トップ>不動産トピックス>2021年の首都圏既存(中古)マンションの価格乖離率、売却期間1ヶ月以内ではマイナス2.41%
2022年8月17日
(株)東京カンテイはこのたび、「2021年 中古マンションの売出事例と取引事例の価格乖離率」を発表した。三大都市圏(首都圏・近畿圏・中部圏)における既存(中古)マンションの売り出し開始から成約に至るまでに要する期間と、売出価格と取引価格との乖離について、相関を分析したもの。「価格乖離率(%)」とは、既存(中古)マンションが売りに出された際の価格(売出価格)と、その物件が成約に至った際の価格(取引価格)の差額との比率で、「(取引価格-売出価格)÷売出価格×100」で算出される。
価格乖離率が正の値であれば売出価格よりも取引価格の方が高く、負の値であれば売出価格よりも取引価格の方が低いことを示す。価格乖離率が正の値となるケースはごくまれであることから、調査では負の値となるケースのみを分析対象としている。
※所在階数や専有面積などの情報を基に住戸の特定が可能な事例について各取引事例とその売出事例の中で最も古い事例(最初の売出事例)を突き合わせ、売り出し開始から成約までに要した期間が12ヶ月以内の組み合わせのみを対象として分析
首都圏における2021年上期(1~6月)の既存(中古)マンションの一戸平均価格は、売出価格が4,017万円(前期(2020年下期)比3.4%増)、取引価格が3,831万円(同5.0%増)となり、ともに前期より上昇した。価格乖離率はマイナス4.63%(図1)と、前期のマイナス6.05%から1.42ポイント縮小し、同社では「2020年春に発出された緊急事態宣言が解除されて以降、既存(中古)マンション市場ではニーズの高まりを背景に“売り手市場”の様相を呈している」と見ている。売り出し開始から成約に至るまでの期間(売却期間)は3.29ヶ月(前期比0.86ヶ月減)だった。
2021年下期(7~12月)は、売出価格が4,158万円(前期(2021年上期)比3.5%増)、取引価格が3,969万円(同3.6%増)で、価格乖離率はマイナス4.55%(同0.08ポイント縮小)、売却期間は2.89ヶ月(同0.40ヶ月減)だった。「売却期間が3ヶ月間を切ったのは2010年下期以来、22期ぶり」だという。
2021年の価格乖離率を売却期間ごとに見ると、売却期間が1ヶ月以内ではマイナス2.41%、不動産取引における専属専任媒介・専任媒介契約の有効期間である3ヶ月以内では平均マイナス3.25%で、「売り出し開始からの3ヶ月間では最初の売出価格からわずか3%強の値下げで成約に至っていた」ことが分かった。2020年調査と比べると「いずれの売却期間においても価格乖離率は縮小」しているという。
売却期間が1ヶ月以内の事例シェアは45.8%で、前年(2020年)の35.1%から10ポイント以上拡大した。3ヶ月以内の累計事例シェアは69.1%と7割弱を占めた。
売却期間別の価格乖離率シェア構成を見ると、売却期間1ヶ月以内では、価格乖離率「0%」(43.0%)が最多で、次いで「マイナス5%以内」(37.0%)、「マイナス10%以内」(13.2%)の順となった。前回調査では「『マイナス5%以内』が最大シェアだったが、今回は『0%』と順位が入れ替わる結果」に。一方で、売却期間9ヶ月以上では、「マイナス20%超」のシェアが10%を超える結果となった。
出典:(株)東京カンテイ 「2021年 中古マンションの売出事例と取引事例の価格乖離率」
近畿圏における2021年上期の既存(中古)マンションの一戸平均価格は、売出価格が2,851万円(前期比0.2%減)、取引価格が2,636万円(同プラスマイナス0.0%)で、価格乖離率はマイナス7.54%(同0.26ポイント縮小)だった(図2)。同社では、首都圏と同様に「既存(中古)マンション市場ではニーズの高まりを背景に“売り手市場”の様相を呈している」と見ている。売却期間は4.88ヶ月(同0.41ヶ月増)だった。2021年下期は、売出価格が2,976万円(同4.4%増)、取引価格が2,770万円(同5.1%増)で、価格乖離率はマイナス6.92%(同0.62ポイント縮小)、売却期間は4.59ヶ月(同0.29ヶ月減)だった。
2021年の価格乖離率を売却期間ごとに見ると、売却期間が1ヶ月以内ではマイナス3.74%、3ヶ月以内では平均マイナス4.82%で、「売り出し開始からの3ヶ月間では最初の売出価格から5%程度値下げした金額で成約に至っていた」ことが分かった。売却期間が1ヶ月以内の事例シェアは24.7%で、3ヶ月以内の累計事例シェアは51.4%と過半数を占めた。
売却期間別の価格乖離率シェア構成を見ると、売却期間1ヶ月以内では、価格乖離率「マイナス5%以内」(47.3%)が最多で、次いで「マイナス10%以内」(21.0%)、「0%」(20.7%)の順となった。
中部圏における2021年上期の既存(中古)マンションの一戸平均価格は、売出価格が2,600万円(前期比6.8%増)、取引価格が2,408万円(同7.1%増)で、価格乖離率はマイナス7.38%(同0.26ポイント縮小)だった(図3)。同社では、首都圏・近畿圏と同様に「既存(中古)マンション市場ではニーズの高まりを背景に“売り手市場”の様相を呈している」と見ている。売却期間は4.06ヶ月(前期比0.10ヶ月減)だった。2021年下期は、売出価格が2,642万円(前期比1.6%増)、取引価格が2,454万円(同1.9%増)で、価格乖離率はマイナス7.12%(同0.26ポイント縮小)、売却期間は3.82ヶ月(同0.24ヶ月減)だった。
2021年の価格乖離率を売却期間ごとに見ると、売却期間が1ヶ月以内ではマイナス3.58%、3ヶ月以内では平均マイナス4.91%で、近畿圏と同様、「売り出し開始からの3ヶ月間では最初の売出価格から5%程度値下げした金額で成約に至っていた」ことが分かった。売却期間が1ヶ月以内の事例シェアは36.6%で、3ヶ月以内の累計事例シェアは60.2%と約6割を占めた。
売却期間別の価格乖離率シェア構成を見ると、売却期間1ヶ月以内では、価格乖離率「0%」(38.0%)が最多で、次いで「マイナス5%以内」(29.8%)、「マイナス10%以内」(17.5%)の順となった。「マイナス10%超」の合計シェアは14.7%(「マイナス20%以内」9.5%、「マイナス20%超」5.2%)で、「他の都市圏よりも大きい」という。
出典:(株)東京カンテイ 「2021年 中古マンションの売出事例と取引事例の価格乖離率」