トップ>国土交通省・最新の動き>VOL.40 マンションの新たな管理ルールの検討について
2012年3月14日
分譲マンションのストック数は平成22年末時点で約571万戸となっており、現在も年間で10~20万戸が新規供給されています。国民の1割以上(約1400万人)が分譲マンションに居住しており、東京都では約4分の1、神奈川県では約2割、大阪府や京都府では約2割弱が居住しています。特に特別区や政令指定都市では3~4割、東京都心3区(千代田区・中央区・港区)では5割を超えるなど、大都市では主要な居住形態の一つになっています。このように分譲マンションは我々国民にとって身近な居住形態となりつつある一方で、建物の老朽化、居住者の高齢化、賃貸化、組合活動に対する意識の希薄など、様々な課題を抱えており、その管理については難しい一面もあります。今回はマンション管理の現状・課題と適正化にかかわる国の取り組みを紹介します。
「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」では、「マンション」とは「2以上の区分所有者が存在する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるもの並びにその敷地及び附属施設」と規定されています。この分譲マンションがもつ特殊性としては、一建物に複数の価値観の異なる所有者が居住すること、権利形態が複雑であること等が挙げられます。特に、居住の快適性や資産価値に大きな影響がある躯体、廊下、エレベーター等の共用部分は共有形態となっています。
一般的な分譲マンションの管理の仕組みの概要は図1の通りです。
図1:一般的な分譲マンションの管理の仕組みマンションに関する制度には、大きく以下の二つが挙げられます。いずれも制度の策定から数度の改正を経ています。
(1)建物の区分所有等に関する法律また国土交通省では、管理委託契約を締結する際の指針となるマンション標準管理委託契約書や、管理組合が各マンションの実態に応じて管理規約を制定する際の参考となるマンション標準管理規約を作成しています。(マンション標準管理委託契約書及びマンション標準管理規約は以下参照)
マンション標準管理委託契約書(本文、別紙1、別紙2)
マンション標準管理委託契約書(別表第三、第四)
マンション標準管理規約(単棟型)
マンション標準管理規約(団地型)
マンション標準管理規約(複合用途型)
マンションの管理を阻害している原因の一つとして、マンション居住者の高齢化やマンションの居室の賃貸化等が挙げられます(マンション居住者の高齢化の状況は図2、分譲マンション内の借家の割合は図3参照)。また、管理組合の役員就任を引き受けない理由を調査したところ、高齢のため(25.0%)、仕事等が忙しいから(17.5%)、あまり関心がないから(8.8%)等が主な理由となっています。こうしたマンションでは居住者が管理組合の役員になることを忌避することで管理が形骸化するおそれ等があります。このように管理が形骸化したマンションでは、例えば管理費・修繕積立金の徴収が出来ないことから管理組合の財政が悪化し、共用部分の照明やエレベーターが稼働しない等の問題が生じているケースさえあります。
図2:建築時期別のマンション居住者の高齢化の状況※グラフは「60歳以上のみ」の世帯の割合を表示
※昭和45年以前建築のマンションでは、「60歳以上のみ」の世帯の割合が過半数。
出典:平成20年住宅・土地統計調査より国土交通省再集計
※昭和45年以前建築のマンション では、「一般借家」世帯の比率が1割を超えるものが4割超。
出典:平成20年住宅・土地統計調査より国土交通省再集計
以上で述べた通り、マンション管理については、居住者の高齢化や組合活動に無関心な居住者の増加などにより組合役員の担い手が十分確保できない状況であり、一部のマンションにおいては区分所有者以外の者が管理者となり運営されているマンションも出てきています。しかし、その方法についてはマンション標準管理規約における規定も未整備であり、また管理者として具備すべき要件、業務の範囲と適正性確保、組合財産の保全などの課題も指摘されているところです。このため、マンションの新たな管理ルールのあり方について実態を把握するとともに、その諸課題を整理し、制度化の必要性も含め、当該課題への対応について一定の枠組みを提示することを目的に、国土交通省では平成24年1月10日より「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」を設置しました。本検討会では、専門家を活用した管理組合の運営に対応した標準管理規約の整備や、第三者管理者による適正な管理の実施を担保するための業務運営の枠組みづくりについて検討を進めています。なお、本検討会では、3月に総論的な課題について取りまとめを行ったうえで、4月以降は具体的な制度設計についての検討を進める予定です。
※執筆の内容は、2012年2月末時点によるものです。