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「空家対策特別措置法」について 適切に管理されない空家等がもたらす問題を解消し
生活環境の保全や空家等の活用の促進等を図る

2015年4月8日

Report
国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
 

近年、人口減少や少子高齢化の進展等に伴い、空き家が年々増加しており、これらの中には適切な管理が行われない結果として安全性の低下、公衆衛生の悪化、景観の阻害等多岐にわたる問題を生じさせ、ひいては地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしているものがあります。
今回は、このような問題の解決に向け、平成26年11月に公布された「空家等対策の推進に関する特別措置法」(平成26年法律第127号。以下「空家特措法」)の概要について、紹介します。

法制定の背景

平成25年に総務省が実施した住宅・土地統計調査の確報値(平成27年2月26日公表)によると、全国の空き家の総数は820万戸、全国の住宅総数に占める割合は13.5%で過去最高となりました。また、空き家の総数のうち、別荘等の「二次的住宅」並びに「賃貸用の住宅」及び「売却用の住宅」を除く「その他の住宅」に属する空き家の数は318万戸となり、この20年間で約2倍に増加しています(下図参照)。このため、地方公共団体ごとに空き家対策条例を制定し、対策に取り組んでいるところですが、条例では対応できない課題等もあります。

こうした状況を踏まえ、空家特措法が議員立法として成立し、平成26年11月27日に公布され、平成27年2月26日に一部施行されました。

図:住宅・土地統計調査              図をクリックすると拡大表示されます
図:住宅・土地統計調査

法律の概要

空家特措法では、空き家について「空家等」(※1)と「特定空家等」(※2)の2つが定義されています。

※1
「空家等」…建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着するものを含む)とされており、建築物だけでなく敷地内の工作物や立木等も対象に含められています。
※2
「特定空家等」…放置することが不適切な状態にあると認められる空家等とされており、具体的には以下の4つの状態が規定されております。
(1)倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
(2)著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(3)適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
(4)その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

適切な管理が行われていない空家等がもたらす問題を解消するためには、第一義的には空家等の所有者等が自らの責任により的確に対応することが前提となります。
しかしながら空家等の所有者等が、自らの空家等の管理を十分に行うことができず、その管理責任を全うしない場合等も考えられます。そのような場合においては、所有者等の第一義的な責任を前提としながらも、住民に最も身近な行政主体である各市町村が、地域の実情に応じて空家等に関する対策を実施することが重要です。
空家特措法に定められている、市町村が行うことができる対策等は、主に以下に示す4点です。

1.空家等についての情報収集
空家特措法の規定に基づき市町村長は以下の調査等を行うことができます。
 空家等の所在や所有者等を把握するための調査
 特定空家等に対する措置をとるために必要な限度における空家等への立入調査
 空家等の所有者等を把握するために行う固定資産税情報の内部利用

そのほか、市町村は空家等に関するデータベースの整備や空家等に関する正確な情報を把握するために必要な措置を講ずるよう努めるものとされています。

2.空家等の適切な管理の促進・有効利用
市町村は、所有者等による空家等の適切な管理を促進するため、情報の提供、助言等を行うよう努めるものとされています。
また、市町村は、空家等及びその跡地に関する情報の提供その他これらの活用のために必要な対策を講ずるよう努めるものとされています。

3.市町村長による特定空家等の所有者等に対する助言・指導、勧告、命令、代執行
保安上危険な空家等に対しては、建築基準法等の既存の法令に基づいて行政が対応することは現在でも可能ですが、空家等が引き起こす様々な問題への総合的な対策を講ずるため、地方公共団体の中には空き家対策条例を定め、所有者等に対する指導、勧告、命令等の措置を講じているところもあります。空家特措法においては、特定空家等に対する措置として、市町村長による助言・指導、勧告、命令、代執行という一連の手続きを規定しています。
<手続きの流れ>
 市町村長は、特定空家等の所有者等に対して、除却、修繕、立木竹の伐採等の必要な措置をとるように助言・指導を行う。
 助言・指導によって措置がされない場合は勧告、命令へと段階的に手続きを進めていくことで、所有者等による措置の履行を求める。
 命令を受けた者が必要な措置を履行しないときは、行政代執行が可能(命令に違反した者は50万円以下の過料)。
 過失がなくてその措置を命ぜられる者を確知することができないときについては、助言・指導、勧告、命令といった手続きを経ずに市町村長が自ら措置を行うことも可能。

4.税制上の措置等
市町村が行う空家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、税制上の措置等を講ずるものとされており、具体的には、空家特措法に基づく必要な措置の勧告の対象となった特定空家等に係る土地について、住宅用地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置(※3)の対象から除外することとされております。

※3
住宅用地(人の居住の用に供する家屋の敷地)に適用される特例措置として、固定資産税の課税標準について、小規模住宅用地(200㎡以下の部分)では1/6に減額され、一般住宅用地(200㎡を超える部分)では1/3に減額されることとされております。また、都市計画税の課税標準について、小規模住宅用地(200㎡以下の部分)では1/3に減額され、一般住宅用地(200㎡を超える部分)では2/3に減額されることとされております。

なお、空家特措法の規定のうち、特定空家等に関する措置(立ち入り検査、市町村長からの助言・指導、勧告、命令、代執行及び過料)については、公布日から6ヶ月を超えない範囲で施行することとされており、施行に向け、国土交通省では特定空家等に対する措置のガイドライン策定に向けた検討を行っています。

※執筆の内容は、2015年3月末時点によるものです。

国土交通省


詳しくは国土交通省「空家等対策の推進に関する法律関連情報」を参照ください。

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