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マンション関連法の改正について 「マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律」の公布

2020年11月11日

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国土交通省 住宅局 市街地建築課
 

今回は、令和2年6月24日に公布された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律」について紹介します。

マンションの高経年化による課題が増加

我が国におけるマンション※1のストック数は約666万戸(2019年末)にのぼり、1,500万人超という国民の1割以上が居住する重要な居住形態となっています。
一方で、外壁等の剝落や給排水管の老朽化による漏水等が増える傾向にある築40年超のマンションは約92万戸に及び、10年後には2.3倍の約214万戸、20年後には4.2倍の約385万戸と今後急増することが見込まれています(図1)。しかしながら、2020年4月時点のマンション建替えの実績は254件(約19,900戸)にとどまっているところです。
また、建設後相当の期間が経過したマンション(高経年マンション)は、区分所有者の高齢化・非居住化により管理組合役員の担い手不足、修繕や建替え等の合意形成の困難さ等の課題が生じています。

管理組合により適切に維持管理されないまま建物・設備の老朽化が進むと、マンションはその規模ゆえに周辺の居住環境に与える影響が大きく、看過できないほどの外部不経済が生じるような状況に至った場合には、行政代執行による除却の措置がとられるなど、膨大な財政的・人的負担が発生するおそれがあります。
※1 おおむね2以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるもの

【図1 高経年マンションストックの増加】

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図1 高経年マンションストックの増加

マンション関連法の改正の概要

マンションを取り巻く課題に対するこれまでの施策としては、2001年にマンションの管理の適正化の推進に関する法律(「マンション管理適正化法」)、2002年にはマンションの建替え等の円滑化に関する法律(「マンション建替円滑化法」)が整備されました。さらに、2014年にはマンション建替円滑化法の改正によりマンション敷地売却制度が創設されるなど、管理の適正化、再生の円滑化の両面から施策が講じられてきました。

今般の改正では、取り組むべき施策の方向性として、管理適正化の推進については行政の役割の強化、管理の適切性の評価・適切な修繕の促進等、再生円滑化の促進については敷地売却事業の対象の拡充、住宅団地における敷地分割の円滑化等が議論されました※2。それらの実現のためには管理・再生の両面から総合的に施策を講じる必要があることから、マンション管理適正化法及びマンション建替円滑化法両法律の改正に至ったものです(図2)。
※2 社会資本整備審議会住宅宅地分科会マンション政策小委員会とりまとめ骨子より

以下、本改正法の主な内容について簡単に解説します。

【図2 マンション管理適正化法及びマンション建替円滑化法の一部を改正する法律の概要】

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図2 マンション管理適正化法及びマンション建替円滑化法の一部を改正する法律の概要

●国による基本方針の策定(管理)

改正前の法律では、国土交通大臣が管理組合によるマンションの管理の適正化に関する指針を策定することとされていましたが、地方公共団体の役割を強化するため、新たに国は、行政の施策等も盛り込んだ総合的な基本方針として「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針」(基本方針)を法定化することとしています。

●地方公共団体によるマンション管理適正化の推進(管理)

現在でもマンションが多く分布する地方公共団体を中心に、管理組合向けのセミナーや相談会の開催、専門家の派遣等が行われています。本改正は、マンションの管理に関する地方公共団体の関与を法定化することでその取り組みを後押しし、マンションの管理水準の底上げを図るものです。
具体的には、地方公共団体は基本方針に基づき、マンション管理適正化推進計画を作成できることとし、本計画を作成した地方公共団体は、管理組合が作成する個々のマンションの管理計画の認定を行うことができることとしました。そして認定を取得したマンションが市場で評価されることで、区分所有者全体の適正管理への意識の向上や管理水準の維持に繋げる趣旨です。

●除却の必要性に係る認定対象の拡充(再生)

これまで、要除却認定については耐震性不足マンションを対象としていましたが、2020年には新耐震基準に基づき建築されたマンションも築40年を迎えるものが出てくるなど、今後、高経年化した新耐震マンションが急増することが見込まれます。そこで、次の(1)、(2)に該当するものを新たに要除却認定の対象とし、マンション敷地売却事業の対象としました。

(1)外壁等の剝離・落下により周辺に危害が生ずるおそれがあるもの
(2)火災に対する安全性に支障があるもの

また、これまで要除却認定マンションについては、建替え後のマンションについて容積率緩和特例を設け、建替えに係る事業採算性の向上を図っていましたが、上記の(1)、(2)に該当するマンションについてもその対象に加えるとともに、次の(3)、(4)に該当するマンションについても新たに容積率緩和特例の対象としました。

(3)配管設備の損傷等により著しく衛生上有害となるおそれがあるもの
(4)バリアフリー化がされていないもの

●団地における敷地分割制度の創設(再生)

住宅団地において、棟や区画ごとのニーズに応じ、一部棟を存置しながらその他の棟の建替え・敷地売却を行うために、耐震性不足や外壁の剝落等により危害が生ずるおそれのあるマンション等で要除却認定を受けたマンションを含む団地は、本来全員合意が必要となる敷地の分割を多数決決議(5分の4以上)で行えることとしました。
具体的には、マンション建替え事業と類似のスキームで、敷地分割決議、敷地分割組合の設立、敷地の権利に関する敷地権利変換計画の作成等により、敷地の分割を目的とした敷地分割事業を実施できるようにしました。

改正法の円滑な施行に向けて

本改正法は、下位法令の準備期間、創設された事務を担う地方公共団体等の準備期間及び関係者に対する一定の周知期間が必要となるため、公布から1年半以内に施行する項目と2年以内に施行する項目が中心となっています。現在、本年6月の本改正法の成立を受けて、改正法を円滑に施行させるため、「マンション管理の新制度の施行に関する検討会」を設置するなどして、マンションの管理計画の認定基準や要除却認定マンションの基準、各種ガイドラインの策定に向けた検討を行っています。

また、マンションの老朽化による諸々の課題は今後さらに顕在化していくことが見込まれているため、国土交通省では、マンションストックの状況を継続的に把握し、今後も必要な施策を講じてまいります。

※執筆の内容は、2020年10月末時点によるものです。

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