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不動産に係る情報ストックシステム基本構想について・宅建業者が消費者に充実した情報提供をするためのシステムの基本的な方向性をとりまとめ

2014年5月14日

Report
国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
 

国土交通省では、中古住宅の流通促進に向け、「不動産流通市場活性化フォーラム(※1)」提言(平成24年6月)及び「不動産流通市場における情報整備のあり方研究会(※2)」中間とりまとめ(平成24年9月)の指摘を踏まえ、宅地建物取引業者(以下「宅建業者」)が容易に不動産取引に必要な情報を収集し、消費者に対してより充実した情報を提供するためのシステムの具体的な構築・運用に向け、「不動産に係る情報ストックシステム基本構想(以下「基本構想」)」をとりまとめました。
今回は、その基本構想の内容について紹介します。

※1 不動産流通市場活性化フォーラム提言についてはVol45参照
※2 「不動産流通市場における情報整備のあり方研究会」中間とりまとめについてはVol47参照

本基本構想の目的

現在、中古住宅の取引においては、新築住宅とは異なり、取引に必要な情報が複雑かつ各方面に散逸していることが多く、宅建業者の調査・情報集約に係る負担・コストが大きいことなどから、消費者に対して充実した情報を適時適切に提供することが困難であることが流通促進の課題となっています。


こうした課題を受け、基本構想では、宅建業者が不動産に係る各種の情報を容易に入手し、消費者に対し適時・適切に提供できるよう、不動産取引に関する情報を収集・管理・提供するシステムの整備に向け、システムに集約すべき情報項目やシステムの利用方法等システムの基本的な方向を定めています。

情報ストックシステムの概要

情報ストックシステムは、不動産取引に必要な情報を保有する機関(以下「情報保有機関」)から情報を集約・蓄積し、蓄積した情報を宅建業者及び消費者が効率的に入手できるようにすることを目指しています(図1)。

【図1】情報ストックシステム基本構想の概要   図をクリックすると拡大表示されます
【図1】情報ストックシステム基本構想の概要

情報ストックシステムが情報保有機関から集約する情報は、大きく分けて、(1)物件情報(当該物件の過去の取引履歴、住宅履歴情報(設計図書やリフォーム履歴等をまとめた情報)等)、(2)周辺地域情報(都市計画情報、周辺の価格情報、周辺施設情報等)の二つに分類できます。
これらの情報の中には個人情報や広く一般に公開することが予定されていない情報も含まれていることから、その情報の性質によって、提供する相手方を分けて考えることとしています。
つまり、過去の取引履歴等個人情報に該当する情報やマンション管理情報等広く一般に公開することが予定されていない情報については、宅地建物取引業法上の守秘義務が課せられる宅建業者に提供し、宅建業者から消費者に適切な方法で、かつ、解説を加えながら情報提供することを想定しています。その他の公開情報(都市計画情報、周辺の価格情報等)については、消費者に対しても直接提供することを想定し、その具体的な方法を今後検討していきます。

システムの利用イメージ

宅建業者が利用するシステムの画面イメージは図2の通りです。

【図2】画面イメージ   図をクリックすると拡大表示されます
【図2】画面イメージ

図2では、地図上に物件周辺の都市計画情報(用途地域等)や周辺施設が表示されており、宅建業者は一覧性を持って情報を参照できます。また、画面右側には周辺地域の価格推移や現在参照している物件の過去の売買履歴が表示されており、物件の価格の妥当性を考える上で重要な情報を入手できます。加えて、情報保有機関が保管している住宅履歴情報やハザードマップなどへのリンクを設定し、必要に応じ参照できる方法も検討していきます。図2はあくまでもイメージですが、このような画面から取得した情報を基に、宅建業者が依頼者に対して充実した情報提供を行うことを期待しています。

ここで具体的な利用イメージを図3で紹介します。

【図3】宅建業者が物件案内をする際の利用イメージ(例)
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【図3】宅建業者が物件案内をする際の利用イメージ(例)

ここでは、買主側の業者が購入希望者に物件の案内をする場面を想定します。購入希望者から物件選択に当たって、いくつかの条件が宅建業者に提示されます。これを受け宅建業者は、購入希望者の条件に応じ、情報ストックシステムから、学区情報、周辺施設情報、ハザードマップ、過去の成約価格等の情報を取得し、依頼者の条件に応じた物件であるかについて、充実した情報を基に説明し、そして、取得した情報をシステムがレポートにまとめ、そのレポートを持って物件を見学に行くことなどを想定します(図3)。また、住宅履歴情報やマンションの管理に関する情報をシステムから入手することができれば、維持修繕の状況に応じたリフォームに係るコンサルティングなど、宅建業者による付加的なサービスが提供されることも期待されます。

今後の取り組み

情報ストックシステムの整備に向けては、まず、システム導入による効果や運営上の課題等を明らかにする必要があると考えています。従って、本格的なシステムの整備・運用を実施する前に、平成27年度に一部地域での試行運用を実施し、その効果等の検証を行うことが望ましいと考えています。国土交通省では、この試行運用に向け、本年度、試行運用を実施するためのシステムの構築を行います。

※執筆の内容は、2014年4月末時点によるものです。

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