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地球温暖化問題と不動産業の関係について・オフィスビルや住宅の供給・管理を担う不動産業の地球温暖化問題への対応は必要不可欠

2010年10月13日

Report
国土交通省 総合政策局 不動産業課
 

深刻化する地球温暖化問題に対して、不動産業との関係についてご執筆をお願いしました。

わが国の地球温暖化問題への取り組み

地球温暖化問題に対処するため、わが国は、すべての主要国による公平かつ実効性のある国際的な枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提に、温室効果ガスの排出量を2020年までに25%削減することを目指すことを表明し、さらに長期的な観点から2050年までに80%削減することを明らかにしているところです。
これらの中長期目標を達成するためには、あらゆる政策を総動員するとともに、必要となる政策を体系的に明らかにすることが重要ですが、2013年以降の次期枠組みづくりのための国際交渉に向け、政府としてわが国の地球温暖化対策の基本的な方向性を明示することが求められています。

不動産業関係の温室効果ガス排出量の現況

不動産業関係の温室効果ガス排出量を検討すると、2008年度の業務その他部門(商業・サービス・事業所等)のCO2排出量は2億3,500万トンであり、基準年と比べると43.0%(7,070万t-CO2)増加しました。これは、事務所や小売等の延床面積が増加したこと、それに伴う空調・照明設備の増加、そしてオフィスのOA化の進展等により電力等のエネルギー消費が大きく増加したことによるものです。また、2008年度の家庭部門のCO2排出量は1億7,100万トンであり、基準年と比べると34.2%(4,360万t-CO2)増加しました。これは、家庭用機器のエネルギー消費量が機器の大型化・多様化等により増加していること、世帯数が増加していること等により電力等のエネルギー消費が大きく増加したことによるものです。

図表 わが国における温室効果ガス排出量の現況

単位(百万t)

  京都議定書の
基準年
[シェア]
2007年度
(基準年比)
前年度からの
変化率
2008年度
(基準年比)
合計 1,059
[100%]
1,218
(+15.1%)
→〈-6.6%〉→ 1,138
(+7.5%)
産業部門
(工場等)
482
[45.5%]
467
(-3.0%)
→〈-10.4%〉→ 419
(-13.2%)
運輸部門
(自動車・船舶等)
217
[20.5%]
245
(+12.9%)
→〈-4.1%〉→ 235
(+8.3%)
業務その他部門
(商業・サービス・事業所)
164
[15.5%]
243
(+47.9%)
→〈-3.3%〉→ 235
(+43.0%)
家庭部門 127
[12.0%]
180
(+41.1%)
→〈-4.9%〉→ 171
(+34.2%)
エネルギー転換部門
(発電所等)
67.9
[6.4%]
82.9
(+22.2%)
→〈-5.7%〉→ 78.2
(+15.2%)

不動産業における地球温暖化対策への重要性

これらを踏まえると、業務その他部門や家庭部門における地球温暖化対策は喫緊の課題であり、とりわけこれらの分野においてオフィスビルや一戸建て住宅、マンションの供給・管理の中心的存在である不動産業における地球温暖化問題への対応は必要不可欠なものとなっています。しかし、オフィスビル業務については、賃貸人である事業者と賃借人である入居テナントの両者の調整をどのように図るかという、不動産業特有の課題も見られるところです。
テナントビルや賃貸住宅において、温室効果ガス排出量の相当部分は、入居しているテナントの業務活動・日常活動によって大きく左右されます。このため、オーナーだけに温暖化対策の責任を負わせるのではなく、実際に事業活動・日常活動を行って温室効果ガスを排出する者(テナント、オーナー)が、それぞれの排出量に応じて温暖化対策の責任を負うものとする制度設計が必要となります。
また、 オフィスビルにおいては、高効率の設備機器の導入が既に進んでいる新築ビルと、既存の中古ビルとの間で、温室効果ガスの排出原単位に大きな違いがみられることから、地球温暖化対策推進の程度が特に優れた事業所について、削減義務率の軽減など、一定の配慮を行うことが必要となります。

改正省エネ法の成立による措置

2008年5月に大幅に増加している業務部門、家庭部門のエネルギー使用の合理化を一層推進することを目的に、大規模な建築物の省エネ措置が著しく不十分である場合の命令の導入や、一定の中小規模の建築物について省エネ措置の届け出等の義務づけを柱とする「エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律」(平成20年法律第47号)が成立しました。

これにより、平成21年4月1日以降は、

大規模な建築物(床面積の合計が2000㎡以上)の建築時等における届け出に係る省エネ措置が著しく不十分である場合に、所管行政庁は変更指示に従わない者に対し、公表に加え、指示に係る措置をとることを命令することができるようになりました。
住宅を建築し販売する事業者(住宅事業建築主)が新築する一戸建ての住宅の省エネ性能の向上を促す措置が導入されました。

平成22年4月1日以降は、

一定の中小規模の建築物(床面積の合計が300㎡以上)について、新築・増改築時における省エネ措置の届け出及び維持保全の状況の報告が義務づけられました。

また、地球温暖化対策の推進及び経済の活性化を図ることを目的として、エコ住宅を新築された方やエコリフォームをされた方に対して一定のポイントを発行し、これを使って様々な商品との交換や追加工事の費用に充当することができる住宅エコポイント制度も実施しております。


※執筆の内容は、2010年9月末時点によるものです。


国土交通省


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