トップ>不動産トピックス>東日本大震災後の家族の意識に新たな変化、重心を子供へ置く「子供信託家族」へ
(株)博報堂の研究機関である博報堂生活総合研究所は、このたび「日本の家族25年変化」平成25年の調査・分析結果を発表した。日本の家族の現状と行く末を見極めることを目的に、昭和63年より、平成10年、平成20年と家族に関するアンケートを同一質問内容で実施し、日本の家族の意識変化について研究を重ねてきたもの。
首都40キロメートル圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)に居住する、妻の年齢が20~59歳の夫婦が同居しているサラリーマン世帯※1を対象として、平成25年5月23日~6月17日に調査を行い、1,000世帯(妻1,000人、夫1,000人)の回答※2を得た。
※1 対象条件は、夫がサラリーマンであること。子供の有無は問わない。調査対象世帯のうち、子供のいる世帯は93.3%。
※2 妻が自身について回答する妻票、妻が自分の世帯について回答する世帯票、夫が自身について回答する夫票の3種類全ての質問票への回答をもって1世帯分と見なす。
今回の調査では、平成23年に起きた東日本大震災の家族に対する影響を念頭に置いて、平成20年から25年までの5年間で日本の家族にどのような変化が起こったのかを調査・分析し、「3.11後に生まれた日本の家族の新しい動きを9つのFindingsとして明らかに」した(表)。
同研究所では、この調査結果から「今の家族は『時間、お金、意識』の重心をより『子供』に置く傾向が強まっている」とし、新しい家族像として「子供信託家族」と名付けている。また、「未曾有の災害やリーマンショック後の長引く不況などの大きな社会変化を経験した日本の家族は、不安な日常の中で家族・子供の大切さを再認識し、不透明な未来へ子供を送り出すために、家族リソース配分の重心を子供に向けようとしているようだ」と分析している。
※(株)博報堂 博報堂生活総合研究所 「日本の家族25年変化」
次に、調査結果を詳しく見ていこう。
「9つのFindings」のうち、「親子の関係」においては「お金は子供のために蓄える」「妻は子供との時間を大切に思っている」「親子関係にはけじめをつける」という傾向が見られた。貯蓄の目的では「子供の入学資金として」が前回(平成20年)の56.4%から62.4%に増加し、妻の「いま充実させたい時間」では、「自分のプライベートな時間」が初めて減少(64.8%→58.4%)する一方で「子供と一緒の時間」が増加(16.5%→25.2%)。「子供とは友達みたいな親子関係であるほうが良い」は夫婦共に減少している。
「夫婦の関係」においては「夫婦関係がフラット化し、相対的に妻の立場が強まっている」「妻の異性関係への興味が低下」「夫の家事協力が進んでいる」という傾向が見られた。「現実の夫婦像」として「友達夫婦」は前回の45.5%から48.3%に増加、夫婦の発言権では「妻の発言権は強い方が良い」が38.9%から42.0%に増加した。また、妻の「異性の友人が欲しいと思う」が28.8%から24.4%に減少しており、同研究所では「異性との遊びに時間やお金を割くのならば、家庭や子供に目を向けたいという気持ちがうかがえる」と見ている。
「親族との関係」においては「家族のイメージが親、兄弟・姉妹に拡がっている」「親の育児支援が定着している」という傾向が見られた。家族といって思い浮かべる人が、配偶者や子供といった同居家族だけでなく、自分の親や兄弟・姉妹、配偶者の親にまで拡がっているという。親との同居意向は、配偶者の親について「別居して生活するが近くに住みたい」が前回の40.6%から45.7%に増加(図)、自分の親についても46.8%から52.7%に増加しており、同研究所では「家族のイメージは親まで拡がっているが、同居を希望しているわけではなく、『別居して生活するが近くに住みたい』という『近居』希望が上昇している」と見ている。
「東日本大震災後、子供のことを案じる妻が増えている」という傾向も見られた。東日本大震災によって自分の家族に対する考え方や行動が「変わったと感じることがある」人は、全体で31.2%(夫21.6%、妻40.8%)を占めた。「妻が変わったと感じることは、子供に関する内容も多く、子供の近くにいたい、子供と一緒に過ごしたい、子供を守りたいなど、子供を気遣う声や、自分で切り抜ける方法、対応力など生きる力を身につけさせたいとの声も上がっている」という。
※(株)博報堂 博報堂生活総合研究所 「日本の家族25年変化」