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不動産基礎知識:買うときに知っておきたいこと

9.売買契約を結ぶ9-2 売買契約のチェックポイント

不動産の売買契約は、高額な資産を対象とした大きな取引ですので、一般的には、契約書を作成して取り交わします。また、宅地建物取引業法でも、不動産会社(宅地建物取引業者)に対し、契約が成立したら遅滞なく契約内容を記載した書面を、宅地建物取引士に記名押印させた上で交付することを義務づけています。
なお、デジタル整備法の宅地建物取引業法改正部分が2022年5月18日に施行され、この契約締結時の書面について、紙の書面で交付する場合の宅地建物取引士の押印が不要となるとともに、紙の書面に代えて電磁的方法による提供(電子書面交付)が可能になりました。

ここでは、売買契約書で確認すべき主なポイントを説明します。もちろん、確認すべき事項はこれだけではありませんので、疑問点があれば、不動産会社に「完全に納得できるまで」確認するようにしましょう。

ポイント1 売買契約書の一般的な項目とポイント

以下に、売買契約の一般的な項目とそのチェックポイントを紹介します。ただし、個別の契約によって取り決めの内容と確認するポイントが変わりますので留意してください。

(1) 売買物件の表示

購入予定物件の表示に誤りがないかを確認します。一般的には、登記記録(登記簿)に基づいて契約書に表示されます。売買対象となる物件が明確であることが、売買契約の大前提です。

(2) 売買代金、手付金等の額、支払日

売買代金や手付金等の金額と支払日をしっかりと確認します。期日までに支払えない場合は、契約違反となる場合もありますので注意しましょう。
また、手付金については、その取り扱いをしっかりと確認します。手付金がどのような手付(解約手付、証約手付、違約手付)であるのか、金額は適当か(売買代金の何割程度か)などを確認します。手付が解約手付であれば、いつまで手付解除が可能であるかについても確認しましょう。
なお、売主の信用力に不安がある場合は、高額な手付金等の支払いには十分に注意する必要があります。

(3) 土地の実測及び土地代金の精算

土地の面積は、登記記録(登記簿)に表示された面積と実際の面積が違うことがあります。したがって、売主が引渡しまでの間に土地の実測を行うことも多いようです。実測の結果、登記記録(登記簿)の面積と実測した面積が違う場合は、その面積の差に応じて、売買代金を精算することもあります。(実測をするのみであえて精算しないこともあります。)一般的に、売買代金の精算は、当初の売買代金と当初の売買面積(登記記録(登記簿)上の面積)に基づく1㎡当たりの単価を用いて行われます。

(4) 所有権の移転と引渡し

所有権の移転と引渡しの時期を確認します。引っ越しの予定などを踏まえて、問題ないか判断します。所有権移転と引渡しは代金の支払いと引き換えに行われますが、不動産取引の実務では、代金支払いの場で、所有権移転登記に必要な書類や鍵などが買主に引き渡されることで完了することが多いようです。

(5) 付帯設備等の引き継ぎ

特に、中古住宅の場合は、室内の照明やエアコンなどの設備、敷地内の庭木や庭石などの引き継ぎについて明確にしておく必要があります。このような付帯設備等の引き継ぎをめぐるトラブルは意外と多く発生しますので、契約前に、何を引き継いで、何が撤去されるのかを売主との間で十分に調整する必要があります。また、引き継ぐ設備等が故障していないかなど、その状態も事前に確認しましょう。契約に当たっては、付帯設備等の一覧表を用いて一つ一つ確認することが多いようです。(このとき用いる一覧表は「告知書」「物件状況報告書」などといわれています。)

(6) 負担の消除

購入予定物件を完全な所有権で取得できるかを確認します。例えば、抵当権や賃借権など、所有権の完全な行使を阻害するような権利は、売主の責任によって除かれた状態で引き渡されます。このような権利が除かれないまま引渡しを受けると、購入後に予定通り利用できない場合がありますので注意が必要です。
なお、投資用物件の売買では、テナントが入居していることが多く、その場合はテナントとの賃貸借契約に限って、買主に引き継がれます。この場合は引き継ぐ権利と引き継がない権利を明確にする必要があります。

(7) 公租公課等の精算

不動産売買契約では、固定資産税や都市計画税といった公租公課を売主と買主の間で精算することが一般的です。その他、管理費などの費用を精算することもあります。精算は引渡しの日を基準に、日割りで行われることが多いようです。このような精算金も、売買代金とは別に必要となりますので確認しましょう。

(8) 手付解除

何らかの突発的な事情により契約を解除せざるを得ないときに、手付解除することがありますので、どのような取り決めとなっているか確認します。もちろん、当事者間の合意で、手付解除を認めない契約としたり、手付解除が可能な期間を限定することも可能です。
手付の金額は、一般的に売買代金の20%までの範囲で設定することが多いようですが、手付金が少額である場合には、自分が解除するときの負担は小さくなる一方、相手に解除されるリスクも高くなります。逆に、手付金が多額である場合は、自分が解除するときの負担は大きくなりますが、相手方に解除されるリスクは低くなります。手付解除に関しては、手付金の額も併せて確認しましょう。

(9) 引渡し前の物件の滅失・毀損(きそん)(危険負担)

売買契約締結後に、天災で建物が全壊するなど、売主にも買主にも責任のない理由によって、購入予定物件が滅失・毀損した場合の取り決めです。
不動産売買では、一般的には、売主が物件を修復した上で、物件を引き渡すこととなります。ただし、物件の修復に過大な費用がかかるとき、または、物件が滅失・毀損したことにより買主が契約の目的を達せられないとき(例えば、とても住む状態には修復されないなど)は、契約を無条件で解除することができます。万が一の場合の取り決めですので、しっかりと確認しましょう。

(10) 契約不適合を除く契約違反による解除

契約違反(つまり約束違反、これを法的には「債務不履行」といいます)により契約を解除するときの取り決めです。売主または買主のいずれかが債務不履行となった場合には、その相手方は契約を解除することができます。このように契約違反によって解除となった場合には、契約に違反した者が違約金等を支払うことが一般的です。違約金等はおおむね売買代金の20%までの範囲で設定されることが多いようです。契約に違反することを前提として売買契約を締結するわけではありませんが、万が一のことがありますので、事前にしっかりと確認しましょう。

(11) 反社会的勢力の排除

不動産取引からの「反社会的勢力の排除」を目的に、反社会的勢力排除のための標準モデル条項が導入されています。売買契約書の条項の中に「売主及び買主が、暴力団等反社会的勢力ではないこと」「物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供しないこと」などを確約する条項が盛り込まれていることを確認しましょう。これらに反する行為をした場合は、契約を解除することができます。

(12) ローン特約

買主に責任がないにもかかわらず住宅ローンの借り入れができなかった場合、買主は売買代金を支払うことができず、最終的には契約違反となってしまいます。このような状況は買主には酷ですので、買主が、住宅ローンを利用して住宅を購入する場合、売買契約にローン特約を付すことが一般的です。買主は、住宅ローンの審査が不調に終わった場合に、売買契約を無条件で解除することができます。
ただし、買主がローン審査に必要な手続を怠った場合など、買主の落ち度でローンを借りることができなかった場合には、この特約は適用されません。ローン特約がある場合でも、契約前に資金計画を十分に検討して、借り入れの目処をもって契約することが大切です。
なお、新築マンションで、オプションによる追加工事や仕様変更を行った場合は、ローン特約の対象にならないケースもありますので注意が必要です。

(13) 契約不適合責任

売買物件に欠陥があった場合には、買主は売主に一定の請求ができます。この場合の売主の責任のことを、従来は「瑕疵担保責任」と言っていました。しかし、民法の改正により、2020年4月1日からは、その名称が「契約不適合責任」と変更され、その内容も、大幅に変わりました。売主は、売買契約上の義務として、物件の種類、品質、数量に関して、契約の内容に適合した目的物を引き渡す義務があり、もしその義務を果たしていない物件を引き渡したときは、契約不適合責任を負うというものです。その場合、民法の規定によれば、買主は、物件の補修や代金の減額を請求できるほか、損害賠償請求もでき、またその不適合が軽微でなければ契約の解除ができることになっています。しかし、この民法の規定は、当事者が何も取り決めなかったときの原則的規定であって、当事者がこれとは別の取り決めをすることができます。そこで、実際の契約では、売主がこの契約不適合責任を負う範囲や、責任を負う期間について、特別の定め(特約)をすることが通常です。したがって、買主としては、売主がどの範囲まで責任を負うのか、請求できる期間はいつまでか等について契約内容をよく確認しましょう。

 


なお、建物状況調査が実施され、その結果の概要を重要事項として説明した上で契約に至った場合は、調査の結果概要を添えて「建物の構造耐力上主要な部分等の状況について双方が確認した事項」として記載されます。(建物状況調査が実施されていない場合は、「無」と記載。)

売買契約書参考例はこちら
ポイント2 売主が不動産会社(宅地建物取引業者)である場合の規制

不動産会社(宅地建物取引業者)が売主となる場合には、宅地建物取引業法により売買契約に関して制限が設けられています。該当する場合は、契約内容の確認に当たって、制限に反する契約となっていないかを事前にしっかりと確認して、売買契約に臨みましょう。

 「売主が宅地建物取引業者である場合の規制」を参照

ポイント3 売買契約の流れを知る

重要事項説明を受け、契約内容や物件について納得したらいよいよ売買契約の締結です。
原則として、買主と売主が集合し、売買契約書を読み上げて契約内容の最終確認をします。その上で、契約書に署名・押印し、手付金等の授受を行います。手付金等は、現金や指定口座への振り込みのほか、預金小切手で用意する場合もあります。
また、不動産会社が仲介に入っている場合は、契約時に仲介手数料を支払うことも多いようです。契約手続に漏れがあると、売買契約が締結できないことで、売主をはじめとして関係者に迷惑をかけてしまいますので、しっかりと準備をした上で契約に臨みましょう。
なお、不動産の取引においては、犯罪収益移転防止法により、売主または仲介の不動産会社から本人確認書類の提示や、職業、取引目的などの申告を求められます。

契約時に必要な主なもの
手付金等 代金の20%以内が一般的(現金・振り込み・預金小切手など)
※必ず領収書を受け取る
印紙 売買契約書に貼る。代金が1,000万円超5,000万円以下の場合の印紙代は1万円
印鑑 実印であることが多い
不動産会社への仲介手数料 媒介契約書であらかじめ取り決めた金額(現金・振り込み・預金小切手など)
※必ず領収書を受け取る
本人確認書類 運転免許証や各種健康保険証などの公的機関が発行した本人確認書類

 印紙税については「住まいの税金(住まいを買うときにかかる税金)」を参照
 犯罪収益移転防止法については「国土交通省・最新の動きvol.53」を参照

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