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不動産基礎知識:売るときに知っておきたいこと

3.不動産会社に売却を依頼する3-4 不動産会社と媒介契約を結ぶ

不動産会社に正式に売買の仲介を依頼するときには、「媒介契約」を締結します。
媒介契約は、自分が希望する仲介のサービス内容とその対価である手数料などを明確にするための大切な書類です。後悔することのないよう、自分の意思を不動産会社にしっかりと伝えた上で、媒介契約を締結することが必要です。

ポイント1 媒介契約の意義

媒介契約とは、宅地建物の売買や交換の媒介(仲介)に関する依頼者と不動産会社との契約です。
媒介契約は、売主が不動産会社に依頼する業務の仕様(どのようなサービスを受けるか)や仲介手数料などを契約で明確にすることで、仲介業務に関するトラブルを未然に防ぐことができます。そこで、仲介の依頼を受けた不動産会社には、媒介契約の契約関係を明確化するため、一定の事項を記載した書面の作成と依頼者への交付が法的(宅地建物取引業法第34条の2)に義務づけられています。
なお、デジタル整備法の宅地建物取引業法改正部分が2022年5月18日に施行され、この媒介契約締結時の書面について、紙の書面に代えて電磁的方法による提供(電子書面交付)が可能になりました。

媒介契約の締結は、その後の売却活動の入口となる重要なステップですので、内容をきちんと理解しておく必要があります。

ポイント2 3種類の媒介契約から選択する

媒介契約には「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3種類があります。いずれも基本的な契約内容は同じですが、それぞれ特徴があります。どの種類の媒介契約を選択するかは、どのように売却活動を進めていくかなど、考えている売却方針を踏まえて、自分の意思で選ぶようにしましょう。

専属専任媒介契約

仲介を1社の不動産会社にのみ依頼する契約で、他の不動産会社に重ねて仲介を依頼することは契約で禁じられています。また、自分で見つけてきた相手方(親戚や知人と直接交渉した場合など)についても、依頼した不動産会社を通して取引することが、契約で義務づけられています。
このように、専属専任媒介契約は、売却活動の全般を1社に任せる契約です。ただし、専属専任媒介契約は依頼者に対して拘束力の強い契約ですので、専属専任媒介契約で仲介依頼を受けた不動産会社の仲介業務については、いくつかの法規制があります。

専任媒介契約

専属専任媒介契約とほぼ同様の契約ですが、自分で見つけてきた相手方(親戚や知人と直接交渉した場合など)とは、不動産会社を通すことなく契約することができます。

【専属専任媒介契約と専任媒介契約(以下、「専任媒介契約等」)に関する法規制】
(1) 媒介契約の有効期間 専任媒介契約等は、依頼者にとって拘束力の強い契約であることから、有効期間は3ヶ月(契約更新の場合も3ヶ月)以内となります。なお、3ヶ月を超える契約を締結した場合でも、有効期間は3ヶ月と見なされます。
(2) 指定流通機構(レインズ)への登録等 専任媒介契約等を締結した不動産会社は、媒介契約を締結した日から法定の期日以内(※)に、仲介依頼を受けた物件の情報を指定流通機構(レインズ)へ登録しなければなりません。指定流通機構は、宅地建物取引業法に基づき、不動産情報を集約した上で、他の不動産会社に物件情報を提供しています( 「指定流通機構とは」を参照)。この制度の目的は、物件情報をより多くの不動産会社に提供することで、最適な買主を探すことにあります。そして、専任媒介契約等を締結した不動産会社が、自社の購入希望顧客との取引を優先して、情報を抱え込んでしまうなどの不適切な行為を防止しています。

※専属専任媒介契約の登録期日:媒介契約締結の日から5日以内
 専任媒介契約の登録期日:媒介契約締結の日から7日以内
(3) 業務処理状況の報告 専任媒介契約等を締結した不動産会社には、仲介業務の実施状況(販売活動の状況など)を依頼者へ報告する義務が課せられています(報告の頻度(※)は法律で定められています)。このような規制によって、不動産会社に適切な業務遂行を促すとともに、依頼者が不動産会社の活動状況を定期的に確認する機会を確保しています。

※専属専任媒介契約を締結した場合の報告頻度:1週間に1回以上
 専任媒介契約を締結した場合の報告頻度:2週間に1回以上
一般媒介契約

複数の不動産会社に同時に仲介を依頼することができる契約で、自分で見つけてきた相手方(親戚や知人と直接交渉した場合など)とも、不動産会社を通すことなく契約することができます。ただし、最終的には、どの不動産会社を通して取引を進めるかを決めることとなります。一般的には、有力な購入希望者を紹介した不動産会社と取引を進めることが多いようです。

【明示型と非明示型】
一般媒介契約には、「明示型」と「非明示型」があります。
明示型の場合は、他の不動産会社への同時依頼を契約で認めつつも、仲介を依頼した不動産会社には、他にどの不動産会社へ仲介を依頼しているかを通知する必要があります。一方で、非明示型の場合は、他の不動産会社に重ねて仲介を依頼しているのか、あるいは、どんな会社に依頼しているのかを不動産会社に通知する必要がありません。
【専任媒介契約等と一般媒介契約との比較】

一般媒介契約を締結し、依頼する不動産会社を増やすほど不動産会社間の競争は高まりますが、不動産会社にとっては不安定な依頼になるので、各社の取り組みは希薄になってしまうおそれもあります。
逆に、専任媒介契約等を締結するなど、依頼する不動産会社を減らすと不動産会社間の競争は低くなりますが、不動産会社にとってはより安定的な依頼となるので、各社の取り組みの密度は高くなる可能性があります。
ただし、最終的には、依頼者と不動産会社との個々の信頼関係が最も重要であり、それは媒介契約の種類でのみ決まるものではありません。まずは、自分の意向(売却活動の窓口を限定したいのか、複数の不動産会社による競争を促したいのかなど)を明確にし、不動産会社と協議した上で媒介契約の種類を決めましょう。

媒介契約の種類と特徴
  専属専任媒介契約 専任媒介契約 一般媒介契約
他社への重ねての仲介依頼 × ×

(明示型の場合は、他社へ重ねて依頼した場合は通知義務あり)
自ら探索した相手方との直接契約 ×
契約の有効期間 3ヶ月以内 3ヶ月以内 法令上の制限はない(ただし、行政の指導は3ヶ月以内)
指定流通機構への登録 媒介契約締結の日から5日以内 媒介契約締結の日から7日以内 法令上の義務はない(任意での登録は可能)
業務処理状況の
報告義務
1週間に1回以上 2週間に1回以上 法令上の義務はない(任意で報告を求めることは可能)

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