トップ不動産基礎知識:既存住宅購入のポイント3.住まいの税金1.住まいを貸すときの税金
住まいを貸すときには、不動産所得にかかわる所得税や住民税がかかります。
個人が不動産を貸して家賃を受け取る場合、その不動産の賃貸にかかわる利益は「不動産所得」となります。不動産所得は、不動産を貸して得た収入から必要経費を差し引いた額となります。
不動産所得を、給与所得や事業所得などの他の所得と合算して課税総所得額を計算し、それに所得税率を乗じたものが所得税となります。
総収入金額には、通常の家賃のほかに次のような収入も含まれます。
必要経費とは不動産収入を得るために必要な費用をいい、例えば次のようなものがあります。
<必要経費として認められない例>
損益通算とは、2種類以上の所得がある場合に、一定の順序にしたがって、その黒字や赤字の差引計算を行うというものです。
不動産所得についても、赤字となった場合には損益通算が認められていますが、次に揚げるような損失の金額は、その損失が生じなかったものとみなされ損益通算することができませんので注意が必要です。
不動産所得の赤字のうち、土地を取得するための借入金の支払利子部分は、損益通算ができません。
ただし、建物の取得にかかわる借入金利子は、損益通算ができます。
なお、土地と建物を自己資金と借入金によって取得した場合は、借入金は、まず建物の取得に充てたものと考えます。
ケース | 損益通算可能な額 |
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(不動産損失-土地借入金利子にかかわる経費)>0 不動産所得の赤字が、土地等を取得するための借入金利子よりも多い場合 |
不動産所得の赤字のうち、土地の借入金利子に相当する金額は損益通算できません。 土地の借入金利子以外の赤字は損益通算できます。 |
(不動産損失-土地借入金利子にかかわる経費)<0 不動産所得の赤字が、土地等を取得するための借入金利子よりも少ない場合 |
不動産所得の赤字はすべて切り捨てられ、損益通算できません。 |
個人が青色申告をしている場合で、損益通算してもなお引ききれない赤字があるときは、翌年からさらに3年にわたって繰り越すことができます。
所得税の確定申告には、青色申告と白色申告の2種類の方法があります。
青色申告は、納税者の帳簿書類の備え付けと取引の正確な記録を促進するために、一定の帳簿書類の備え付けと相応の記帳を義務づけるとともに、各種の特典を設けている制度です。
(1) | 不動産オーナーと生計を一にしている配偶者やその他の親族のうち、年齢が15歳以上に支払った給与であること |
(2) | その事業に専従している(年間で6ヶ月を超える期間、青色申告者の事業に従事している)こと |
(3) | 「青色事業専従者給与に関する届出書」に支払った給与の額を記載して税務署に提出していること |
(4) | 労務の対価として適正な金額であること |
なお、青色事業専従者として給与の支払を受ける人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。
(1) | 55万円の青色申告特別控除の要件
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※不動産所得または事業所得を生ずべき事業:事業的規模と認められる基準は、貸家の場合、「独立家屋なら5棟以上」「アパート等なら10室以上」とされ、これらの基準以上の規模であれば、おおむね事業的規模と認められます。 | |
(2) | 65万円の青色申告特別控除の要件 55万円の要件を満たした上で、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
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(3) | 10万円の青色申告特別控除の要件 (1)の要件に該当しない青色申告者が対象となります。 |
事業所得などが損失(赤字)になり、純損失が生じたときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって、各年分の所得金額から差し引くことができます。
また、前年も青色申告をしている場合は、純損失の繰り越しに代えて、損失額を前年の所得金額から差し引き、前年分の所得税の還付を受けることもできます。
青色申告の適用を受けるためには、その年の3月15日までに所轄税務署に「青色申告の承認申請書」を提出し、さらに法定の帳簿書類を備え付けて取引を記録し、かつ一定期間(原則7年間)保存することが必要です。
青色申告承認申請のほか、不動産賃貸業の開業時には税務署に「個人事業の開廃業等届出書」その他一定の届出や申請を所轄税務署にする必要があります。
前々年の課税売上高が1,000万円超の場合には消費税の納税義務が生じます。不動産賃貸の場合には、住宅の貸し付けにかかる賃料には消費税は非課税ですが、商業ビルや駐車場の貸し付けにかかる賃料には消費税がかかります。
ただし前々年の課税売上高が1,000万円以下でも、前年の1月~6月まで期間(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超えた場合、この課税期間から課税事業者となります。
貸店舗などの事業用不動産の賃貸借では、賃料に消費税がかかります。この場合、賃借人が納付する消費税の計算上、賃料の消費税の仕入税額控除を認めてもらうには、2023年10月1日からは、税務署に認められた所定の貸主から適格請求書をもらわないといけなくなっています。
消費税は、課税事業者において、原則として課税期間中の課税売上げにかかる消費税から、課税仕入れ等にかかる消費税を控除して、納める消費税額又は還付される消費税額を計算します。課税仕入れ等にかかった消費税額を控除することを仕入税額控除といいます。適格請求書等保存方式(インボイス制度)は、消費税が複数税率になっていることに対応した消費税の仕入税額控除の方式です。具体的には、次の通りです。
(1) | 書類の作成者の氏名又は名称、適格請求書発行事業者の登録番号 |
(2) | 課税資産の譲渡等(取引)を行った年月日 |
(3) | 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務(取引)の内容 |
(4) | 税率の異なるごとに区分して合計した課税資産の譲渡等(取引)の対価の額 |
(5) | 適用税率及び適用税率ごとに区分して消費税額 |
(6) | 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称 |
貸店舗などの貸主が適格請求書発行事業者になるには、消費税の課税事業者であれば、税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し登録を受けることが必要です。適格請求書発行事業者になると、取引先の求めに応じて適格請求書を出す義務、保存する義務を負うことになります。
●国税庁 「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm
貸主が消費税の免税事業者である場合には、原則として課税事業者になるため課税事業者選択届出書を税務署に提出する必要があります。
借主側では、適格請求書発行事業者である貸主から適格請求書等をもらって保存することが、仕入税額控除を認めてもらうための条件です。貸主が免税事業者などの適格請求書発行事業者でない場合には、課税仕入れをしたとしても、原則として賃料にかかる消費税を仕入税額控除することは認めてもらえません。
なお時限措置(2023年10月1日から2026年9月30日まで)で、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になる人については、仕入税額控除の金額を課税仕入れ等にかかる消費税額の2割とすることができる特例が用意されています。
●国税庁 「2割特例の概要」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm