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「不動産業ビジョン2030」の策定について 令和時代の『不動産最適活用』に向けて、これからの不動産業のあり方を提言

2019年6月12日

Report
国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
 

国土交通省では、不動産業が持続的に発展していくための中長期ビジョンについて、2018年10月より社会資本整備審議会産業分科会不動産部会において審議を重ね、今般、その成果を「不動産業ビジョン2030~令和時代の『不動産最適活用』に向けて~」としてとりまとめました。今回はその内容について紹介します。

「不動産業ビジョン2030」の趣旨・目的

不動産は、国民生活や経済活動を支える「場」として、これまでも、また今後も、その普遍的な役割を果たしていくことが期待されています。
オリンピック・パラリンピック東京大会を翌年に控えた2019年現在、今後10年程度の間には、様々な社会経済情勢の変化が予想されており、少子高齢化・人口減少の進展や技術革新など、不動産を取り巻く状況が大きく変化すると見込まれています。
こうした社会経済情勢の急速な変化に当たり、これからの不動産業、不動産政策には、時代や地域のニーズを的確に把握し、それに応え得る不動産を形成するとともに、それらが社会において最適に活用されること、いわば『不動産最適活用』を通じて、個人・企業・社会それぞれにとっての価値創造の最大化を支えることが期待されています。

従来、不動産業は、不動産を通じて、国民生活や経済活動の「場」を創造してきました。今後も、不動産業が、豊かな暮らしと持続的な経済成長の実現を支え、我が国の基幹産業として発展していくためには、不動産業に携わるすべてのプレーヤーが、これからの日本社会が目指すべき方向性を認識し、それを支える不動産や不動産業のあり方を考え、その実現に努めていくことが重要です。
不動産の開発やリノベーションといった一定の期間を要する事業をはじめ、住まいやオフィスなど人々の生活や経済活動の場を支える事業では、あらかじめ中長期的な視点に立って検討を行う必要があり、まさに「待ったなし」の検討課題と言っても過言ではありません。

不動産業に関する中・長期ビジョンは、過去(1986年・1992年)にも策定されていますが、その当時と比較して、現在の我が国を取り巻く社会経済情勢は大きく変化しています。このため、現実的な将来として想起し得る「2030年」をターゲットとした不動産業の中長期ビジョンづくりについて、2018年10月より社会資本整備審議会産業分科会不動産部会において審議を重ねてきたところですが、今般、その成果を「不動産業ビジョン2030~令和時代の『不動産最適活用』に向けて~」としてとりまとめました。


不動産業を取り巻く市場環境の変化

過去の不動産業ビジョンと比較した際の本ビジョンの最大の特徴は、人口減少局面において策定した点にあります。オリンピック・パラリンピック東京大会を翌年に控えた現在、今後10年程度の間には、様々な社会経済情勢の変化が予想されており、不動産を取り巻く状況も大きく変化すると見込まれています。本ビジョンでは、2030年頃までの間に想定される社会経済情勢の変化として、「少子高齢化・人口減少の進展」、「空き家・空き地等の遊休不動産の増加・既存ストックの老朽化」、「新技術の活用・浸透」など9項目を、また、不動産市場の変化では、「消費者ニーズの変化」、「企業ニーズの変化」、「投資家ニーズの変化」の3項目をそれぞれ掲げています。

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図表1 不動産業を取り巻く市場環境の変化

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図表2 不動産市場の変化

これからの不動産業ビジョン

本ビジョンでは、不動産業の将来像を、「豊かな住生活を支える産業」、「我が国の持続的成長を支える産業」、「人々の交流の「場」を支える産業」と位置付けた上で、その実現に向け官民が共通で認識すべき目標として「「ストック型社会」の実現」、「安全・安心な不動産取引の実現」、「多様なライフスタイル・地方創生の実現」など7項目を掲げました。
また、官民共通の目標を実現させるために、「民」と「官」の役割をそれぞれ掲げ、「民」の役割として、「信頼産業としての一層の深化」、「他業種や行政との連携・協働を通じた“トータルサービス”の提供」など4項目を位置付けた上で、業態ごと(開発・分譲、流通、管理、賃貸、不動産投資・運用)にその役割を整理し、「官」の役割として、「市場環境整備」、「社会ニーズの変化を踏まえた不動産政策の展開」、「不動産業に対する適切な指導・監督」の3項目を位置付けた上で、2030年に向けて重点的に検討を要する、10の政策分野にわたる課題を整理しています。

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図表3 これからの不動産業ビジョン

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図表4 民の役割

『不動産最適活用』について

本ビジョンにおける『不動産最適活用』とは、社会経済情勢が急速に変化する中にあっても、時代や地域のニーズを的確に把握し、それらに応え得る不動産を形成することや、そうした不動産が社会において最適に活用され、個人・企業・社会それぞれにとっての価値創造の最大化が図られることを意図して、副題として採用しております。
例えば、下記のような内容は『不動産最適活用』の一例と言えます。

○空き家・空き地など遊休状態にある不動産を地域活性化に資する形で有効活用すること。

○高齢者向け住宅、福祉・医療・物流施設など時代の要請に応える不動産を供給し、あるいは、改修・改築すること。

○シェアリング・エコノミーの台頭等を踏まえ、時間単位で借主を募集し、不動産を貸し出すこと。


不動産は、生活や経済活動等の基盤となる「場」である以上、それらの『最適活用』を促すことが、社会全体の生産性向上につながると考えられ、人口減少が進むこれからの時代にはますます重要な視点になります。

きたるべき令和時代においては、少子高齢化・人口減少の進展など不動産業を取り巻く環境は一層厳しさを増すと推測されますが、人々の生活や企業活動を支えるのは常に「不動産」であり、これは、いつの時代にあっても不動産に期待された普遍的な役割であるといえます。
今後は、本ビジョンに基づき、不動産業の将来像の実現に向けて、不動産業に関わる関係者すべてが連携し、それぞれの立場で課題の解決に向けた取り組みの推進が期待されます。

※執筆の内容は、2019年5月末時点によるものです。

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