文字サイズ

トップ > コラム > 空き家対策で進む行政と不動産流通業界の連携

コラム Column


空き家対策で進む行政と不動産流通業界の連携 株式会社 Geo Laboratory 代表取締役 上村要司

(2018.6.6)

 空き家バンクへの登録や利活用に関する相談、空き家の管理や取引を進める上で、欠くことのできないパートナーが不動産流通事業者です。各種法制度等の整備とともに行政と不動産業界との連携が進んでいます。

国のモデル事業への積極的参加が拡大

 昨年度実施された国の空き家等の活用を促すモデル事業には全国各地から38団体が参画し、様々な取り組みが行われました。その内容は、空き家所有者向けセミナーや個別相談会、空き家の実態調査、自治体との空き家バンクの協定締結など多岐に渡っています。実際に売却や利活用に結びついた事例もみられ、行政や市民団体等に加えて不動産流通事業者が重要な役割を果たしました。

 行政との連携では、地域密着業者を中心とする業界団体の参画が目立ちます。例えば全国宅地建物取引業協会連合会では、傘下の44都道府県協会(支部を含む)が476の地方自治体と空き家バンクの協定を締結しています(平成30年3月現在)。同連合会の調査によれば、空き家所有者が希望する相談相手は行政機関に次いで不動産会社が多く、実際に空き家を利活用する場合、実務に精通した不動産会社が頼りになると考えられています。

■希望する所有空き家の相談相手 出所:(公社)全国宅地建物取引業協会連合会

 消費者に対する無料相談会も業界団体の重要な取り組みの一つです。山形県宅地建物取引業協会酒田支部では、宅建士だけでなく司法書士や行政書士、建設業、金融業などが連携し、空き家の売却や解体、解体費用の融資、相続登記など様々な問題にワンストップで対応しています。すぐに取引に結び付く例は多くありませんが、事業者側もボランティアで参加することで業界の信頼醸成に努める意向があるようです。

専門家の派遣や空き家サイトの事務代行に取り組む例も

 空き家所有者に対して個別に相談員を紹介する制度もあります。町家等の空き家対策に積極的な京都市では、宅建士資格を持ち5年以上の実務経験がある地元の不動産事業者を空き家相談員として登録しています。空き家所有者は登録リストから近隣の相談員を選んで直接訪問・電話しますが、相談は無料で他の相談員への依頼もできます。戸建や長屋建の場合、建物の状態を見て無料で宅建士や建築士からアドバイスを書面で受けられる専門家派遣制度もあります。

出所:京都市ホームページ

 相談後の取引では通常の手数料等が発生しますが、上記の制度は直接プロのノウハウが受けられ、利活用や売却・賃貸等の判断が早期にできるメリットがあります。全日本不動産協会京都府本部では、空き家相談のほか実際の空き家を使った利活用の体験セミナーや相談員の養成なども行っており、自治体との連携に取り組んでいます。

■京都市と業界団体の連携事例 出所:「地域の空き家・空き地の利活用等に関するモデル事業概要」(株)価値総合研究所

 このほか、福岡県では空き家物件の掘り起こしや市町村の事務負担軽減を目指して、福岡県宅地建物取引業協会と共同で県独自の空き家バンクを開設する予定です。従来の空き家バンクでは、物件の収集が進まずサイトの周知と登録推進が課題でしたが、閲覧数が多い協会サイトに市町村の空き家情報を集約し、物件の登録代行や相談ノウハウの提供などで連携を深める動きがみられます。行政の相談業務では建物の価値判断が難しい面もありましたが、不動産事業者が関与することで空き家の利活用が進む効果も期待されます。

連携を進める上での課題

 このように様々な取り組みが拡大しつつありますが、実効性ある空き家対策にはハードルも残ります。相談業務の多くは無報酬で空き家管理も採算性が低く、売買等でも極端に安い物件や権利関係が複雑な物件は不動産事業者が避ける傾向にあります。予算の制約がある行政と採算を重視する民間が継続的に連携するには、一定のフィーを確保できる持続的なビジネスモデルの構築が必要と言えるでしょう。

 一方、地域をよく知る不動産事業者こそが、空き家所有者に対して納得できる資産活用を提案できます。こうした事業者が行政と連携することで、効果的な空き家対策が進むと考えられます。ここで紹介した事例はごく一部であり、全国には自治体と事業者が連携するケースが数多くみられます。空き家の有効利用を考えている方は、地元の自治体や業界団体の取り組みを調べてみてはいかがでしょう。

ページトップに戻る