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知っておくとよい宅地建物取引業法(2)・宅地建物取引業法の条文から読み解く宅建業者が売り主の場合の消費者保護の制限とは

2010年8月11日

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国土交通省 総合政策局 不動産業課
 

当サイトでも、何度となく登場する「宅地建物取引業法」という法律。vol.19に引き続き、今回も消費者が“知っておくとよい”条文について、ご担当者にご執筆をお願いしました。

当コーナーvol.19では、不動産取引に臨む消費者の皆さまに是非知っておいていただきたい宅地建物取引業法(以下「宅建業法」)の条文として事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等」に関する第37条2をご紹介しました。
今回は「損害賠償額の予定等の制限」「手附の額の制限等」「瑕疵担保責任についての特約の制限」についての条文を紹介します。

宅建業法の条文
(損害賠償額の予定等の制限)
第三十八条 宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の十分の二をこえることとなる定めをしてはならない。
 前項の規定に反する特約は、代金の額の十分の二をこえる部分について、無効とする。

(手附の額の制限等)
第三十九条 宅地建物取引業者は、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の十分の二をこえる額の手附を受領することができない。
 宅地建物取引業者が、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手附を受領したときは、その手附がいかなる性質のものであつても、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手附を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
 前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。

(瑕疵担保責任についての特約の制限)
第四十条 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法 (明治二十九年法律第八十九号)第五百七十条において準用する同法第五百六十六条第三項に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条 に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
 前項の規定に反する特約は、無効とする。

上記条文に関する解説

今回ご紹介する第三十八条~第四十条は、宅地建物取引業者(以下「宅建業者」)が自ら売り主となって宅地・建物の売買を行う場合に、買い主となる消費者を保護することを目的とした条文です。

●第三十八条(損害賠償額の予定等の制限)

売買契約の条項では、そのほとんどにおいて債務不履行によって損害が生じた場合の措置として損害賠償額を予定していたり、債務不履行があった場合の違約金の額を定めています。
しかしながら、宅建業者と相手方の自由な契約に任せておくと、この損害賠償の予定額が極めて高額となる場合も考えられます。買い主の債務不履行による契約解除の場合では、売り主である宅建業者が実際に受けるであろう損害の額は、個別の事情によって異なりますが、売買代金の2割を超える額に達することは稀であると考えられます。
そこで、宅建業法では契約内容の適正化を図るために、債務不履行による契約解除に伴う損害賠償の額や違約金の額の合計が代金の額の2割を超えてはならないと定めています。
もしこの規定に違反して、代金の額の2割を超える損害賠償額を予定した契約を締結した場合はどうなるのでしょうか。この場合、2割を超える部分の損害賠償予定額については無効となります。例えば損害賠償額を代金の額の5割とした場合には、2割を超える部分が無効となり、結果的には代金の額の2割を損害賠償額として予定したことになります。

●第三十九条(手附の額の制限等)

まず第一項においては、宅建業者が消費者から多額の手付金を没収する事態を防ぐことを目的として、手付金として受け取ることのできる額を代金の額の2割以内に制限しています。したがって、手付金として例えば代金の額の3割に相当する金銭を受け取ったとしても、手付金とみなされるのは2割相当額のみであって、残りの1割は手付けを代金に充当する旨の定めがある場合は、代金の一部として受領されたものと考えられます。
また、第二項では、宅建業者が売り主となる売買契約において授受される手付金について、その手付金がいかなる性質のものであっても解約手付としての効力を持つと定めています。
これによって買い主となる消費者は手付金を放棄すれば、契約を解除することが出来ることになります。ただし手付金の放棄による契約の解除が可能となるのは、契約当事者の一方が契約の履行に着手するまでの間です。

●第四十条(瑕疵担保責任についての特約の制限)

不動産の売買契約では、売り主が瑕疵担保責任を負うべき期間については、民法の定めのように買い主が隠れたる瑕疵があるという事実を知った時から1年とはせずに、物件の引き渡し時を基準としてその期間を定めることが一般的です。
ただし、その場合は売り主である宅建業者が、一般消費者に対して瑕疵担保責任について買い主に不利な特約(例えば瑕疵担保責任の期間を引き渡しから1ヶ月以内に限る等)を契約書に加えてしまう可能性があります。
そこで、売り主である宅建業者が瑕疵担保責任を負うべき期間について適正化を図るため、「物件の引き渡しの日から2年以上」となる特約のみを認めることとしています。
また、この規定に違反する買い主に不利な特約は無効となります。この場合、売買契約自体は無効にはならないですが、瑕疵担保責任に関しては当該特約が存在しなかったものとして、民法上の規定(隠れたる瑕疵があるという事実を知った時から1年)が適用されます。


第三十八条~第四十条の規定は、消費者の利益を保護するためのものであり、買い主が宅建業者である場合には、取引の専門知識や経験もあるため規制する必要がないことから宅建業者間の取引については適用除外としています。

※執筆の内容は、2010年7月末時点によるものです。


国土交通省


「宅地建物取引業法」については、国土交通省のHP(宅地建物取引業法関係)でご覧いただけます。


当サイト内「不動産基礎知識:買うときに知っておきたいこと」の9.売買契約を結ぶ「売り主が宅地建物取引業者である場合の規制について」も、併せてご確認ください。

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