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宅地建物取引業法の改正案について 宅地建物取引業法の一部を改正する法律案について

2016年3月09日

Report
国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
 

宅地建物取引業法の一部を改正する法律案が平成28年2月26日に閣議決定されました。今回は、この改正案について解説します。

既存の建物の取引における情報提供の充実

既存住宅の流通促進は、既存住宅市場の拡大による経済効果、ライフステージに応じた住み替え等による豊かな住生活の実現等、大きな意義を有しています。一方、我が国の既存住宅の流通量は、年間17万戸前後の横ばい状態で推移しています。
このような既存住宅流通が増加しない要因の一つとして、消費者が住宅の質を把握しづらい状況にあることが挙げられます。このため、今般、宅地建物取引業法を改正し、宅地建物取引業者が、既存住宅の取引時において、専門家によるインスペクションの活用を促すことにより、消費者が安心して既存住宅の取引を行える市場環境の整備を図ります。
具体的には、宅地建物取引業者の役割を強化し、消費者への情報提供の充実を図るため、宅地建物取引業者に対し、既存の建物の取引に係る各手続きにおいて以下の事項を義務付けます。

(1) 媒介契約の締結時に建物状況調査(いわゆるインスペクション)を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面の依頼者への交付
(2) 買主等に対して建物状況調査の結果の概要等を重要事項として説明
(3) 売買等の契約の成立時に建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面の交付

いわゆるインスペクションとは、専門的な知識を有する者が、建物の基礎、外壁等の部位ごとに生じているひび割れ・雨漏り等の劣化事象や不具合事象の状況を目視・計測等により調査するものです。こうした調査により、建物の所有者や購入予定者が建物の基礎・外壁等の状況を把握することが可能となります。

図:既存建物取引時の情報提供の充実

その他の項目

また、不動産取引全般においても、より一層の消費者利益の保護の強化と不動産取引の適正化・効率化を図るため、併せて以下の改正を行います。

●媒介契約の依頼者に対する情報提供の充実
依頼者が媒介契約を締結した物件の状況を適時適切に把握できるよう、媒介契約を締結した宅地建物取引業者に対し、当該物件について購入等の申し込みがあったときは、遅滞なく、依頼者に報告することを義務付けます。

●宅地建物取引業者に対する重要事項説明の簡素化
不動産取引の効率化を図るため、宅地建物取引業者が宅地又は建物の取得者又は借主となる場合における重要事項説明については、書面交付で足りるものとします。

●営業保証金制度等の改善
営業保証金制度及び弁済業務保証金制度は、宅地建物取引業者が取引において相手方に損害を与えた場合の弁済に備えて、あらかじめ一定の金額の保証金を供託等しておく制度です。
今般の改正では、不動産取引における消費者保護の強化を図るため、営業保証金又は弁済業務保証金による弁済を受ける対象から宅地建物取引業者を除外します。

●宅地建物取引士等に対する研修の充実
近年、不動産取引に関連する制度やサービスは専門化・高度化してきており、宅地建物取引業者は、物件そのものに関する内容はもとより、不動産取引に関係する法令(民法、借地借家法等)、融資、インスペクション、リフォーム、瑕疵担保責任保険など、広範な情報を消費者に提供することの重要性が高まってきています。

このため、従業員の資質の向上が図られるよう、以下の改正を行います。
(1) 宅地建物取引業保証協会は、全国の宅地建物取引業者を社員とする一般社団法人に対して、研修に要する費用の助成を行うことができることとします。
(2) 宅地建物取引業者を社員とする一般社団法人に対して、体系的な研修を実施するよう努力義務を課します。

本改正案は平成28年2月26日に国会に提出されました。現在開会中の通常国会での審議を経て、成立を目指しています。
施行期日は、「既存の建物の取引における情報提供の充実」に関する規定は公布日から2年以内、その他の規定は公布日から1年以内を予定しています。

※執筆の内容は、2016年2月末時点によるものです。

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