トップ住まいのトラブル相談室トラブル事例集退去・原状回復・敷金返還をめぐるトラブル
退去の前に契約書を読み直してみたら、リフォーム、修繕の費用はすべて入居者負担という一文がありました。そこまで多額の負担をしなくてはいけないものでしょうか?
借り主が通常の使い方をしていて、損耗してしまったもの、時間が経って自然に変化した部分の修繕については、貸し主が負担をします。もし、契約書に入居者の負担を定めた特約があったとしても、以下の条件が満たされていなければ、その特約は有効ではありません。
この事例においては、借り主が通常の原状回復義務を超えて負担していることを認識していません。また、負担する意思も明確であったとはいえないことからも、「すべて入居者負担」という特約は無効と考えられます。原状回復に関する特約は契約時に注意して読み、納得のいかない項目についてはその時点で申し出て、退去時にトラブルの種にならないようにしておきたいものです。
なお、借り主の故意・過失や通常行うべき注意を怠ったことが原因で損耗したものについては、借り主が負担するのが原則です。
カレンダーやポスターを貼るため、壁に画びょうを打ってしまい、ごく小さな穴が開いているのですが、これがあると敷金は返還されないのではないかと心配です。
壁紙を貼りかえれば済む、下地ボードの張り替えまでは不要な程度の画びょう、ピン等の穴であれば、敷金返還には影響ありません。ポスターやカレンダー等の掲示は通常の生活において行われる範囲のものであり、そのために使用した画びょう、ピン等の穴は通常の損耗と考えられるため、その修繕費用は貸し主の負担と考えられます。
新居での家具購入に使いたいので、退去の日に敷金を返してもらいたいと思います。
敷金の目的は、貸し主が借り主の債務を担保するものです。そのため、契約で特に定めていない場合、一般的には建物を明け渡し、債務の精算が終わってから敷金は返還されます。退去で建物を明け渡した時点で、貸し主に敷金の請求をして、いつどのような形で返還されるかを確認しましょう。また、契約時には、敷金返還の詳細についても確認をしておくと、不安な思いをしなくて済みます。
賃貸契約において、「敷金2ヶ月のうち、1ヶ月分を償却する。」とする原状回復の特約条項を盛り込むことを求められました。
一般論としては、有効であると考えられます。納得がいかない場合には、退去の際に、司法の場で最終的な法的効力を確認することになります。
いずれにしても、原状回復費用の負担については、一般に、具体的な契約内容、今までどのような使用をしてきたのか、現状がどのようになっているのか等によって決まってきますので、こうした点も考慮することが必要です。(原状回復時の費用等の取り扱いについては、不動産基礎知識「10-2 原状回復の具体例」を参照。)
この度、4年間住み続けたワンルームマンションの明け渡しにあたって、ルームクリーニング等の原状回復のための費用が発生しました。
そこで、これまでの賃貸借契約に基づき、原状回復費用を差し引いた敷金が銀行振込によって貸し主から返金されたのですが、振込手数料を差し引いた金額が振り込まれてきました。
敷金の返還のための振込手数料は貸し主が負担するべきだと思うのですが。
敷金そのものは、借り主の債務の弁済を担保するための預かり金ということになりますが、その返還の債務を負っているのは貸し主です。また民法によると債務の履行のための費用は、特約がない限り、債務者が負担することとなっております。振込手数料は債務の履行のための費用の典型的な例と考えられます。
したがいまして、当事者同士で、敷金の返還のための費用(今回のケースは振込手数料)の負担者を定めていなかった場合には、その負担者は貸し主ということになります。
今回のケースでは、管理会社を含めるなどして、貸し主にその旨対応してもらうと良いでしょう。
退去時の原状回復費用について、契約書にはガイドラインに従うとあるのですが、「地域の慣習だから、ハウスクリーニング代を支払うように」と言われました。
国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」にはハウスクリーニングの費用は賃貸人の負担とすることが記載されています。ガイドラインに従う以上、「ハウスクリーニング費用を賃借人の負担とする」という内容の特約が契約書にないのであれば、基本的にハウスクリーニング費用を支払う義務はありません。しかし喫煙などにより居室全体において、クロスなどがヤニで変色したり臭いが付着した場合には、「居室全体のクリーニングまたは張替費用の支払いを賃借人の負担とする」と判断される可能性もあります。(原状回復については、不動産基礎知識「10-2 原状回復の具体例」を参照。)
リモートワークをすることになったのですが、契約している賃貸マンションには光回線が通っていませんでした。そこで、管理会社の了解を得て、光回線の工事を行いました。しかし退去時に管理会社より「工事は許可していない」と言われ、原状回復費用を請求されました。
賃貸借契約では、事前に賃貸人の書面による承諾を得ることが規定されている場合が多く、賃借人が勝手にリフォームすることはできません。どれほど些細であっても、元に戻すことができなくなってしまう様な現状が変わる工事の場合は、必ず貸主に許可を取る必要があります。
許可を取る際に重要になるのが、「工事の内容」に関する許可を得ることと、該当工事における退去時の原状回復が必要か、不要かをしっかりと確認することです。その上で、工事内容が明記されており、「貸主の承諾」を取ったと判る書面を2部作成し、お互いに1部ずつ保管することで、退去時にトラブルを回避しやすくなります。
今回のケースでは、仮に「光回線工事の許可」を得ていたとしても、「退去時に同工事の原状回復が不要である」という契約を賃借人と貸主との間で交わしていないようですので、原状回復費用を請求されても致し方ないかと思われます。こうした事例では、「口約束」を過信せず、きちんと書面に記録し、証跡を残すことがトラブルを回避する一番の近道です。
4年前に契約した賃貸マンションを退去したのですが、契約当時に提出した現況確認書を管理会社が紛失してしまい、入居当時、既についていたキズの修復まで、原状回復費用として請求されました。
国土交通省の「原状回復ガイドライン」では、普通に生活していたら自然に生じる損耗や経年による劣化等の原状回復費用については貸主が負担し、借主の故意・過失、その他通常の使用を超えるような使用により破損・汚損などが発生した場合は復旧費用を借主が負担するものと示しています。
原状回復の問題は、損耗等の有無など物件の状況をよく確認しておくことや、賃貸契約締結時に原状回復の条件を当事者双方がよく確認し、納得したうえで契約を締結することが必要です。従って、トラブルが生じないよう、「現況確認書(入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト)」を2部作成し、借主もきちんと保管をしておくことや、現況確認の際にきちんと写真などを撮影し、記録として残しておくことも大切になります。もし原状回復費用について管理会社と話がまとまらない場合には、全国各地にある消費生活センターや国民生活センターの窓口で相談してみましょう。(「全国消費生活センター・国民生活センター」については「住まいの相談窓口」を参照。)
今回のように、「現況確認書(入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト)」がない場合、「入居したときからこのキズはあった」という借主の言葉を覆して、原状回復費用を請求することは難しいと思われます。