トップ>国土交通省・最新の動き>VOL.140 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の成立について
2020年7月8日
良好な居住環境を備えた賃貸住宅の安定的な確保を図るため、マスターリース契約(サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約)の適正化のための措置を講ずるとともに、賃貸住宅管理業を営む者に係る登録制度を設け、その業務の適正な運営を確保する「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が2020年6月19日に公布されました。今回は、同法の制定の背景及び概要について解説します。
賃貸住宅は、単身世帯、外国人居住者の増加や賃貸住宅志向の高まり等を背景に、民間主体の保有する賃貸住宅のストック数は増加傾向にあり、2018年時点では住宅ストック総数の4分の1強を占めるなど、今後も我が国の生活の基盤としてのその重要性が一層増大することが見込まれます。一方、賃貸住宅の管理については、従前は、オーナー自らが管理を実施するケースが中心でしたが、近年、オーナーの高齢化や相続等に伴う兼業化の進展、管理内容の高度化等に伴い、賃貸住宅の維持保全や家賃等の管理を行う管理業を専門とする業者に委託するケースが大幅に増加しています。また、賃貸住宅を第三者に転貸する事業を行う業者に住宅を貸し出すことで賃貸住宅経営そのものを業者に一任できる「サブリース方式」も増加しています。
しかしながら、賃貸住宅の管理を巡り、オーナーが管理業務の具体的な実施状況を把握できないこと等に起因する事業者とオーナー、入居者との間のトラブルが増加しているほか、サブリース方式においては、家賃保証等の契約条件の誤認を原因とするトラブルが多発し、社会問題化しているところです。
国土交通省では、こうした賃貸住宅の管理を巡るトラブルの実態を把握するために、2019年7月より、管理業者、家主、入居者を対象としたアンケート調査を実施し、同年12月に調査結果を公表しました。本調査の結果、家主と管理業者の間のトラブルとしては、「賃料等が管理業者から入金されない」、「管理業者から管理業務に関する報告がなく、適切に対応がなされているか把握できない」等が多いこと、また、サブリース業者のうち、契約締結時に家主に対して賃料減額のリスク等を説明している業者が6割程度にとどまっていること等が分かり、トラブルの実態が明らかになりました。
これらの調査結果等も踏まえ、賃貸住宅の管理業務の適正な運営を確保するとともに、サブリース方式においてオーナーとサブリース業者が締結するマスターリース契約の適正化を図ることが必要であることから、本法律案を提出するに至りました。
(1)サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置
マスターリース契約に係るトラブルを未然に防止するため、全てのサブリース業者に対し、マスターリース契約に係る勧誘やマスターリース契約締結前の重要事項説明等の措置が設けられました。なお、マスターリース契約に係る勧誘については、サブリース業者と組んでマスターリース契約に係る勧誘を行う者(勧誘者)についても、規制の対象となります。
(2)賃貸住宅管理業に係る登録制度の創設
賃貸住宅における良好な居住環境の確保を図るとともに、不良業者を排除し、業界の健全な発展・育成を図るため、賃貸住宅管理業者の登録制度が創設されました。
サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置については、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日に、賃貸住宅管理業に係る登録制度の創設については、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日に、施行されることとなっています。
※執筆の内容は、2020年7月1日時点によるものです。