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不動産の売買取引におけるオンラインによる重要事項説明の本格運用について 「オンラインによる重要事項説明」を売買取引において本格運用

2021年5月12日

Report
国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課
 

前回のVol.149で紹介したとおり、国土交通省では、重要事項説明書等(宅地建物取引業法第35条、第37条書面)の書面の電子化に係る社会実験について、売買取引を対象に宅地建物取引業法第34条の2(媒介契約)に関する書面を追加の上で新たに開始するとともに、賃貸取引においては延長することとしましたが、今般、ITを活用した重要事項説明(IT重説)が、売買取引においても本格運用されることになりましたので、その内容についてご紹介します。

IT重説の本格運用について

IT重説は、一定の要件の下で実施されたテレビ会議等のITを活用したオンラインによる重要事項説明を、対面による重要事項説明と同様に取り扱うものであり、2021年3月30日に開始しました。
IT重説に求められる要件は、「双方向(事業者と消費者)でやり取りできるIT環境において実施」、「重要事項説明書等の事前送付」、「重要事項説明の開始前における消費者の重要事項説明書等の準備とIT環境の確認」及び「宅地建物取引士証を消費者が視認できたことの画面上での確認」の4点です。なお、IT重説は社会実験ではなく、本格運用であるため、社会実験のときのような事業者の登録及び公開はしていません。
また、IT重説に関わるトラブル等に備えるとともに適正かつ円滑な実施に資するための相談窓口を国土交通省のホームページで公開しています。

【図 重要事項説明書の事前送付の流れ】

図をクリックすると拡大表示されます
図 重要事項説明書の事前送付の流れ

IT重説のメリット

対面ではなくITを活用することにより、以下のようなメリットがあります。

(1) 遠隔地に所在する消費者の移動や費用等の負担が減少する

例えば、遠方の大学に就学するため、大学の近くで下宿先を探した後に、時間の都合などで重要事項説明、契約締結の前に地元に戻った場合、これまでは、重要事項説明を受けるために、遠方の宅地建物取引業者(以下、宅建業者)を再度訪問する必要がありました。このため、重要事項説明の場に入居者本人と両親の同席が必要なときなどには、移動にかかる時間や交通費が負担となることが考えられました。しかし、IT重説を利用することで、このような負担が生じることなく、重要事項説明を受けることができます。

(2) 重要事項説明実施の日程調整の幅が広がる

消費者によっては、仕事で平日に十分な時間が取れない、あるいは長時間家を空けることが難しい場合があります。このため、重要事項説明の日程調整に苦労するといったことがありますが、IT重説を利用することで、宅建業者の店舗等に行く余裕がない場合でも説明を受けることができるようになり、重要事項説明を行う日程を、より柔軟に調整できることが期待されます。
また、IT重説を利用することにより、消費者が宅建業者の店舗を訪問する必要がなくなり重要事項説明実施の日程調整の幅も広がることから、消費者が重要事項説明を受ける日から契約締結日の間に十分な期間を確保しやすくなります。

(3) 消費者がリラックスした環境で重要事項説明を受けられる

消費者の中には、不動産取引に不慣れであり、宅建業者の店舗で説明を受ける際に緊張してしまう場合があります。また、重要事項説明には、不慣れな専門用語が含まれている場合もあり、説明内容を十分に理解できないこともあります。しかし、IT重説を利用することで、このような消費者でも自宅等のリラックスできる環境で重要事項説明を受けることができます。さらに、送付された重要事項説明書を事前に読むことにより消費者が必要な質問の準備ができるようになる等、重要事項説明の理解が深まることが期待されます。

(4) 来店が難しい場合でも消費者本人に対して説明ができる

例えば、消費者が、重要事項説明を受けることはできるものの、怪我や感染症の流行等により外出するのが難しい場合があります。このような場合、代理人が、店舗を訪問して重要事項説明を受ける等の対応が生じることになります。しかし、IT重説を利用することで、外出が難しい消費者に対しても直接説明することができます。そのため、消費者に対して、より確実に説明の内容を伝えることができます。

IT化への取り組みについて

国土交通省においては、「ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会」や「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会」を通じて、インターネット等を利用した、対面以外の方法による具体的な手法や課題への対応策を検討してきました。引き続き、社会実験の状況等を考慮しながら前回ご紹介した重要事項説明書等の書面の電子化に係る検討を行っていきます。

※執筆の内容は、2021年4月末時点によるものです。

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