業のように費用をかけて修繕や入居者募集を行うことが難しいが、現状のままであれば貸してもいいという空き家等の所有者のニーズと、自分の好みの模様替えを行って生活を営みたいという入居者のニーズが一致したところがあり、今後の賃貸住宅市場の活性化を図る上で有効な方策になると考えられます。
しかしながら、個人が自宅等を賃貸化して事業を営むためには、法制度や契約に関する一定の知識やノウハウが求められるため、これまで事業経験のない住宅所有者でも、少ない負担で円滑に個人住宅の賃貸化(CtoC※1)が行いやすくなるような、賃貸借契約の指針となるガイドラインの整備を行い、住宅ストックを活用した賃貸流通市場の整備を図ることが必要です。 
そこで、本ガイドラインでは、貸主が修繕を行わず現状有姿または一部要修繕状態のまま賃貸し(賃料を相場より安く設定)、借主が自費で修繕やDIY※2を行う借主負担型の賃貸借契約の指針を新たに策定しています。

※1:CtoCとは、一般消費者(consumer)間の取引のことです。
※2:DIYはdo it yourselfの略語で、一般的には、専門業者に頼らず自らの手で補修や組み立て、日曜大工等を行うこととされていますが、本ガイドラインでは、借主が業者に発注して好みの設備更新や模様替えを実施することも含めています。

DIY型も含めた賃貸借のタイプ

(3)「管理ガイドライン」(報告書第7章)
個人住宅の取引を円滑に行う上では、市場の取引にふさわしい、適切に維持管理された住宅の確保が必要になってきますが、空き家を含めた個人住宅の管理については、様々な事業者による管理サービスの展開が見られつつあるものの、全国的に十分な規模の市場が形成されているとは言いがたい状況にあります。
今後、空き家の増加が引き続き見込まれる中、個人住宅の管理を促し、良好な住宅ストックを確保するとともに、住宅所有者が適切に管理サービスを選択できるよう、賃貸借ガイドラインと併せて個人住宅の賃貸流通を進めるための枠組みを整備する必要があります。
そこで、本ガイドラインでは、空き家や留守宅の管理の必要性、所有者が管理サービスを選択する際の確認事項、所有者が管理業者を選ぶ際の留意事項などの指針を新たに策定しています。

個人住宅の管理業務の内容

個人住宅の賃貸活用ガイドブック

国土交通省では、以上の「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」の最終報告書をもとに、地方公共団体や事業者の方々向けに賃貸借契約や住宅管理のポイントについて説明する「個人住宅の賃貸活用ガイドブック」を作成し、個人住宅の賃貸流通の促進に向けて、(1)(2)(3)のガイドラインに沿って、官民が連携し適材適所で対応することの重要性を呼びかけています。
消費者の皆様におかれましても、各ガイドライン及び官民の各取り組みをご確認いただき、個人住宅の賃貸を含め、ライフスタイルに応じた住宅活用のあり方をご検討いただきたいと思います。

※執筆の内容は、2014年5月末時点によるものです。

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