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2014年の不動産行政について・国土交通省不動産業課にて本年重点的に取り組むべき主要施策を紹介

2014年01月15日

Report
国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
 


今回は、昨年の不動産市場の状況を振り返るとともに、本年重点的に取り組むべき不動産業政策についてご紹介させていただきます。

明るい兆しの見え始めた不動産市場 

2013年は、住宅・不動産市場にとって明るい兆しが感じられる1年となりました。これまで全国的に下落傾向が続いていた地価については、主要都市において全国の7割の地区で上昇し、特に3大都市圏では大半の地区で地価の反転が見られ、これまでの下落・横ばい基調から上昇基調への転換が見られます。
2009年度に78万戸まで落ち込んだ住宅着工戸数についても、2013年度に入ってからは年率換算値で90万戸を超えるペースで推移し、緩やかな上昇傾向にあります。また、昨年の首都圏のマンション市場は、新築マンションの供給戸数、中古マンションの売買成約件数ともに前年同月に比べて平均2桁以上の伸びを示し、好調を維持しています。
本年4月には消費税率の引き上げが予定されていますが、政府としては、税率引き上げの影響を緩和するための住宅ローン減税制度の拡充・延長や給付措置(すまい給付金)を講じたところであり、住宅取得にかかる負担の軽減や駆け込み需要の緩和に一定の効果が期待されるところです。一方で、近時の建築費の高騰等のコストアップ要因が市場にどの程度影響を与えるか、よく注視していく必要があります。
2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催決定も、市場にとって明るいニュースでした。これらの市場の明るい兆しを本格的なデフレ脱却、持続的な経済成長につなげるべく、引き続き不動産市場の活性化に向けて努力してまいります。

ストック活用型社会に向けた中古住宅流通市場の活性化

我が国には官民合わせて約2,500兆円の不動産資産がありますが、そのストックが有効に活用されているとは言えません。特に住宅市場については、700万戸以上の空き家を抱える一方、欧米諸国に比べて中古住宅の流通割合が圧倒的に低い状況であり、中古住宅ストックの有効活用は、我が国経済の安定的な成長を図っていく上で喫緊の課題となっています。
人口が減少し、経済が成熟化し、環境やエネルギー面からの制約がますます顕在化するこれからの時代においては、作っては壊す「スクラップ&ビルド型社会」から、いいものを作り、きちんと管理して、長く使う「ストック活用型社会」への転換を進めることが必要であると思います。中古住宅流通市場の活性化により、国民の皆様が、家族構成の変化、ライフステージの変化に応じて、最適の住宅に柔軟に住み替えることができれば、住生活の充実にもつながります。

昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略」では、「2020年には中古住宅流通市場・リフォーム市場の規模倍増を実現する」との野心的な目標が掲げられていますが、この達成のためには、流通の阻害要因を的確に見極め、対策を進めることが必要です。
中古住宅については、良い住宅が判別しにくい、質に対する不安が大きいなど、市場における情報不足の問題や、木造一戸建てであれば築後20年程度で価値がゼロになってしまう建物評価に係る問題などがあります。昨年6月に国土交通省の「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」でとりまとめられた報告書でも、情報提供の充実等による消費者が安心して取引できる環境づくりや、適切な建物評価を目指した評価手法の抜本的改善など、具体的な課題に対応していく必要性が確認されたところです。
※関連情報については、当サイトVOL.58を参照

このため、国土交通省では、第一に中古住宅に係る適切な建物評価手法の検討、第二に不動産取引に必要な情報を効率的に収集・整備・提供する仕組みの検討、第三に宅地建物取引業者(以下宅建業者)とリフォーム等の関連事業者の連携によるワンストップサービスの開発支援、といった施策を実施しています。

(1)中古住宅に係る適切な建物評価手法の検討
まず、第一の施策については、築後30年前後の物件も市場において流通している実態を踏まえ、木造一戸建てであれば築後20年程度で建物の価値がゼロと評価されてしまう慣行を改めるべく、建物評価手法の改善に向けた検討に着手しています。本年度中に指針をとりまとめ、来年度は実際の取引現場での普及促進策を検討していく予定です。
また、中古住宅に係る建物評価改善等の取組を市場に定着させるため、中古住宅流通に携わる民間事業者等のいわゆる実物サイドと、金融機関等のいわゆる金融サイドが率直かつ自由に意見交換を行う「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」を昨年9月から開催しているところです。
※関連情報については、当サイトVOL.60を参照

(2)不動産取引に必要な情報を効率的に収集・整備・提供する仕組みの検討
第二の施策については、宅建業者が、物件の購入を検討する消費者に対し、必要な情報を適時適切に提供できるよう、性能・品質、履歴、価格等、市場に分散している不動産取引に必要な情報を効率的に集約・管理する情報システムの整備に向けた検討を始めているところです。本年度中にシステムの基本構想を策定し、来年度には平成27年度に予定している試行運用の開始に向けたプロトタイプシステムの構築を行う予定です。

(3)宅建業者とリフォーム等の関連事業者の連携による
   ワンストップサービスの開発支援

第三の施策については、平成24年度から、宅建業者及び関連事業者が連携して中古住宅を円滑に流通させるための協議会活動を国の予算で支援しており、中古住宅流通の促進に向けたモデル事業の構築が進められているところです。本年度も引き続き、全国14の協議会の活動を支援しており、各地域の特性を活かした新たなビジネスモデルなど、具体的な成果が上がることを期待します。
※関連情報については、当サイトVOL.59を参照

これらの施策に加え、平成26年度税制改正においては、(1)近年新たなビジネスとして全国的に拡大しつつある買取再販(宅建業者が中古住宅を取得し、一定のリフォームを施した後に再販売する業態)について、住宅を購入する消費者の登録免許税の負担の軽減、(2)消費者が中古住宅取得後に一定のリフォームを行う場合における住宅ローン減税等の適用が盛り込まれており、中古住宅流通市場の起爆剤となることを期待しています。

なお、宅建業者間の共同仲介システムであるレインズシステムにおいて、売主側業者が他の宅建業者からの問い合わせに対して不当にその紹介を拒否する、いわゆる「囲い込み」と呼ばれる行為が散見されるとの指摘を踏まえ、昨年10月、(公財)東日本不動産流通機構がレインズの利用規程を改訂し、正当な理由のない物件不紹介の禁止等を定めました。他のレインズにおいても同様の規程改訂が予定されています。国土交通省としても、このような取り組みはレインズを通じた不動産流通の適正化、円滑化に資するものと考えており、今後とも各指定流通機構と連携を図ってまいります。

マンション管理及び賃貸住宅管理に関する課題への対応

我が国には区分所有マンションが約590万戸存在し、約1,450万人が居住する貴重な財産となっています。その9割がマンション管理業者によって管理されており、マンションの適切な維持管理、ひいては価値の維持保全にマンション管理業者が果たすべき役割には大きなものがあります。マンション管理業者を監督するマンション管理適正化法も施行から10年を超え、また一部の自治体ではマンションの管理情報の登録制度が創設されるなど、マンション管理の重要性が広く国民に認知されてきています。
このように、我が国において重要な住居形態となっているマンションについては、経年劣化への対策や、居住者の高齢化への対応など、ハード・ソフトの両面で解決すべき課題があります。国土交通省としては、マンション管理業者が管理組合の良いクライアントとして、これらの課題解決に向けたコンサルティングサービスが円滑に供給されるよう、必要な施策を進めてまいります。

賃貸住宅の適切な管理・運営も大きな課題です。国土交通省では、賃貸住宅管理業者の実施する管理業務について一定のルールを設け、賃貸住宅管理業の適正化を図り、貸主及び借主の利益の保護に資するため、国土交通省告示による任意の賃貸住宅管理業者登録制度を2011年12月から施行しております。
本制度においては、管理事務の対象や契約内容等に関する重要事項説明、契約書面の交付、受領した家賃等の分別管理、貸主に対する管理事務の定期報告など、管理業務のルールを設けており、登録を受けた管理業者はこのルールを遵守する必要があります。また、登録を受けた管理業者名を一般に公開することにより、貸主及び借主等は、優良な管理業者及び良質な管理物件を選択するために、登録業者を選択することが期待されます。本制度におけるルールが管理業務のスタンダードとして広く普及することで、賃貸住宅に係るトラブルの抑制につながるものと考えております。
本制度の施行から約2年が経過し、登録業者数は3,000業者を超えるなど、順調な伸びを見せてはいるものの、依然として未登録業者に係るトラブルが散見されることから、登録状況は必ずしも十分ではないと認識しております。今後も引き続き、各関係団体と連携のもと、より一層の登録促進、業務ルールの周知普及に取り組んでまいります。

不動産業のコンプライアンス体制確立に向けた取り組み

不動産業界では、契約書に盛り込む暴力団排除規定について、業界全体で2011年にモデル条項を策定したところであり、現在、各団体においてその導入が進められています。また、不動産業・警察暴力団等排除中央連絡会における「不動産取引における暴力団等反社会的勢力排除の5原則」の採択により、不動産業界として対外的に反社会的勢力排除の姿勢を示すなどの取り組みも着実に進めていただいております。
国土交通省では、こうした取り組みが全国的に、業界一丸となって展開できるよう、地方における連絡会組織の設立に関する情報提供等の協力を行っているところですが、引き続き、不動産取引からの反社会的勢力の排除を含めた業界のコンプライアンス体制確立に向けた活動に対する支援を行ってまいります。

また、昨年4月に施行された改正犯罪収益移転防止法では、特定事業者に位置付けられた宅建業者に対して、マネー・ローンダリング防止のための顧客の本人確認として、顧客の取引目的や事業内容等の確認項目が追加される等、より厳格な対応が義務付けられました。国土交通省では、関係団体と連携し、改正法に関する概要や法施行に係る実務的なQ&A等の公表等、改正法の円滑な運用に向けた取り組みを行ってきたところです。
さらに、現在、資金洗浄及びテロ資金対策に関する国際的な基準を策定している金融活動作業部会(FATF:Financial Action Task Force)からは、特定事業者による顧客管理等に関し、さらなる対応の強化が求められているところです。
これらの状況を踏まえ、国土交通省においては、昨年末より特定事業者である宅建業者に係る固有のリスクについて把握するための調査を行ってまいりましたが、引き続き、警察庁をはじめとする関係機関と連携し、適切な対応措置の検討を進めるとともに、犯罪による収益の移転防止に関する取り組みの推進を図ってまいります。
※関連情報については、当サイトVOL.53を参照


以上、本年重点的に取り組むべき課題についてご紹介いたしました。これらの取り組みを進めるに当たっては、様々な方のご意見に耳を傾け、また関係部局や関係団体とよく連携をとってまいりたいと考えておりますので、引き続き、よろしくご理解ご協力をお願い申し上げます。

※執筆の内容は、2013年12月末時点によるものです。

国土交通省



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