トップ>国土交通省・最新の動き>VOL.53 犯罪収益移転防止法の改正について
2013年4月10日
この法律は、文字通り、犯罪による収益の移転を防止することを目的に、平成20年3月1日に全面施行された法律で、金融機関や宅地建物取引業者(以下、宅建業者)などの特定事業者に対し、『特定取引』を行う際における顧客の本人確認や疑わしい取引の届出等を義務付けています。まず、その仕組みについて説明します。
※犯罪収益移転防止法の制定背景等については、Vol.5をご参照ください。
不動産取引に関しては、法的に「宅地又は建物の売買契約の締結又はその代理若しくは媒介」が『特定取引』とされています。例えば、宅建業者が不動産の媒介を行う場合、取引の顧客である売り主・買い主の双方について、運転免許証や登記事項証明書など、その顧客の属性(個人であるか法人であるか等)に応じて決められている本人確認書類によって本人確認を行うとともに、その確認内容等を記録として作成・保存することが義務付けられています。そして、宅建業者は本人確認の結果などから「その取引で収受される財産が犯罪収益ではないか」、または、「顧客が犯罪収益を隠匿しようとしているのではないか」といった疑いをもったときには、「疑わしい取引」として速やかに行政庁に届け出なければならないとされています。
これらの措置は、犯罪収益移転防止法で特定事業者に位置付けられている宅建業者に義務付けられるものですので、宅建業者は、媒介に限らず自らが売り主または買い主として取引を行うときや、売り主または買い主の代理として関与する場合も同様に、取引の相手方等に対する本人確認の実施等が必要となります。
この一連の措置によって、犯罪が行われた場合の資金トレースを可能にするとともに、訴追や剥奪を免れようとする行為を困難にさせ、犯罪行為で得た資金を不動産に替えること等により資金の出所を隠す、いわゆるマネー・ローンダリングの防止を図っています。
【犯罪収益移転防止法のフロー】
平成19年から平成20年にかけて我が国に対して行われた、FATF(マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関する国際基準の策定等を行う多国間の枠組み)による第3次対日相互審査においてなされた指摘事項や、犯罪収益移転防止法の施行後におけるマネー・ローンダリングをめぐる国内情勢等を踏まえ、平成23年4月、犯罪収益移転防止法の一部改正法案が国会に提出されました。この改正法案は同月に成立・公布され、本年4月1日より施行されました。
今回の法改正では以下5点がポイントとなります。
このうち、確認を行う宅建業者と、確認を受ける側となる顧客の双方に特に関係してくる「1.取引時の確認事項の追加」について、その概要を以下で紹介させていただきます。
●取引時の確認事項の追加
宅建業者は、特定取引を行うに際し、顧客の「本人特定事項」(※個人の場合は氏名・住居・生年月日、法人の場合は名称・本店所在地)を確認することが義務付けられていましたが、今般の法改正を受け、本年4月1日以降における特定取引より、この「本人特定事項」のほかに、新たに「取引を行う目的」、「職業または事業の内容」、「実質的支配者の有無等」が確認すべき事項として追加されました。さらに、その取引がなりすましや偽りの疑いがある場合、また、マネー・ローンダリング対策が不十分であると認められる特定国等に所在する顧客等を相手とする場合のいわゆる「ハイリスク取引」であるときは、「資産及び収入の状況」も確認することとされました。
なお、法改正前は、顧客の「本人特定事項」を確認することを指して「本人確認」と称していましたが、前述のように、「本人特定事項」以外の項目も確認事項とされましたので、その呼称も「本人確認」から「取引時確認」と改められています。
【取引時確認として確認すべき事項とその確認方法の概要】
※顧客が人格のない社団もしくは財団であるときの「事業の内容」については、書類ではなく、その顧客の代表者等からの申告を受けて確認します。
※確認内容の詳細についてはH24.12.21付け不動産業課長通知で取引の類型ごとに内容をまとめています。
今回の犯罪収益移転防止法の改正により不動産取引における確認事項が増えました。これらの確認を実施する義務は宅建業者が負うものですが、確認の実施に当たっては消費者の皆様のご協力も不可欠となります。本年4月1日以降に不動産を購入または売却される場合、宅建業者より本人確認書類の提示や取引を行う目的の申告等が求められることとなりますが、犯罪収益移転防止法に基づき行われるマネー・ローンダリング防止のための措置ですので、ご理解とご協力をいただきますよう、よろしくお願いいたします。
※執筆の内容は、2013年3月末時点によるものです。