トップ国土交通省・最新の動き>VOL.138 2019年度予算事業「空き家等の流通・活用促進事業」について

国土交通省・最新の動き今までの掲載記事

2019年度予算事業「空き家等の流通・活用促進事業」について 地域の空き家・空き地等の利活用等に関するモデル事業の取り組み事例を紹介

2020年5月13日

Report
国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
 
事業の目的・概要

本格的な人口減少社会を迎える中、今後とも我が国が経済成長を実現するためには、各分野において生産性の向上を図ることが必要です。
不動産分野についてみると、現状では、有効に活用されていない未利用ストックが多数存在しています。全国の空き家の総数は、近年、増加の一途をたどり、2018年時点で約849万戸、住宅ストック総数の13.6%を占め、1998年からの20年間で約1.5倍に増加しています。
空き家・空き地等の流通・利活用が進みにくい背景として、空き家・空き地等の有効活用・管理には、不動産取引の専門家である宅地建物取引業者の協力が不可欠である中で、地方公共団体と宅地建物取引業者などが連携・協力した取り組みが、まだまだ全国的に広がっていないこと等が挙げられます。これらの課題を解消し、不動産分野における生産性の向上を図り、我が国の経済成長に貢献するためには、このような国民の未利用資産である空き家・空き地等の不動産ストックについて、需給のミスマッチの解消や新たな需要の創出等により、その流動性を高め、有効活用を推進する必要があります。

本事業は、地域の空き家・空き地等の利活用に取り組む地方公共団体と宅地建物取引業者などが連携した団体を募集・選定し、事例の分析や周知等を通じて、空き家・空き地等の流通促進を図ることを目的として2017年度から実施しています。

図をクリックすると拡大表示されます
「空き家等の流通・活用促進事業」の仕組み

実施事業者の選定と特徴的な取り組みの紹介

2019年度は全20団体を採択し、全国各地で空き家の利活用に関する取り組みが実施されました。取り組みの内容を分類すると、(1)空き家利用者への情報発信や空き家所有者の空き家に対する意識改革に関する取り組み、(2)空き家の新たな需要や利活用用途を創出する取り組み、(3)地域の空き家利活用を行う人材の育成・事業実施体制を確立する取り組みなど、大きく3つに分類できます。それぞれの分類ごとの団体数は下図のとおりです。

図をクリックすると拡大表示されます
取り組み内容の分類

ここでは、その中でも特徴的な3団体の取り組み事例を紹介します。

●一般社団法人大正・港エリア空き家活用協議会(活動エリア:大阪府)

空き家や空き店舗の利活用を行う際には所有者の意識改革が重要ですが、本事業では、空き店舗の所有者に対し、地域の価値を再認識させるためのイベントを開催しました。このイベントは、商店街の空き店舗の活用へ向けた仕掛けとして、2日間限定で空き店舗前の軒先を利用してマルシェイベントを開催するといった取り組みでしたが、イベントには13店舗が出店し、約1,000名の来場者がありました。この取り組みにより、空き店舗の所有者や空き店舗を利用したい方が地域のポテンシャルを再認識していただき、空き店舗等の利活用への動機付けの機会として繋がっていくことを目指しています。

図をクリックすると拡大表示されます
一般社団法人大正・港エリア空き家活用協議会の事業内容

●空き家・空き地の相談センター(活動エリア:愛知県)

外国人の入居は、生活習慣の違いや入居者間トラブル、賃料支払いのトラブル等の不安感から敬遠されることがあります。本事業では、外国人技能実習生等の居住環境整備に着目し、自治体、介護事業者等、外国人居住支援NPO法人などの共通課題を持つプレイヤーが連携することで、他の社会課題とセットで空き家利活用を図る取り組みを実施しました。

図をクリックすると拡大表示されます
空き家・空き地の相談センター(活動エリア:愛知県)の事業内容

●中種子町空き家等利活用振興プロジェクト(N-project)(活動エリア:鹿児島県)

空き家の利活用へ向けた活動を持続させるためには、資金面の問題以外にも、地域からの活動認知や地域から協力が得られるかといった点も重要となります。本事業は、鹿児島県の長島町というエリアで複数年にわたってモデル事業の支援等を受けながら町と連携して取り組んできた空き家利活用策のノウハウを、別の自治体エリア(鹿児島県中種子町)で横展開しようと試みた取り組みです。

図をクリックすると拡大表示されます
中種子町空き家等利活用振興プロジェクト(N-project)(活動エリア:鹿児島県)の事業内容

事例報告会の開催

2017年度・2018年度の同事業では、計92の取り組み事例が収集されました。収集した取り組み事例の周知・横展開を図り、地方公共団体と宅地建物取引業者等が連携・協力した取り組みを全国に拡大していくため、2019年度では、空き家対策に取り組む都道府県及び市区町村の空き家対策担当者(自治体)を対象とした事例報告会を全国7会場で開催しました。 本報告会では、これまでに同事業をとおして得られた成功要因や課題を整理・紹介するとともに、実際にモデル事業に取り組んだ団体にも参加いただき、取り組み内容について紹介していただきました。

<報告事例一覧>

会場 団体名 発表者(所属先) 事業概要

東京

空き家再生プロデューサー育成プログラム

濱口氏
(㈱エンジョイワークス)

実際に地域の空き家等の利活用に取り組む団体にて一定期間業務を行い、基本的な空き家利活用スキルや知識をOJTにより学習し、地域の空き家の利活用の主体的なプレイヤーとなる人材の育成プログラムを構築。プログラム終了後もフォローし、ネットワーク化を図っている。
名古屋

NPO法人ふるさと福井サポートセンター

北山氏
(同左)

地域の空き家管理を効果的に行うため、人材ネットワーク(地域からサポーターを募る)とITシステム(空き家調査データベース)を構築。また、空き家の金銭的価値を簡易的に算出できるソフトを開発、空き家所有者の利活用の早期判断を図った。

大阪

ひょうご創生空き家活用プロジェクト

才本氏
(住まいの未来研究機構)

行政等と連携した「食」にまつわるイベントを開催し、当該イベントにて、若手起業家向けに空き家ツアーを企画、地方にある空き家を活用した創業支援・空き家マッチングを図った。また、3D技術やドローン等を活用した効率的な空き家調査方法等の効果検証を行った。

広島

木綿街道空き家・空き地の利活用活性化事業

小田切氏
(㈱NOTE)

先進事例調査や所有者向け空き家相談会結果等を基に、事業者向け勉強会を開催して地元ネットワークによる地域活性化のための空き家・空き地等の効果的な活用手法を検討した。また、地域を巻き込んで所有者と創業希望者をマッチングするための手法の確立と機会提供を行った。

金沢

高岡市空き家活用推進協議会

酒井氏
(同左)

行政が主体的に関わり民間と連携し、市民及び所有者向けの相談会の定期開催及び啓発セミナーの開催、相談結果のデータベース化を図る。また、常設相談所以外に出張相談会を実施、固定資産税納税通知書にセミナーや相談案内を同封するなど、さらなる所有者への意識啓発を図った。

福岡

うきはリライトプロジェクト

石井氏
(うきは市)

自治体が主導となり、産官学及び地域団体等も巻き込んだ、地域の空き家の利活用を進めるための組織体制づくり・人材発掘を進めるため、実際の空き家の利活用ワークショップ等を通じて関係者の巻き込みを実践。また、空き家を活用したまちづくり構想等も検討した。

仙台

NPO法人空き家コンシェルジュ

有江氏
(同左)

これまでの空き家相談情報をデータベース 化し行政等に提供する手法・体制を検討。また、空き家バンク運営に関する課題を調査し、空き家相談に関するノウハウとともに体系化し、「全国版空き家・空き地バンク」の運営補助を民間事業者が行う手法をとりまとめた。

本事業を通じて、取り組みの中で得られた知見・ノウハウについて情報共有することで、各地域で抱える空き家問題の解決につながることが期待されます。

※執筆の内容は、2020年4月末時点によるものです。

国土交通省


詳しくは、国土交通省のホームページ「空き家・空き地等の流通の活性化の推進」を参照ください。

ページトップ