トップ>不動産トピックス>耐震診断依頼者の約75%は60歳以上、新耐震基準建物でも約84%は耐震性に問題あり
日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(以下、木耐協)は8月30日、「耐震診断依頼者の年齢と築年数との関係」を主なテーマとする「木耐協 耐震診断 調査データ」を発表した。
「耐震診断依頼者の年齢と築年数との関係」についての調査では、平成22年以降に木耐協に耐震診断を依頼した人のうち、診断依頼者の年齢について回答があった1,381件について分析した。
耐震診断依頼件数を年代ごとに見てみると、39歳以下は4.42%、40~49歳は6.66%、50~59歳は14.63%、60~69歳は33.16%、70~79歳は29.04%、80歳以上は12.09%となり、60歳以上が合計で74.29%と、全体の約4分の3を占める結果となった。
年代ごとに診断物件の平均築年数を比較してみると、基本的には「診断依頼者の年齢が高いほど築年数が古い」傾向が見られたが、「39歳以下に限ってはその傾向が逆転している」という。39歳以下では平均築年数は28.49年と比較的古くなっており(図)、木耐協では「親世代から住宅を譲り受けた30代が、自身の居住に当たって耐震診断を依頼している」場合と、「中古住宅を購入した後に耐震診断を依頼している」場合の2つが考えられるとしている。「39歳以下については『住宅取得直後の耐震診断依頼』である可能性が高いと考えられる」ことから、「住宅取得のタイミングはリフォームを行うには非常によい機会であるため、この層に対してどのように耐震を普及させていくかが、今後の事業者に求められているといえる」と指摘している。
※日本木造住宅耐震補強事業者協同組合 「木耐協 耐震診断 調査データ」(平成24年8月30日発表)
「耐震診断結果」についての調査では、平成18年4月1日~平成24年6月30日までの6年3ヶ月間に木耐協で実施した耐震診断のうち、木耐協で耐震診断結果の詳細を把握している1万6,386件の耐震診断結果について分析した。なお、耐震診断の対象となるのは、昭和25年~平成12年5月までに着工された木造在来工法2階建て以下の建物。
昭和55年以前に建てられた旧耐震基準建物(8,190件)のうち、現行の耐震基準※を満たしているのは2.14%(「倒壊しない」0.13%、「一応倒壊しない」2.00%)で、97.86%(「倒壊する可能性がある」12.36%、「倒壊する可能性が高い」85.51%)は耐震性に問題があることが分かった(表)。昭和56年以降に建てられた新耐震基準建物(8,196件)でも、現行の耐震基準を満たしているのは16.26%(「倒壊しない」2.86%、「一応倒壊しない」13.41%)で、83.74%(「倒壊する可能性がある」23.85%、「倒壊する可能性が高い」59.88%)は現行の耐震基準を満たしていなかった。木耐協では「新耐震基準で建てられている建物であっても、最も古い建物は新築から30年以上が経過しており、劣化事象が見られる物件も少なくない」と見ており、「こういった建物に対する耐震診断・補強の推進も今後の課題と言える」としている。
耐震補強費用の分布を見てみると、木耐協で工事金額を把握している1,253件のうち、787件(62.81%)は150万円未満の工事を実施している。このうち、469件(37.43%)は100万円未満だった。木耐協が調査している平均施工金額は、「ここ数回の調査では150万円前後で推移しており、住まい手が耐震補強にかける費用として想定している金額も100万円~150万円といった金額帯であるものと考えられる」という。「費用対効果の高い補強、消費者が満足できる耐震補強の提案を事業者側が積極的に推進することが求められている」と木耐協では分析している。
※建築基準法の考え方は、「大地震時には人命を守ること」「中地震の場合には建物という財産を守ること」を目標とするが、耐震診断では人命を守ることに重点を置き、「大地震時に倒壊しない」ための耐震性確保を目標としている。
※日本木造住宅耐震補強事業者協同組合 「木耐協 耐震診断 調査データ」(平成24年8月30日発表)