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「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」について不動産事業者、金融機関等が一堂に会し、中古住宅・リフォーム市場の活性化に向けて意見交換

2014年12月10日

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国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
 

国土交通省では、中古住宅・リフォーム市場の拡大・活性化に向けた基本的方向や取組課題を共有することを目的に、不動産取引実務・金融実務の関係者が一堂に会して率直かつ自由な意見交換を実施する場として「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」を設置し、議論を行っております。 今回はその概要をご紹介いたします。

中古住宅市場活性化ラウンドテーブル開催の経緯

平成25年6月の「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」(※1)報告書におきまして、「中古住宅の適切な建物評価を目指した評価手法の抜本的改善」「市場プレイヤーの行動に働きかけ、中古住宅流通市場を改善する方策」「住宅金融市場へのアプローチ」の3つの提言がなされました。
その中で、中古住宅の建物評価の改善を市場に定着させるため、国土交通省や中古住宅流通に携わる民間事業者等のいわゆる実物サイドと、金融当局や金融機関などの金融サイドの問題意識や認識について、率直に自由な意見交換を通じて共有していく必要があるとの指摘がなされました。
これを受け、国土交通省では、平成25年9月より「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」を設置し、2ヶ年度にわたって議論を行っております。

※1「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」についてはVol58参照

<委員(敬称略、五十音順)>
・青木 宏之  (一社)JBN会長
・池田 重人  (株)常陽銀行 地域協創部 担当部長
・池本 洋一  (株)リクルート住まいカンパニー SUUMO編集長
・市川 三千雄 (公社)全国宅地建物取引業協会連合会 専務理事
・岩本 秀治  (一社)全国銀行協会 理事
・内山 博文  (一社)リノベーション住宅推進協議会 会長
・大森 隆一郎 (株)みずほ銀行 ローン業務開発部長
・河合 隆    みずほ信託銀行(株)経営企画部 信託協会担当部長
・熊倉 隆治  (公社)日本不動産鑑定士協会連合会 副会長
・黒岩 幹夫  (一社)住宅リフォーム推進協議会 監事・環境整備委員会委員長
・首藤 祐司  (独法)住宅金融支援機構 理事
・髙村 英有   東急リバブル(株)常務執行役員 統括部長
・中林 昌人   優良ストック住宅推進協議会 代表幹事
・西川 和孝   近畿不動産鑑定士協会連合会 会長
・振角 秀行  (一社)信託協会 専務理事
・前田 一夫  (一社)住宅性能評価・表示協会 制度普及委員会委員長
・森本 浩   (一社)全国サービサー協会 専務理事
<オブザーバー>
・金融庁 監督局 銀行第一課
<事務局>
・国土交通省 住宅局

(平成26年10月現在)

平成25年度の検討について

平成25年度は2回の本会合と実務者クラスによる5回の作業部会を開催し、平成26年3月、平成25年度報告書を取りまとめました。平成25年度報告書に沿った形で、意見の一例を紹介します。

(1)新たな建物評価指針の不動産市場・金融市場への定着と事業者間連携のあり方

新たな建物評価指針の不動産市場・金融市場への定着
・ 「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」(※2)を不動産市場・金融市場に定着させるためには、同指針を含めた新たな評価の取り組みを反映しつつ、宅地建物取引業者の価格査定及び不動産鑑定士の評価実務のあり方を変えるための取り組みを行うことが重要と認識されました。
・ 金融機関における一般的な住宅ローンの担保評価については、「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」に対する宅地建物取引業者及び不動産鑑定士等の対応を踏まえつつ、木造戸建てが約20年で一律ゼロとなるような現行の評価のあり方の見直しを検討していくべきとの指摘があり、また、その際、担保不動産の処分に当たるサービサーの役割も重要との指摘がありました。
中古住宅流通における事業者間連携のあり方
・ 全国14ヶ所(平成25年度時点)で実施されている金融機関、宅地建物取引業者をはじめとする不動産関係事業者との連携(※3)により、質の確保された住宅に対し、一定の金利に係る優遇措置等を行っている事例が紹介されたほか、「売主告知書、宅地建物取引業者からの情報」、「建物評価と瑕疵保険(かしほけん)制度適合のための検査」及び「シロアリ点検(保証付)」に加え、これらを前提にした不動産鑑定士による住宅価格評価を組み合わせた評価方法である住宅ファイル制度の活用について提案がなされました。

※2「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」についてはVol65参照
※3「不動産関係事業者との連携」についてはVol59参照

(2)新たな金融商品の設計の可能性

新たな住宅金融商品の設計に即したDCF(※4)分析による担保評価のあり方
・ 今後の成長分野として期待される新たな住宅金融商品の設計に当たっては、土地だけの値付けでは十分な担保価値が得られない場合であっても、経年の変化において取引価格よりも安定している賃料をベースにしたDCF分析による担保不動産評価が有効な場合があるとの指摘がありました。
リバースモーゲージ(※5)等の高齢化社会に対応した金融商品設計の可能性
・ 建物が使用価値に応じて適切に評価された場合、リバースモーゲージの担保評価の対象が建物まで拡大することで、特に地価の低い地方圏において、リバースモーゲージが普及する可能性が高まると考えられるとの認識が示されました。
リフォームローン、リフォーム一体型ローンの改善の可能性
・ リフォーム一体型ローンにおいて、売買代金に対する融資がリフォーム工事終了後、引渡し時点でしか実行できない現状に対応するため、信託口座を活用しつつ、リフォーム前の中古住宅購入時に融資実行する仕組みが紹介されました。

※4「DCF」については、不動産ジャパン用語集「DCF法」参照
※5「リバースモーゲージ」については、不動産ジャパン用語集「リバースモーゲージ」参照

(3)その他の中古住宅・リフォーム市場活性化に資する仕組みの可能性

買取再販事業における新たな融資形態の活用
・ 買取再販事業において、事業収益資産としての物件の価値を活用した事業者向け融資の可能性について議論がなされました。
平成26年度の検討について

平成26年度においては、平成25年度における議論の深掘りのほか、以下の3つの論点についてもより具体的な方策の検討を行っています。

(1)建物評価の改善を踏まえた宅地建物取引業者、不動産鑑定士、金融機関等における実務の改善検討
(2)証券化市場を含む金融二次市場等を活かした中古住宅関係金融商品の設計
(3)戸建て賃貸住宅市場、地域政策(空き家対策、住宅地再生)との連動によるビジネスモデルの構築

10月1日には第3回本会合が開催され、中古戸建て住宅の評価方法の見直しに関する宅地建物取引業者や不動産鑑定士の実務への反映に向けた検討状況の紹介や、民間事業者による中古住宅市場活性化に向けた取り組みの紹介・意見交換等が行われました。

国土交通省では、今年度末の中古住宅市場活性化ラウンドテーブル報告書の取りまとめに向けてさらに意見交換を重ねつつ、引き続き中古住宅・リフォーム市場の活性化に向けた取り組みを推進してまいります。

※執筆の内容は、2014年11月末時点によるものです。

国土交通省


詳しくは国土交通省「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」をご参照

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