トップ>国土交通省・最新の動き>VOL.5 犯罪収益移転防止法による本人確認について
2009年6月15日
今回は、不動産の取引をされる消費者の方に知っていただきたい「犯罪収益移転防止法による本人確認」について、ご担当者にご執筆をお願いしました。
犯罪により得た収益について、その出所を隠し、あたかも正当な取引で得た資金であるかのようにみせかけることを、マネー・ローンダリング(Money Laundering:資金洗浄)といいます。マネー・ローンダリングが放置されれば、違法な行為によって得られたお金と、合法的に得られたお金の区別がつかなくなります。犯罪者が自由に使える資金を手にして新たな犯罪を生み出すという悪循環が生じるとともに、健全な経済活動に重大な悪影響を与えます。
犯罪組織による振り込め詐欺やヤミ金融を撲滅するためにも、マネー・ローンダリング防止対策を実施しなければなりません。
我が国でも、既に金融機関においてはマネー・ローンダリング/テロ資金供給防止対策として、本人確認や疑わしい取引の届け出などの対応策が講じられていました。
しかし、犯罪収益は宅地建物取引、宝石・貴金属取引、ファイナンスリース取引など、金融機関を通さない取引を通じても移転することがあり、犯罪者の手口の巧妙化により金融機関以外の事業者を利用することが多くなっています。
このような情勢を受け平成19年3月に「犯罪による収益の移転防止に関する法律」が成立し、翌20年3月の全面施行によって、従来金融機関を対象としていたマネー・ローンダリングの防止の義務が宅地建物取引業者を含む43業種に拡大され、宅地建物取引業者に対しても、取引を行う際の(1)顧客等の本人確認及び本人確認記録の作成・保存、(2)取引記録の作成・保存、(3)疑わしい取引に関する行政庁への届け出が義務づけられています。
本人確認とは、本人特定事項を確認することです。本人特定事項とは、個人の場合は(1)氏名(2)住居(3)生年月日、法人の場合は(1)名称(2)本店または主たる事務所の所在地です。本人確認に使用できる書類は公的機関によって発行された書類であり、かつ氏名、住居、生年月日などの記載があるものに限定されています。
取引を行うに当たりその顧客やその代表者などが本人確認に応じないときは、特定事業者は本人確認に応じるまでは義務の履行を拒否することができます。また、本人確認の手続きにおいて顧客等は本人特定事項を偽ってはならず、違反する場合には罰則規定もあります。
本人確認は、法の定める方法によって行わなければなりません。本人確認の方法は「対面型取引」の場合と「非対面の取引」の場合に大別されます。
対面型の取引における本人確認の方法は、運転免許証や各種健康保険証などの提示を受ける場合は書類の提示を受ける「提示のみ法」となっており、印鑑登録証明書などの書類の場合は、書類の提示を受けるとともに書類に記載されている住所宛に取引にかかわる文書を送付する「提示・送付法」によって確認します。
非対面の取引における本人確認の方法は、書類の送付を受けるとともに、書類を送付する「受理・送付法」と電子証明を利用する「電子証明法」があります。
本人確認の対象者は顧客が個人である場合には、顧客個人について本人確認を行います。また顧客が会社である場合には会社についての存否を確認することと、代表者や担当者の本人確認をすることが必要となります。
今後、不動産の購入及び売却の際に仲介業者等から本人確認書類の提示を求められる場合があると思いますが、マネー・ローンダリング防止のためにも本人確認手続きへのご協力をお願いします。
取引の種類 | 宅建業法の適用 | 犯罪収益移転防止法の特定取引 |
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宅地建物の売買 | ○ | ○ |
宅地建物の売買の代理・媒介 | ○ | ○ |
宅地建物の交換 | ○ | × |
宅地建物の交換の代理・媒介 | ○ | × |
宅地建物の賃借 | × | × |
宅地建物の貸借の代理・媒介 | ○ | × |
※執筆の内容は、2009年5月時点によるものです。