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「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)」のとりまとめについて 民泊サービスの適正化のために、住宅宿泊事業法のガイドラインを策定

2018年2月14日

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国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
 

平成29年6月16日に成立した「住宅宿泊事業法」及びその関係の省令に関する規定の解釈及び留意事項等をとりまとめた「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)」を昨年12月に発出しました。今回は、本ガイドラインの概要について解説します。

住宅宿泊事業法について

住宅(戸建住宅、共同住宅等)の全部又は一部を活用して宿泊サービスを提供する、いわゆる「民泊」については、観光先進国の実現を図る上で、急増する訪日外国人旅行者の多様な宿泊ニーズや大都市における宿泊需給の逼迫状況への対応のために、その活用を図ることが求められている一方、既存の旅館・ホテルと同様の公衆衛生の確保や、地域住民等とのトラブル防止に留意したルール作りはもとより、旅館業法の許可が必要な旅館業に該当するにもかかわらず、無許可で実施されているものもあることから、その是正を図ることも急務となっていました。

このため、昨年「住宅宿泊事業法」を制定し、健全な民泊の普及を図ることとなりました。
本法においては、「住宅宿泊事業」「住宅宿泊管理業」「住宅宿泊仲介業」の民泊に関する3つの事業を定義し、それぞれの事業について届出制度又は登録制度を設けるとともに、各種義務を課すこととしています。今回は、3つの事業ごとにガイドラインの概要を解説します。

図表1 「住宅宿泊事業法」の仕組み

住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)の概要

【住宅宿泊事業関係】

1.定義関係(第2条関係)

  • 「台所」、「浴室」、「便所」、「洗面設備」は必ずしも1棟の建物内に設けられている必要はなく、「離れ」と「母屋」を合わせて一つの「住宅」として届け出ることは差し支えありません。
  • 「台所」、「浴室」、「便所」、「洗面設備」は、それぞれ一般的に求められる機能を有していれば足ります。浴室については浴槽がない場合でもシャワーがあれば足り、便所については和式・洋式等の別は問いません。
  • 人の居住の用に供されていると認められるものとしての「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」とは、既存の家屋で、所有者等が使用の権限を有しており、少なくとも年1回以上は使用しているものの、生活の本拠としては使用していない家屋をいいます(例:別荘等季節に応じて年数回程度利用している家屋、転勤により一時的に生活の本拠を移しているものの、将来的に再度居住の用に供するために所有している空き家等)。
  • 住宅宿泊事業は、年間180日を超えない範囲で人を宿泊させる事業であるとされているところ、日数の算定については、宿泊者を募集した日数ではなく、実際に人を宿泊させた日数で算定するとしています。また、宿泊料を受けて届出住宅に人を宿泊させた実績があるのであれば、短期間であるかどうか、日付を超えているかどうかは問わず、1日と算定されます。

2.住宅宿泊事業の届出(第3条関係)

  • 「住宅」とは1棟の建物である必要はなく、法第2条第1項に規定する要件を満たしていれば、建物の一部分を「住宅」として届け出ることが可能です。
  • 一つの「住宅」について複数の事業者が重複して届出を行うことはできませんが、当該住宅の共同所有者等が連名で届出を行うことは可能です。
  • 届出を行うに当たっては、届出者から周辺住民に対し住宅宿泊事業を営む旨を事前に説明することが望ましいです。

3.届出の際の添付書類について(第3条関係)

  • 「届出住宅の図面」は、必要事項が明確に記載されていれば、手書きの図面でも差し支えありません。
  • 分譲マンションで住宅宿泊事業を行うに当たり、管理規約に住宅宿泊事業を営むことについての定めがない場合に必要となる「管理組合に届出住宅において住宅宿泊事業を営むことを禁止する意思がないことを確認したことを証する書類」とは、届出者が管理組合に事前に住宅宿泊事業の実施を報告し、届出時点で住宅宿泊事業を禁止する方針が総会や理事会で決議されていない旨を確認した誓約書、又は本法成立以降の総会及び理事会の議事録その他の管理組合に届出住宅において住宅宿泊事業を営むことを禁止する意思がないことを確認したことを証明する書類をいいます。
  • 事業開始後に、消防法の規制に整合していない家屋であることが判明することを回避するため、消防法令適合通知書の提出を届出時に求めることとしています。

4.住宅宿泊事業の実施(第5条~第10条関係)

  • 居室の宿泊者1人当たりの床面積は3.3㎡以上確保することとしています。居室の床面積は、宿泊者が占有する部分の面積を指し、宿泊者の占有ではない台所、浴室、便所、洗面所、廊下のほか、押入れ、床の間は含みません。
  • 外国人宿泊者に対しては、宿泊予約の時点で提示した日本語以外の言語で案内を行うことが必要です。なお、外国人宿泊者が日本語を指定した場合には、外国語で案内等を行う必要はありません。
  • 宿泊者名簿の正確な記載を確保するための措置として、宿泊行為の開始までに、宿泊者それぞれについて対面又は対面と同等の手段(例:テレビ電話やタブレット端末を用いた方法等)によって本人確認を行う必要があります。
  • 周辺地域の生活環境への悪影響への防止に関し必要な事項の説明の「書面の備付けその他の適切な方法」とは、当該事項が記載された書面を居室に備え付けることによるほか、タブレット端末での表示等により、宿泊者が届出住宅に宿泊している間に必要に応じて説明事項を確認できるようにするためのものです。
  • 苦情等に対しては、深夜早朝を問わず、常時応対又は電話によって対応する必要があります。また、宿泊者が滞在していない間も、苦情等に対しては対応する必要があります。

5.住宅宿泊事業管理業務の委託(第11条関係)

  • 住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者へ委託する際には、一の住宅宿泊事業者に委託の対象となる届出住宅に係る住宅宿泊管理業務を委託しなければなりません。
  • 委託の必要がない不在について、「日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間」は、原則1時間(交通手段の状況等により時間を要する場合には2時間程度までの範囲)とされています。

6.条例による住宅宿泊事業の実施の制限(第18条関係)

  • 本法に基づく条例によって年間全ての期間において住宅宿泊事業の実施を一律に制限し、年中制限することや、都道府県等の全域を一体として一律に制限すること等は、本法の目的を逸脱するものであり、適切ではありません。
  • 制限を実施する区域及び期間については、具体的に特定して明確に定めることが適当です。

【住宅宿泊管理業関係】

7.住宅宿泊管理業を的確に遂行するための必要な体制(第25条関係)

  • 法令の定めに基づき適切に管理受託契約を締結できる人的構成が確保されていることが必要であり、具体的には、住宅の取引・管理に関する契約業務の実務経験を2年以上有していることが必要です。また、宅地建物取引士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士のいずれかの資格(法人の場合は、宅地建物取引業、マンション管理業、賃貸住宅管理業のうちいずれかの免許・登録)を有している場合は、これと同等の能力を有するとみなされます。
  • 住宅宿泊管理業務を適切に実施するための体制として、常時苦情に応答可能である人員体制を備えることや、宿泊者への説明や本人確認等を遠隔で行う場合に必要が生じた際に、宿泊者に速やかにかつ確実に連絡が取れること等が必要です。

8.住宅宿泊管理業務の再委託の禁止(第35条関係)

  • 委託を受けた住宅宿泊管理業務の全てを第三者に再委託することや、複数の者に分割し、自らは一切住宅宿泊管理業務を行わないこと等は法に違反します。
  • 住宅宿泊管理業務の一部再委託に当たっては、住宅宿泊事業者と管理受託契約を交わした住宅宿泊管理業者が再委託先の業務実施について責任を負います。

9.住宅宿泊管理業務の実施(第36条関係)

  • 苦情については、必要に応じすみやかに現地に赴き現状確認をする必要があり、苦情があってから現地に赴くまでの時間は30分以内を目安(交通手段の状況等により時間を要する場合は60分以内を目安)としています。

【住宅宿泊仲介業関係】

10.住宅宿泊仲介業を的確に遂行するための必要な体制(第49条関係)

  • 住宅宿泊仲介業の登録に当たっては、法令遵守について責任を有する部局及び責任者を設置すること、苦情問い合わせ等について責任を有する部局及び責任者を設置すること、情報管理(サイバーセキュリティー体制を含む)について責任を有する部局及び責任者を設置することが必要です。

11.違法行為のあっせん等の禁止(第58条関係)

  • 住宅宿泊仲介業者は、仲介サイトへの掲載に当たっては住宅宿泊事業者からの届出番号を確認する必要があります。

住宅宿泊事業法は平成30年6月15日の施行を予定しております。また、各事業の届出・登録申請の受付は平成30年3月15日に開始する予定です。
今後も、本法の円滑な施行に向けて、説明会等の実施や民泊制度運営システムの整備等、必要な取り組みを行ってまいります。

※執筆の内容は、2018年1月末時点によるものです。

国土交通省


詳しくは、国土交通省ホームページ「住宅宿泊事業法ガイドライン」を参照ください。

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