トップ>国土交通省・最新の動き>VOL.129 令和元年版土地白書について
2019年8月14日
2019年6月21日に「令和元年版土地白書」が閣議決定されましたので、今回はその内容についてご紹介します。
土地白書は、土地基本法(平成元年法律第84号)の規定に基づき、土地に関する動向等について、毎年国会に報告しているものです。本白書は、「平成30年度土地に関する動向」と「令和元年度土地に関する基本的施策」の2つに分かれています。
まず、第1部「平成30年度土地に関する動向」については、第1章で2018年度の地価・土地取引等の動向として、地価が上昇基調を強めていること等を報告しています。
次に、第2章では、改元を契機として、平成時代における土地政策の変遷と土地・不動産市場の変化を総括し、令和時代における土地政策を展望するとともに、第3章では、「人生100年時代」を見据え、高齢者が元気に活躍できる環境づくりや、多様な働き方とライフスタイルの実現を後押しする土地・不動産活用の取り組み等を報告しています。
第2部では、2018年度に政府が土地に関して講じた施策、第3部では、2019年度に政府が土地に関して講じようとする基本的施策について記述しています。
今回は「平成30年度土地に関する動向」のうち、第1部「土地に関する動向」についてご紹介します。
国土交通省「地価公示」の結果についてみると、全国の平均変動率では、全用途平均・商業地は4年連続、住宅地は2年連続で上昇となり、上昇基調を強めています。
三大都市圏の平均変動率でみると、全用途平均・住宅地・商業地いずれも各圏域で上昇が継続し、上昇基調を強めています。また、地方圏の平均変動率では、全用途平均・住宅地が27年ぶりに上昇に転じ、商業地は2年連続で上昇しています。特に、札幌市・仙台市・広島市・福岡市の4市平均でみると、住宅地・商業地ともに三大都市圏を上回る上昇を示しています。
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図表1 地価変動率の推移(年間)
土地取引について、売買による所有権の移転登記の件数でその動向をみると、2018年の全国の土地取引件数は131万件となり、前年に比べると約1万件減(0.7%減)となりました。
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図表2 売買による土地取引件数の推移
本章では、第1節で、平成時代における社会経済情勢の変化と土地政策の変遷について振り返り、次に第2節で、土地利用の用途毎の土地利用動向などを取り上げています。最後に第3節で、平成時代の土地政策等を総括するとともに、令和時代の土地政策上の課題と対応の方向性を展望しています。
なお、ここでは、各節各項の題名等を抜粋した記載のみとしていますので、詳細は土地白書の本文をご参照ください。
●第1節 平成時代における社会経済情勢の変化と土地政策の変遷
本節では、平成時代を、(1)バブルの崩壊(1993年頃)までの時期、(2)バブル崩壊から人口減少時代に突入した時期(2008年頃)、(3)人口減少時代の始まりから現在までの3つの時期に区分し、地価動向や社会経済情勢の変化を振り返りつつ、土地政策について概観しています。
●第2節 平成時代における土地・不動産市場の変化と土地利用動向
本節では、後記土地利用の用途毎に、土地・不動産市場の変化や土地利用の動向を振り返るとともに、平成時代に多く発生した自然災害を教訓とした防災性向上のための取り組み動向を取り上げています。
●第3節 平成時代の土地政策等の総括と令和時代における土地政策の展望
平成時代の土地政策は、バブル期には地価高騰を抑制するため「適正かつ合理的な土地利用」、バブル崩壊後には豊かで安心できる「土地の有効利用」を推進し、近年では、人口減少等が進展する中、空き地・空き家問題や所有者不明土地問題への対応が進められています。
令和時代には、人口減少時代に対応した土地基本法の理念・責務の見直しや土地に関連する制度・施策を再構築し、土地の適切な利用・管理の促進を図っていくこととしています。
本章では、第1節において、健康寿命が伸びる高齢者を中心に、安心して暮らし、元気に活躍できる環境づくりに関する土地・不動産活用の動向を取り上げ、第2節において、多様な働き方やライフスタイルを後押しする土地・不動産活用の動向を取り上げています。
●第1節 高齢者が安心して暮らし、元気に活躍できる環境づくりに関する動向
国土交通省が実施したアンケート調査結果によると、高齢期の過ごし方に関する意向としては、「趣味」が最も多く、次いで「のんびり過ごすこと」、「仕事」、「スポーツや健康増進」の順に多くなっています。
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図表3 高齢期の過ごし方に関する意向
【事例】生涯現役社会の実現や生涯学習の場の提供に関する取り組み
定年退職後に起業を志すシニアを支援するための高齢者向けレンタルオフィスは、起業に必要なノウハウの習得のための個別相談等や起業や就業を志すシニアが集う交流会等でビジネス展開に向けた関係づくりができます。
図表4 高齢者向けレンタルオフィス(東京都中央区)
●第2節 多様な働き方やライフスタイルの実現を後押しする土地・不動産活用の取り組み
1.仕事と子育ての両立を支える環境づくり
国土交通省では、過去20年以内に引越し経験を有する首都圏在住の世帯を対象に、インターネットアンケート調査を実施したところ、通勤時間は、共働き世帯で40分以内の居住地を選択した世帯の割合は約半数という結果となりました。
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図表5 通勤時間に関する意識調査
【事例】仕事と子育ての両立を支援する職・育・住近接の実現に向けた取り組み
本マンションは、つくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」駅まで徒歩3分、東京駅まで30分台で結ぶなど、立地性・生活利便性を有し、マンション入居者の入園を優先した保育園、夜間・休日診療に対応した小児科医院のほか、学童保育施設等に夕食の提供を行う食堂など、多様な子育て支援施設が整えられています。
図表6 マンションの外観・子育て支援施設等(千葉県柏市)
2.多様なライフスタイルの実現に向けた地方移住・二地域居住を支える環境づくり
「まち・ひと・しごと創生基本方針2018」においては、人生100年時代の視点に立った地方創生として、UIJターンに対する支援や、将来的なUIJターンにつながる二地域居住の拡大等に向けた取組を促進しています。
【事例】地方移住・二地域居住を後押しする取り組み
近年、地方公共団体の空き家バンクに登録された空き家とこれに付随する小規模な農地(農地付き空き家)について、農地の権利取得要件を引き下げて移住希望者等に提供する取り組みが拡大しています。
図表7 農地付き空き家の取引事例(兵庫県宍粟市)
今回は、土地に関する動向について概要を紹介しましたが、土地白書本文では各種統計データを用いたより詳細な分析と、政府の土地に関する基本的施策を記載しています。土地に関する動向や施策について理解を深める際の参考としていただければと思います。
※執筆の内容は、2019年7月末時点によるものです。