トップ>国土交通省・最新の動き>VOL.92 宅地建物取引業法の改正について
2016年7月13日
宅地建物取引業法の一部を改正する法律が成立し、平成28年6月3日に公布されました。今回は、法改正による今後の既存住宅取引について解説します。
※宅地建物取引業法の改正の内容についてはVOL.88を参照
我が国が本格的な人口減少・少子高齢社会を迎える中、既存住宅流通市場の活性化は、国民資産である住宅ストックの有効活用、既存住宅流通市場の拡大による経済効果、ライフステージに応じた住み替えの円滑化による豊かな住生活の実現等の観点から、重要な政策課題です。
一方、我が国の既存住宅流通シェアは2013年時点で14.7%であり、流通シェアが8割を超えるアメリカやイギリス等と比べて極めて低い状況です。
このため、国土交通省では、2025年に既存住宅流通市場の規模を倍増させるという目標を掲げ、各種の政策を進めています。今回の宅地建物取引業法の改正もその一環です。
インスペクションとは、建物に生じたひび割れ、雨漏り等の事象の有無を把握するための調査のことです。専門家が、水平器やクラックスケールといった計測機器を用いて調査します。既存住宅の取引時にこうした調査を実施することにより、売主や購入予定者が、住宅の基礎・外壁等の状況を把握することが可能となります。取引の対象となる住宅の状態に関する正確な情報を十分に理解した上で、購入の意思決定や交渉ができるようになれば、安心して既存住宅の取引を行うことができます。売主にとっても、事前に住宅の状態を明らかにし、買主に納得してもらうことで、引き渡し後のトラブルを軽減する効果が期待できます。
既存住宅流通促進のためには、インスペクションの普及が重要と考えています。
今回の宅地建物取引業法の改正では、取引時にインスペクションが活用されるよう、宅地建物取引業者(以下宅建業者)の役割を強化しています。
改正の一番のポイントは、宅建業者は、売買契約の締結前に行う重要事項説明のときに、インスペクションを実施しているかどうかと、実施している場合にはインスペクション結果を説明しなければならなくなることです。また、宅建業者に媒介を依頼し、媒介契約を締結したときに、宅建業者は、インスペクション業者のあっせんの可否を示し、あっせんが可能な場合には、媒介依頼者(売主等)の意向に応じてあっせんすることとなります。
このような法改正により、今後は、インスペクションの実施が広がってくるものと考えています。これからは、インスペクションが実施されているかどうか、インスペクション結果がどのようなものかということが、既存住宅の選択に大きく影響してくるかもしれません。
既存住宅の取引時に活用できるサービスとして、インスペクションのほかに、既存住宅売買瑕疵(かし)保険というものがあります。この保険に加入することで、仮に引き渡し後に不具合が発見された場合であっても、買主は一定の保証を受けることができます。
法改正を契機に、インスペクションと併せて瑕疵保険も普及することで、より安心な取引が広まることを期待しています。
※インスペクション及び住宅の瑕疵保険については、「話題の不動産キーワード」VOL.5 ホームインスペクション、VOL.9 住宅の瑕疵(かし)保険でも、解説をしています。
※執筆の内容は、2016年6月末時点によるものです。