トップ不動産基礎知識:既存住宅購入のポイント6.建物状況調査(インスペクション)
インスペクションとは、住宅の設計・施工に詳しい建築士などの専門家が、住宅の劣化や不具合の状況について調査を行い、欠陥の有無や補修すべき箇所、その時期などを客観的に検査するものです。新築入居時やリフォーム実施時にも検査は行われますが、注目されているのは、既存(中古)住宅の売買時に行うインスペクションです。
既存(中古)住宅の場合は、売り主も買い主も個人であることが多いので、売買の対象となる住宅の状態について正確な情報を理解したうえで、購入の意思決定や交渉ができるようにすることで安心して取引を行うことができ、引き渡し後のトラブルを軽減する効果が期待できます。
既存(中古)住宅の売買時にインスペクションが活用されるように、売買を仲介する宅地建物取引業者(宅建業者)の役割を強化する宅建業法の改正が行われました。
宅建業法で「建物状況調査」と呼んでいるインスペクションは、既存住宅状況調査技術者(国の登録を受けた既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士)が、既存住宅状況調査方法基準に基づき行う調査のことです。
2018年4月1日に行われた法改正によって、既存(中古)住宅の売買にかかわる各手続きにおいて、宅建業者は次のことが義務付けられています。
(1) 媒介契約の締結時に建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面を依頼者に交付する
(2) 買い主等に対して建物状況調査の結果の概要等を重要事項として説明する
(3) 売買等の契約の成立時に建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面を交付する
この改正によって、一般消費者にとっては、仲介を依頼した宅建業者が建物状況調査を実施する者をあっせんする場合はそれを利用したり、建物状況調査が実施されている場合にその結果について詳しい説明を受けたり、引き渡し後のトラブルを防ぐために建物の状況を書面で受け取ったりといったことができるようになりました。
ただし、建物の検査が行われたからといって、必ずしも宅建業法に規定する建物状況調査の要件を満たすとは限りません。加えて、「重要事項説明などの対象となる建物状況調査」は、調査を実施してから1年以内のものとされています。
なお、建物状況調査は目視、計測等による調査で、床や壁をはがして調査することまでは求められていません。足場を組まずに移動できる範囲に限られ、一戸建てでは小屋裏や床下の点検口から目視できる範囲などとしています。したがって、外から見えないところの劣化や不具合を把握したり、住宅の性能を判定したりするものではないことに注意が必要です。
国土交通省では、建物状況調査の概要や売り主及び買い主が実施するメリット、検査事業者による保証などについて掲載したリーフレットを作成しています。
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※国土交通省が作成した【売主用】建物状況調査紹介用チラシ(制度概要リーフレット)
インスペクションが行われるのは、宅建業法による建物状況調査だけではありません。住宅の売買に関しては、建物を検査するシーンが数多くあります。
例えば、建物の耐震性を調べるための「耐震診断」やシロアリ被害の状況を調べる「シロアリ検査」なども、インスペクションのひとつと言えるでしょう。宅建業法による建物状況調査に加えて、耐震診断やシロアリ検査をプラスしたり、気になる部分についてさらに詳しい調査を依頼することも可能です。このように、インスペクションは、何を目的にするかによってその内容が変わってきます。
また、融資の申し込みや保険に加入するなどのために、建物に関する検査結果が求められる場合もあります。例えば、住宅金融支援機構の「フラット35」を利用するための建物検査、住宅性能評価書を取得するための検査、既存住宅売買瑕疵(かし)保険に加入するための検査などで、それぞれに必要となる検査項目などが異なります。「既存住宅売買瑕疵保険」への加入を希望する場合や「フラット35」の利用を希望する場合などは、宅建業法による建物状況調査を実施する際に事前に相談しておくと効率的に進められます。
→ 詳細は「住宅の瑕疵(かし)保険」を参照
参考:建物検査とシロアリ検査(動画・約4分)
具体的な検査内容をご紹介します。
※音声が流れます。
※企画:株式会社静岡新聞社・静岡放送株式会社
制作協力:静岡不動産流通活性化協議会
制作・著作:公益財団法人不動産流通推進センター