トップ>国土交通省・最新の動き>VOL.104 「平成29年版土地白書の公表」について
2017年7月12日
平成29年6月に「平成29年版土地白書」が閣議決定されましたので、今回はその内容についてご紹介します。
土地白書は、土地基本法(平成元年法律第84号)の規定に基づき、土地に関する動向等について、毎年国会に報告しているものです。本白書は、「平成28年度土地に関する動向」と「平成29年度土地に関する基本的施策」の2つに分かれております。
「平成28年度土地に関する動向」では、第1部で平成28年度の地価・土地取引等の動向について報告しているほか、近年のホットトピックとして、物流施設や宿泊施設等の成長分野による新たな土地需要を踏まえた土地利用状況と、全国で増加している空き地等の現状と課題について記述しております。また、第2部では平成28年度に政府が土地に関して講じた施策について記述しております。「平成29年度土地に関する基本的施策」では、平成29年度に政府が土地に関して講じようとする基本的施策について記述しております。
今回は「平成28年度土地に関する動向」の第1部「土地に関する動向」を中心にご紹介します。
国土交通省「地価公示」の結果についてみると、全国の平均変動率では、住宅地が下落から横ばいに転じ、商業地は0.9%から1.4%に2年連続で上昇し、全用途についても2年連続で上昇しました。
三大都市圏の平均変動率でみると、住宅地はほぼ前年並みの小幅な上昇となっており、商業地は最近4年間連続して上昇基調になっています。また、地方圏の平均変動率では、住宅地・商業地ともに下落が続いているが下落幅は縮小しており、札幌市・仙台市・広島市・福岡市の4市平均でみると、住宅地・商業地ともに三大都市圏を上回る上昇を示しています。
土地取引について、売買による所有権の移転登記の件数でその動向をみると、平成28年の全国の土地取引件数は129万件となり、前年に比べると0.3%増となっています。四半期ごとの推移を前年同期比でみると、4-6月期に東京都で大きくマイナスとなっています。
本章では、不動産投資から見る成長産業の動きを捉え、物流施設等の整備による土地利用の変化、インバウンド等の観光需要による土地利用の変化、国際化における都市間競争と都市部での土地利用の状況について取り上げています。
Jリートにおける組み入れ不動産の評価額は、平成22年の約7.5兆円から右肩上がりで推移しており、平成28年末においては、約16.6兆円となっています。特に、物流施設及びホテルについて増加幅が大きく、平成22年以降、物流施設は約2兆円、ホテルは約1兆円まで評価額が増加しています。
物流施設については、近年、首都圏では、臨海部のみならず内陸部高速道路IC付近で開発が盛んに行われています。物流施設関係者へのヒアリングによれば、この開発動向は、圏央道等の高速道路一部開通で内陸部の交通利便性が向上したことや臨海部に比し低い価格で土地を取得することができることから、臨海部における老朽化した高賃料の物流施設に入居するテナントを低い賃料で誘致できること等に起因しているとみられています。
宿泊施設については、近年の訪日外国人観光客数の増加の影響でインバウンド需要が発生し、特に道頓堀地区周辺において大きな地価の上昇がみられたことや、近年外資系ホテルが運営するラグジュアリーホテルの開発が見られる京都市の事例等を紹介しています。
国際化における都市間競争と都市部での土地利用の状況では、東京(丸の内・大手町地区)のオフィス価格が、金利低下や好況なマーケットを背景に香港に次いで世界で2番目に高い水準にあることや、東京でみられるオフィスや商業施設等の開発事例について紹介しております。
本章では、土地需要の減少によって急速に増えていくと予想される空き家の敷地や空き地といった低・未利用不動産の動向や、所有者の所在の把握が難しい土地の現状等を分析したうえで、空き地等の適切な管理・活用に資する特徴的な取組を紹介しています。
全国の空き地の状況について、国土交通省「土地基本調査」によると、法人が所有する空き地等の面積が減少傾向であるのに対して、世帯が所有する空き地等の面積はこの10年間で1.4倍に増えており、特に、屋外駐車場や資材置場等として利用されていない「空き地」の増加が著しくなっています。
また、空き地等が放置され続けた結果として、所有者が直ちに判明しない、または判明しても連絡がつかない土地が増大すれば、様々な事業の推進において土地の円滑な利活用に支障を来すだけでなく、所有者の探索や所有権の取得等に要する負担も増大するおそれがあります。この問題の実態として、例えば、4市町村の計400筆の登記簿についてサンプル調査を行ったところ、50年以上登記簿が更新されていない割合は19.8%に及びました。
このような中、本白書では、空き地等の適切な管理や活用に係る先進事例を紹介しています。三重県名張市では、管理が不十分な空き地の増加が問題となったことから、平成19年に条例を改正し、代執行による雑草等の除去を可能としました。この他にも、土地区画整理事業用に買収した未利用地にコンテナを設置し、イベントスペースとした埼玉県深谷市の事例等を記載しております。
今回は、土地に関する動向について概要を紹介しましたが、白書本文では各種統計データを用いたより詳細な分析と、政府の土地に関する基本的施策を記載しています。土地に関する動向や施策について理解を深める際の参考としていただければと思います。
→ 詳しくは、国土交通省ホームページ「土地白書」参照
※執筆の内容は、2017年6月末時点によるものです。