トップ>不動産トピックス>賃貸住宅の「更新料」や「敷引特約」について、相次ぎ最高裁が判断
最高裁判所は、賃貸住宅の「敷引特約(退去時に敷金から一定額を差し引くと定めた契約条項)」が有効か無効かをめぐる2件の訴訟について、3月24日と7月12日に、それぞれ有効との判断を示した。また、「更新料」をめぐる3件の訴訟についても、7月15日に有効とする判断を示した。
消費者の利益保護を目的とした「消費者契約法」10条で「消費者の利益を一方的に害する契約は無効」と定めており、「敷引特約」や「更新料条項」がこれに当たるかどうかが争点となっていた。
更新料とは、賃貸借契約の更新にあたって借り主が貸主に支払うもの。東京都や神奈川県で顕著に見られ、近畿圏でも京都府に比べ、大阪府や兵庫県ではまれであるなどの違いがあるという。更新料をめぐる3件の訴訟は、京都府と滋賀県の3人の借り主が「更新料条項」は無効であるとして、更新料の返還を求めていたもので、大阪高等裁判所での第二審では、2件で「無効」、1件で「有効」と判断が分かれていた。
7月15日の最高裁の判決では、「更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払い」などの性質を持つもので、更新料が慣習となっていることは広く知られており、「更新料条項が賃貸借契約書に記載され、借り主と貸主との間に更新料の支払いに関する明確な合意が成立している」場合は、更新料の額が「高額に過ぎるなど特段の事情がない限り」、消費者契約法に違反するものではないとし、初めて、「更新料条項は有効」との判断を示した。
賃貸住宅からの退去時に、借り主が支払った敷金や保証金から一定額を差し引いた金額を返還するという、いわゆる「敷引特約」は、京都府や兵庫県、福岡県で顕著に見られるという。敷引特約をめぐっては、京都府の2人の借り主が消費者契約法により無効であるとして、退去の際に敷金から差し引かれた金額の返還を求めて争っていた。
3月の判決では、賃貸借契約に付された敷引特約は、「敷引金の額が高額すぎる」場合で、賃料が「賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情がない限り、無効と解するのが相当」であると判断したものの、訴訟の件については、敷引金が通常想定される額を大きく超えるものとまでは言えず、「月額賃料の2倍弱から3.5倍強にとどまっている」ことに加え、更新料のほかに礼金などの一時金を支払っていないなどから、無効とは言えないと結論づけた。
7月の判決はこれを踏襲し、契約条件の一つとして敷引特約を定め、賃貸借契約の締結に至ったのであれば、敷引金が高額すぎるなど特段の事情がない限り無効とは言えず、訴訟の件について「敷引特約は有効」との判断を示した。
しかし、1人の裁判官は、敷引金がどういった性質のものであるか明示されない限り、借り主は賃料や礼金などの妥当性を検討できない上、月額賃料の約3.5倍である敷引金は高額であり、無効であるとの反対意見を述べた。
こうした更新料や敷引金などの透明性を高めるために、(財)日本賃貸住宅管理協会では、平成21年10月から「めやす賃料表示」を導入している。「めやす賃料」として、「賃料、共益費・管理費、敷引金、礼金、更新料を含み、賃料等条件の改定がないものと仮定して4年間賃借した場合(定期借家の場合は、契約期間)の1ヶ月当たりの金額」を表示することを推進している。