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既存住宅流通の促進に向けた取り組みについて 建物状況調査(インスペクション)を中心とした既存住宅流通の促進に係る制度の紹介

2018年12月12日

Report
国土交通省 住宅局 住宅生産課 住宅瑕疵担保対策室、土地・建設産業局 不動産業課
 

既存住宅の流通促進を図るためには、既存住宅の構造・防水といった基本的な性能に不具合や劣化がないかを確認する建物状況調査(インスペクション)をさらに普及させていくことが重要です。本年4月には、宅地建物取引業法の改正により、建物状況調査が法制度に組み込まれ、不動産会社に媒介依頼者(売主・買主)に対する制度説明や、媒介依頼者の希望に応じ検査事業者の斡旋、重要事項説明等が義務化されました。
国土交通省としては、制度の普及・活用をより一層進めていきたいと考えており、今回は、建物状況調査を中心に、既存住宅売買瑕疵(かし)保険や安心R住宅も含めた既存住宅流通の促進に係る制度を改めて紹介いたします。

※建物状況調査(インスペクション)についてはVol.112を参照。
※既存住宅売買瑕疵保険についてはVol.99を参照。
※安心R住宅についてはVol.110を参照。

既存住宅流通の現状

我が国の既存住宅流通シェアは平成25年時点で14.7%であり、欧米諸国と比べて1/5~1/6程度と低い状況です。
この背景として、既存住宅市場には、売主・買主間に住宅の品質に関する情報の非対称性が存在することにより、市場の透明性が低く、中古住宅の取引に対して消費者が不安を抱えていること等の課題が存在しています。

図をクリックすると拡大表示されます
図表1 既存住宅流通シェアの推移等

建物状況調査を活用した既存住宅売買瑕疵保険への加入

こうした中、建物状況調査は、消費者が安心して既存住宅の取引を行うために重要な取り組みであり、本年4月に施行された宅地建物取引業法の改正では、既存住宅の売買時の重要事項説明の対象に建物状況調査の実施の有無が追加されることとなりました。国土交通省では、建物状況調査を担うことのできる専門家を育成するため、平成29年2月に建築士を対象とした既存住宅状況調査技術者講習制度を創設し、現在、5つの登録講習機関がこの制度に基づいて、建物状況調査の方法など、既存住宅の調査に必要な内容に関する講習を実施しています。平成30年10月までに3万人を超える建築士の方が講習を修了されており、建物状況調査の実施体制は十分整いつつあります。

建物状況調査は、重要事項説明のほか、調査の結果、構造・防水に係る劣化事象等が見られない場合には、その調査結果を既存住宅売買瑕疵保険の加入にも活用できます。
例えば、既存住宅の売買時に建物状況調査を実施することが想定されますが、建物状況調査を実施する建築士事務所などが、売主・買主の方々が安心して住宅を売買できるよう、既存住宅売買瑕疵保険に加入して構造・防水の瑕疵保証を行おうとする場合、事前に建物状況調査により必要な部位が調査され、劣化事象がないなど一定の条件を満たせば、保険の加入に必要な住宅瑕疵担保責任保険法人の現場検査を省略して書面審査とすることができます。これにより保険加入時の検査費用の負担を軽減することができます。

安心R住宅について

建物状況調査に関連する取り組みとして、本年4月から開始された「安心R住宅」制度があります。「安心R住宅」制度は、従来、消費者が中古住宅に対して抱いていた「不安」、「汚い」、「分からない」というマイナスイメージを払拭し、「住みたい」・「買いたい」既存住宅を選択できるようにすることで、既存住宅の流通を促進していくことを目的としており、耐震性があるなど、一定の要件を満たした既存住宅に対して、国が商標登録したロゴマークを事業者が広告時に使用することを認める「安心R住宅」制度を創設しました。(平成30年11月末時点で8団体)
標章を付与する要件の一つとして「既存住宅売買瑕疵保険契約を締結するための検査基準に適合したものであること」が定められており、建物状況調査の実施が不可欠となるため、「安心R住宅」が市場に浸透していけば、さらに建物状況調査の普及が進むと考えられます。

今般、登録事業者団体に対し実施状況の調査を行った結果、平成30年9月末時点で482件の既存住宅が「安心R住宅」として流通(広告に標章が使用されている等)していることが確認できました。国土交通省は、引き続き、安心して購入できる「安心R住宅」制度の周知に努め、既存住宅の普及に取り組んでいきます。

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図表2 「安心R住宅」(特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度)

※執筆の内容は、2018年11月末時点によるものです。

国土交通省


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