トップ>不動産トピックス>欧米に比べ、東京の賃貸住宅は改装の自由が限られ、退去時の敷金返還率も低い
(株)リクルート 住宅総研はこのたび、「愛ある賃貸住宅を求めて NYC,London,Paris&TOKYO 賃貸住宅生活実態調査」を発表した。同研究所は、過去2回にわたりストック型住宅市場の形成に向けた提言を行っている。今回の調査では、欧米3都市の民間賃貸住宅居住者へのアンケート結果などをもとに、民間賃貸住宅市場の課題について指摘している。調査は、東京(首都圏)及びニューヨーク、ロンドン、パリの民間賃貸住宅居住者(15~59歳)を対象として、平成22年7月22日~8月3日にインターネットで実施した。
初期費用のうち敷金について見てみると、都市によって制度に違いが見られる。同研究所によると、ロンドンでは「通常4週間分から6週間分で決められる」ことが多く、パリでは「主に短期貸しの家具付き物件の場合は『1ヶ月』、契約期間が長い(3年または6年)家具なし物件は『2ヶ月』と全国一律で決められている」という。敷金の平均は、東京が最も多く1.6ヶ月分であるのに対し、ニューヨーク1.2ヶ月分、ロンドン1.1ヶ月分、パリ1.4ヶ月分で、大きな開きは見られなかった(図1)。
一方、退去時の敷金の平均返還率を見てみると、東京は42.3%、ニューヨークは72.5%、ロンドンは78.7%、パリは77.8%となっている(図2)。敷金が100%返還される割合は、東京の12.2%に対し、欧米3都市はいずれも6割以上。敷金の返還される割合が低いことから、東京は「原状回復に対する借り手の費用負担が大きい」と指摘している。
※(株)リクルート 住宅総研 「『愛ある賃貸住宅を求めて』 NYC,London,Paris&TOKYO 賃貸住宅生活実態調査」
入居後の部屋の模様替え・改修経験を聞いたところ、「壁や天井を塗り直した、壁紙を貼り替えた」と答えた人の割合が、東京では3.3%であるのに対し、ニューヨークは46.9%、ロンドンは36.4%、そしてパリでは57.5%にものぼった。反対に「いずれもない」と答えた人は、東京では47.4%だったが、ニューヨークでは13.4%、ロンドンでは20.9%、パリでは8.8%と少数派だった。同研究所では、「東京で実施率が高いのは、『エアコンの取付』『蛇口やシャワーヘッドの交換』」などで2割程度の実施率にとどまり、「与えられたものを与えられたままに」住む傾向があると指摘している。
これらの調査結果を踏まえ、賃貸市場活性化に向けて(1)過剰供給の抑制(2)質の向上と長寿命化(3)滅失の促進、跡地の柔軟な活用による都市の緑化(4)リノベーション、セルフリノベーションの推進(5)契約制度の透明化、契約時初期費用の軽減(6)共用空間の付置 について取り組むべきと提案している。