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「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会」を開催 法人間売買取引の社会実験の結果及び賃貸取引の本格運用後の実施状況並びに個人を含む売買取引の取り扱い等について意見交換を実施

2019年3月13日

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国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
 

宅地建物取引業法(以下、宅建業法)では、取引の相手方が宅地建物に係る権利関係や取引条件等について十分理解して契約を締結できるようにするため、契約締結前に宅地建物取引士が重要事項の説明を行うことが義務づけられており、これは従来「対面」で行われてきたところです。
国土交通省では、テレビ会議等の「IT」を活用した重要事項説明を可能にするため、「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験」の結果検証を目的とした、多方面の有識者や実務家からなる「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会」を設置し、2017年3月の検討会のとりまとめ(※1)に基づき、法人間売買取引については2017年8月より社会実験を再実施し、賃貸取引については2017年10月より本格運用(※2)を開始しました。
このたび、2019年2月に5回目となる検討会を開催し、これまでの社会実験の結果等を踏まえ、個人を含む売買取引でも社会実験を開始することや、宅建業法第35条、第37条に規定する書面の電磁的方法による交付の社会実験を行うこと等が決定されましたので、ご紹介します。
※1「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験」についてはVOL.103を参照
※2「ITを活用した重要事項説明の本格運用開始」についてはVOL.108を参照

法人間売買取引を対象とするIT重説に係る社会実験の結果

ITを活用した重要事項説明(IT重説)とは、宅建業法第35条に基づき宅地建物取引士が行う重要事項説明を、テレビ会議等のIT(パソコンやテレビ等の端末)を利用して、対面と同様に説明・質疑応答を行うものです。
このIT重説による法人間売買取引に係る社会実験を、2015年8月31日~2017年1月31日までと、2017年8月1日~2019年1月31日までの2回(計2年11ヶ月)実施したところ、実施件数は3件でした。このうち2件は買主が宅地建物取引業者であり、2017年4月から宅建業法第35条第6項の規定により重要事項の説明が不要な取引となっています。残る1件についても、土地のみの売買で価格も低額、説明内容も簡単なものでした。詳細は下記添付のとおりです。

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図表1 法人間売買取引を対象とするIT重説に係る社会実験の概要

賃貸取引の本格運用後の実施状況

2017年10月からのIT重説の本格運用実施以降、IT重説専用システムサービスを提供している主な事業者によると、専用システムを介して実施された賃貸取引のIT重説の実施件数の合計は、25,607件(2019年1月末現在)に上り、かつ、免許行政庁等に対するIT重説を起因としたトラブルの相談件数は0件となっています。

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図表2 IT重説の実施を把握した件数

検証結果を踏まえた今後の対応

●法人間売買取引

法人間売買取引の社会実験件数が3件にとどまっており、IT重説による説明の理解状況、トラブルの発生状況等の検証を十分に行うことができないため、現時点においては、本格運用への移行の可否を判断するに足りる十分な結果が得られたとは言い難い状況です。このため、社会実験を継続実施することにしました。

●個人を含む売買取引

個人を含む売買取引については、2017年3月の「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会とりまとめ」において、「2017年度に開始する賃貸取引の本格運用の実施状況、法人間売買取引の社会実験の検討結果を踏まえて、社会実験又は本格運用を行うことを検証検討会において検討することとする」とされています。
法人間売買取引の社会実験の結果からは、個人を含む売買取引の社会実験の実施の可否を判断するに足りる十分な結果が得られたとは言い難いですが、一方で、賃貸取引の本格運用については、実施件数が着実に積み上がり、かつ、トラブルなく安全に取引が行われていることが認められます。
そこで、個人を含む売買取引のIT重説の社会実験については、取引の安全性を担保するため、賃貸取引の本格運用のマニュアルを参考として、実施する際に安全に行うための必要なルール等の準備措置を行ったうえで、社会実験を実施することにしました。実施期間は2019年6月より概ね1年間を予定しています。

重要事項説明書等(35条、37条書面)の電磁的方法による交付に関する社会実験の実施について

「IT利活用の裾野拡大のための規制制度改革集中アクションプラン」(2013年12月IT総合戦略本部決定)では、不動産取引における重要事項説明に際して対面原則の見直しとともに、「契約に際して交付する書面の電磁的方法による交付の可能性についても検討」とされていたところです。このため、本格運用が行われている賃貸取引に限り、宅建業法第35条及び第37条に基づき交付する書面の電子化の可否等について、次のように社会実験を行ない、検討を進めることにしました。

【社会実験の実施方針】

1.  実施対象:賃貸取引(対象物件の制限は設けない)
2.  対象事業者:事前に登録した宅地建物取引業者
3.  実施期間:2019年5月より概ね3ヶ月を予定
4.  実験方法:今後作成する「重要事項説明書の電磁的方法による交付に係る社会実験のためのガイドライン」に基づき実施。
【主な特徴】
・重要事項説明書等を電子化したファイルに電子署名を施し、説明の相手方に交付し、同ファイルを用いて重要事項説明を実施。
・現行制度の対応として、宅地建物取引士が記名押印した重要事項説明書も合わせて送付。
・重要事項説明は、IT重説により実施。
5.  検証方法:宅地建物取引士及び説明の相手方に対するアンケート調査等の結果に基づき、「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会」にて検証。

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図表3 重要事項説明書等の電磁的方法による交付に係る社会実験の流れ

社会実験の全体スケジュール

ITを活用した重要事項説明に係る社会実験は下記(1)~(3)により実施します。
(1)法人間売買取引の社会実験は継続して実施(個人を含む売買取引と並行実施)
(2)個人を含む売買取引の社会実験は2019年6月を目途に実施(1年程度実施)
(3)電子書面交付の社会実験(賃貸)は2019年5月を目途に実施(3ヶ月程度実施)

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図表3 社会実験の全体スケジュール

※執筆の内容は、2019年2月末時点によるものです。

国土交通省


詳しくは、国土交通省のホームページ「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会」を参照ください。

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