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中古住宅に係る建物評価手法の改善のあり方検討委員会・中古住宅に係る建物評価手法の改善に向けて、有識者による検討委員会を設置

2013年11月13日

Report
国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
 

国土交通省では、建物の使用価値を適正に反映できる建物評価手法の整備に向け、中古住宅に係る建物評価手法の改善のあり方及び具体的な指針等を検討する「中古住宅に係る建物評価手法の改善のあり方検討委員会」を設置しました。
今回はその取り組みについて、紹介します。

取り組みの背景・目的

中古住宅の取引において、取引価格が妥当かどうかを判断することは、売り主、買い主、宅地建物取引業者、金融機関等さまざまな取引関係者にとって重要な要素となります。しかし、現在建物評価において統一的に参照されている基準が無く、築後20~25年程度で一戸建て住宅の建物価値がゼロ評価に近くなるような、築年数のみを基準とする建物評価が一般的であることから、必ずしも個別の住宅の使用価値を考慮した適正な建物評価が行われているとは言い難い状況にあります。
加えて、リフォームやリノベーションを行った場合には建物の使用価値が増加すると考えられますが、その点に関しても客観的な指標がないことから、取引価格や金融機関の担保価値においてリフォーム等による価値向上が適正に反映されていないと言われています。
こうしたことが、納得感のある中古住宅取引や住宅の所有者等による積極的なリフォーム実施の阻害要因の一つになっていると考えられます。

このことに関連し、不動産流通市場の活性化に向けて各種施策を検討した「不動産流通市場活性化フォーラム※1」においては、中古住宅流通市場の活性化のために、築年数のみを基準とした建物評価基準(手法)の見直しの必要性が指摘されました。また、「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会※2」においても、中古住宅の適切な建物評価を目指した評価手法の抜本的な改善の必要性が指摘され、見直しに係る基本的な課題と方向性について、一定の整理がなされたところです。
今般、上記研究会で整理された課題や方向性を踏まえ、建物の使用価値を適正に反映できる建物評価手法の整備に向け、中古住宅に係る建物評価手法の改善のあり方及び具体的な指針等を検討する有識者委員会を設置しました。

※1 「中古住宅流通市場活性化フォーラム」については当サイトVol.45参照
※2 「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」については当サイトVol.58参照

委員会の検討事項について

本委員会では、「中古住宅の期待耐用年数の導出について」「中古住宅の再調達原価の算定について」「中古住宅に係る建物評価手法の指針策定について」などを主な検討事項として、平成25年度内に計4回の委員会を開催して、検討を進めていきます。

平成25年8月28日には、第1回委員会が開催され、「ここ20~30年に建てられた住宅は、性能が向上してきているので、リフォームを適切に行えば、100年でも十分もつものとなっている。」「実際の経過年数ではなく、改修等の効果を踏まえた実質的経過年数(effective age)をもとに評価を行うというアメリカの鑑定評価における原価法の考え方が参考になる。」「基礎・躯体については、簡単には100%の状態には回復しないが、例えば、大規模修繕の時に土台も一部更新することができる。一方、基礎・躯体以外の内外装・設備は、必要な時期に適切なリフォームや交換を行えば、それぞれの部位が100%の状態に回復する。このような効果を反映し、必要な時期に適切なリフォームや交換を行って、できるだけ住宅全体を長く使うという前提で評価手法を設計すべきである。」など、各委員よりさまざまな意見が出されました。

イメージ図

今後、インスペクターによる実地調査やリフォーム周期の実態調査、建物の収益価格による検証等を踏まえて議論を進め、建物評価手法の改善に係る指針を取りまとめる予定です。
建物の使用価値が適切に評価されることが、所有者による積極的な住宅の手入れにもつながり、良質な住宅が流通しながら長く大切に使われる社会が形成されることを目指し、政策を展開していきます。

※執筆の内容は、2013年10月末時点によるものです。

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