トップ国土交通省・最新の動き>VOL.28 不動産投資市場のさらなる活性化に向けて

国土交通省・最新の動き今までの掲載記事

不動産投資市場のさらなる活性化に向けて・国民の豊かさに貢献できる不動産投資市場の整備を

2011年3月9日

Report
国土交通省 総合政策局 不動産業課長 海堀安喜氏
 

身近な不動産運用の1つに、Jリート(Real Estate Investment Trust)といわれる不動産投資信託が挙げられます。不動産投資信託は、投資家から集めた資金をオフィスビルや賃貸用マンション、商業施設などの不動産で運用し、賃貸収益や売却益などを配当金として投資家に分配するものです。また、証券取引所に上場しており、株式と同じように売買することが可能です。
こうした不動産投資市場について、税制改正等による活性化策が検討されています。今回は、不動産投資市場の活性化に向けての取り組みについて、ご執筆をお願いしました。

サブプライム危機やリーマン・ショックを契機とした世界的な信用収縮の影響により、平成20、21年度の不動産証券化の実績は大きく落ち込みましたが、22年度になり、Jリートの公募増資や物件取得の動きが再開するなど、一定の回復が期待されています。

不動産投資市場の役割

不動産の証券化は、1,400兆円ともいわれる個人金融資産をはじめとした民間の豊富な資金を不動産市場に呼び込み、長期・安定的な不動産投資市場で年金などの資金の運用ができる環境を整備するとともに、これらの資金を活用して、工場跡地等の低未利用地の有効活用や優良な都市ストックの形成・運営により、「大都市の国際競争力を高めること」、「高齢社会のニーズを踏まえた住宅・建築物の再生やまちづくりを行うこと」、資産の保有と利用の区分により、「新たな担い手による不動産の有効活用を促進すること」など、わが国の不動産を契機とした内需拡大や経済成長を推進する上でも、非常に重要な分野であると考えています。

不動産投資市場戦略会議の設置

今年は、Jリートが誕生して10年という節目の年を迎えます。このような中、国土交通省においては、昨年末に、「不動産投資市場戦略会議」を設置し、不動産投資市場全体を見据えたグランドデザインについて、官民の関係者が一体となって取り組むべきものとして、提言を取りまとめました(図表)。
その内容は、(1)デット市場にかかわる課題、(2)Jリートや私募ファンドなどの仕組みにかかわる課題、(3)不動産市場にかかわる課題、(4)税・会計制度にかかわる課題など、多くの関係者の意見を踏まえ、これまでの議論を整理したものですが、世界でも最大級の金融資産と不動産ストックを有するわが国において、不動産・金融の両市場の活性化を通じて、その豊かさを実感でき、さらなる成長に向けての官民の市場関係者の共通のビジョンとなり、不動産と金融の新たな「Win-Win」の関係構築につながればと思っています。
※不動産投資市場戦略会議については、国土交通省のサイトを参照

不動産投資市場の活性化に向けて

そうした中で、平成23年度税制改正(審議中)により、Jリートの導管性要件が緩和されます。導管性要件の1つとして、投資口の50%超を国内で募集するという要件がありますが、現状では、増資のたびに海外募集割合を50%未満に抑えなければなりません。平成23年度税制改正が実現すると、「個々の増資ごと」ではなく「出資の合算」が、国内50%超の要件を満たしているかによって判定されることになります。この点は、増資の円滑化の観点から、市場関係者の要望が多かった事項です。また、不動産取得税の軽減措置も継続されます。
さらなる税制や関連制度の改正など戦略会議の提言の具体化に当たっても、幅広い市場関係者のニーズや意見を踏まえた上で、金融当局や関係機関との間で、さらに議論を進めていくことが非常に重要であると考えています。京町家の再生から、大規模な都市開発事業まで、不動産投資市場の投資対象は非常に多様ですが、不動産の価値を最大限に引き出していくことに変わりはありません。不動産投資や不動産取引の活性化を通じた内需拡大を推進するためにも、関係される事業者の方々が自由闊達に活動できる環境整備に取り組んでいきたいと考えています。また、個人投資家の方々に対しても、Jリート等の不動産投資についての普及・啓発に努めてまいりますので、引き続きご支援とご協力のほどよろしくお願いします。

図表:不動産投資市場戦略会議報告書(平成22年12月17日)について【概要】
不動産投資市場戦略会議報告書(平成22年12月17日)について【概要】

※執筆の内容は、2011年2月末時点によるものです。

国土交通省


ページトップ