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中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針・中古戸建て住宅の建物評価の改善に向けて、住宅の本来の使用価値に係る評価のあり方を提言

2014年4月9日

Report
国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
 

国土交通省では、平成25年度に設置した「中古住宅に係る建物評価手法の改善のあり方検討委員会()」において、中古戸建て住宅の、主として流通時の建物評価の改善のあり方について検討を行い、今般「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」(以下「本指針」といいます)をとりまとめました。今回は、その指針の内容について紹介します。

中古住宅に係る建物評価手法の改善のあり方検討委員会についてはVol60参照

本指針策定の趣旨

現在、中古戸建て住宅の流通時の建物評価においては、個々の住宅の状態にかかわらず、一律に築後20~25年で市場価値をゼロに近いとみなす運用が一般的となっています(図1参照)。
また、明らかに建物の価値が回復するリフォーム(設備の定期更新等)を行った場合も価格に反映されないことも一般的となっています。

本指針ではこうした建物評価の現状を改善するべく、中古戸建て住宅の流通時における建物評価について、人が居住するという住宅本来の機能に着目した価値(本指針においては「使用価値」といいます)に係る評価のあり方を提言しています。

【図1】
イメージ図

本指針に基づく評価の基本的な枠組み

本指針においては、人が居住するという住宅本来の価値(使用価値)を評価の対象とし、個々の住宅の状態に応じて使用価値を把握し評価を行うことを基本的な方向として、以下の点を中心として評価のあり方を提言しています(図2参照)。

(1)住宅を構成する部位の特性(材料の性質、劣化要因、リフォーム頻度や一体としてリフォームを行う単位等)に応じた区分(基礎・躯体と内外装・設備の区分等)を行い、それぞれの部位の特性に応じた評価を行う。

(2)それぞれの部位に本来要求される機能を維持しており、取引の際に社会通念に照らして通常価値があると認められる期間(取引後も当該部位が引き続き使用されると認められる期間)に使用価値があるととらえ、評価を行う()。
このように使用価値が認められる期間は、基礎・躯体については比較的長期間(例えば、住宅性能表示制度の劣化対策等級2程度の劣化対策が講じられた住宅で50~60年以上、同等級3程度の劣化対策が講じられた住宅で75~90年以上、長期優良住宅の認定を受けた住宅で100年以上)、内外装・設備は比較的短期間になると考えられます。ただし、基礎・躯体の評価に当たっては、インスペクション等を行い、個別の住宅の劣化の進行状況に応じて実際の築年数を短縮・延長(評価上の経過年数)して評価を行うことで、このような一般的に使用価値が認められる期間内かどうかにかかわらず、使用価値を評価する考え方が提示されています。

(3)住宅を支えるという基礎・躯体の機能が維持されている限り、内外装・設備の補修・修繕・更新を繰り返すことにより住宅全体の使用価値が回復・向上することから、これを反映した評価を行う。

【図2】
内外装・設備の価値向上を反映した評価イメージ

指針に基づく評価と流通市場との関わり

本指針においては、上記のような建物評価の改善の方向性に加え、流通市場における評価の改善に向けた提言も盛り込まれています。例えば、取引等の局面で、市場での相場を勘案した評価額と併せて、本指針に基づく評価による価格を参考として提示することや、住宅の状態を示す「実質的経過年数」「残存耐用年数」等の指標を流通の場面で活用することを検討するべきとされています。このような取り組みを通じて、我が国の中古住宅市場の価格形成の適正化に寄与することが期待されます。

平成26年度の取り組み

本指針における提言の方向性に沿って、今後市場の重要なプレーヤーである宅地建物取引業者や不動産鑑定士により、中古戸建て住宅の建物評価の改善が図られる必要があります。国土交通省では、平成26年度においても、本指針に示す考え方を普及・浸透させるために必要な検討を実施していく予定です。

執筆の内容は、2014年3月末時点によるものです。

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