トップ>不動産トピックス>首都圏の既存(中古)マンション、売り出しから3ヶ月以内の価格乖離率は4%程度
(株)東京カンテイはこのたび、「中古マンションの売出事例と取引事例の価格乖離率 2016」を発表した。三大都市圏(首都圏・近畿圏・中部圏)と福岡県における、直近10年間(平成19~28年)の既存(中古)マンションの売り出し開始から成約に至るまでの期間と、売出価格と取引価格の乖離率※1について分析したもの。
※1 既存(中古)マンションの価格乖離率は、売りに出された際の価格(売出価格)と、その物件が成約に至った際の価格(取引価格)の差額との比率で、「(取引価格-売出価格)÷売出価格×100%」で算出される。同社では、負の値となる事例のみを分析対象としている。
首都圏における直近10年間の価格乖離率を売却期間ごとに見ると、売り出し開始から成約までの期間が1ヶ月以内ではマイナス3.00%(表1)、2ヶ月ではマイナス5.15%、3ヶ月ではマイナス6.83%で、「期間の長期化に伴って乖離率も拡大する傾向にある」という。不動産取引における専属専任媒介契約・専任媒介契約※2の有効期間である3ヶ月以内の平均はマイナス4.21%で、「売り出し開始からの3ヶ月間では最初の売出価格から4%程度値下げした金額で成約に至っていた」ことが分かった。
売却期間ごとの事例シェアを見ると、1ヶ月以内では39.6%となり、「全体の4割近くが売り出し開始から1ヶ月以内で成約に至っている」ことが分かった。3ヶ月以内の累計事例シェアは67.3%で、6ヶ月以内には86.7%と「大半のケースで成約に至っている」ことが分かった。
専有面積帯別に見ると、40~70㎡台の「実需・投資ともにニーズが高い」層では、価格乖離率は首都圏平均のマイナス6.70%より低く、「面積が極端に狭かったり広かったりするほど価格乖離率は大きくなる傾向にある」という。特に、グロス価格が高くなる100㎡以上では、マイナス9.30%に拡大している。また、売却期間について見ると、30~70㎡台では概ね3ヶ月以内(30㎡台2.97ヶ月、40㎡台2.91ヶ月、50㎡台2.88ヶ月、60㎡台3.01ヶ月、70㎡台3.02ヶ月)だが、80㎡台では3.22ヶ月、90㎡台では3.71ヶ月と長期化し、100㎡以上では3.99ヶ月と、「首都圏平均(3.04ヶ月)よりもさらに1ヶ月ほど成約までに期間を要している」ことが分かった。
※2 専属専任媒介契約・専任媒介契約については、当サイトの「不動産基礎知識:売るときに知っておきたいこと:3.不動産会社に売却を依頼する:3-4 不動産会社と媒介契約を結ぶ」を参照
※(株)東京カンテイ 「中古マンションの売出事例と取引事例の価格乖離率 2016」(首都圏)
近畿圏においては、売り出し開始から成約までの期間が1ヶ月以内の価格乖離率はマイナス4.30%で(表2)、首都圏と同様、「期間の長期化に伴って乖離率も拡大する傾向」だという。3ヶ月以内の平均はマイナス5.31%で、「売り出し開始からの3ヶ月間では最初の売出価格から5%程度値下げした金額で成約に至っていた」ことになり、「首都圏よりも概ね1ポイント上回っているが、4ヶ月以降ではさほど違いは見られない」結果となった。
売却期間ごとの事例シェアを見ると、1ヶ月以内では40.8%で、首都圏と同様に「長期化に伴って縮小傾向を示している」という。3ヶ月以内の累計事例シェアは67.1%で、6ヶ月以内には84.9%に達している。
専有面積帯別に見ると、価格乖離率は、60~80㎡台で近畿圏平均のマイナス7.28%より小さい一方、30~40㎡台や100㎡以上など「面積が極端に狭かったり広かったりするほど価格乖離率は大きくなる傾向にある」という。売却期間についても「似通った傾向」といい、30~40㎡台(4.00ヶ月)や100㎡以上(3.91ヶ月)では4ヶ月程度と、近畿圏平均(3.15ヶ月)より長期化している。同社では「投資向けワンルーム・コンパクトタイプの住戸や高い価格水準となってしまう広い面積の住戸に対する購入ニーズは限定的であるのに対し、一般的なファミリータイプの住戸では引き合いの良さや4分の3以上の事例シェアを占めている点からも購入ニーズは非常に高いことがうかがえる」と見ている。
※(株)東京カンテイ 「中古マンションの売出事例と取引事例の価格乖離率 2016」(近畿圏)
中部圏では、売り出し開始から成約までの期間が1ヶ月以内の価格乖離率はマイナス4.52%(表3)。3ヶ月以内の平均はマイナス5.45%と、首都圏(マイナス4.21%)や近畿圏(マイナス5.31%)より大きいが、「売却期間が長くなるに連れての価格乖離率の拡大は小さい」という。売却期間ごとの事例シェアを見ると、1ヶ月以内では33.4%で、概ね4割だった首都圏や近畿圏を下回った。3ヶ月以内の累計事例シェアは57.2%で、6ヶ月以内には78.2%に達している。
専有面積帯別に見ると、一般的なファミリータイプである60~80㎡台では「価格乖離率・売却期間ともに中部圏平均(マイナス7.79%、3.86ヶ月)と大きな違いは見られない」が、他の面積帯では中部圏平均を上回っているといい、特に30~40㎡台では価格乖離率がマイナス14.64%、売却期間が6.00ヶ月と、ともに拡大している。同社では「中部圏においては専有面積が狭めの既存(中古)物件に対するニーズは極めて限定的であると言えよう」としている。
※(株)東京カンテイ 「中古マンションの売出事例と取引事例の価格乖離率 2016」(中部圏)