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スーパー・メガリージョン構想検討会中間とりまとめの公表について 人口減少社会にうちかつスーパー・メガリージョンの形成に向けて構想検討会の中間とりまとめを公表

2018年10月10日

Report
国土交通省 国土政策局 総合計画課
 

平成30年7月26日、スーパー・メガリージョン構想検討会中間とりまとめ「人口減少社会にうちかつスーパー・メガリージョンの形成に向けて」が公表されました。今回はその内容についてご紹介します。

リニア中央新幹線とスーパー・メガリージョン構想について

我が国は、これまで全国総合開発計画(1962年閣議決定)から、第二次国土形成計画(全国計画)(2015年閣議決定)に至るまで、国土を取り巻くその時々の情勢を踏まえた長期構想を策定し、国土政策を進めてきました。
第二次国土形成計画(全国計画)では、現在建設中のリニア中央新幹線(以下、「リニア」)について、「リニア中央新幹線の開業により東京・大阪間は約1時間で結ばれ、時間的にはいわば都市内移動に近いものとなるため、三大都市圏がそれぞれの特色を発揮しつつ一体化し、4つの主要国際空港、2つの国際コンテナ戦略港湾を共有し、世界からヒト、モノ、カネ、情報を引き付け、世界を先導するスーパー・メガリージョンの形成が期待される」とされています。これを受け、国土交通省では、2017年8月、スーパー・メガリージョン(以下、「SMR」)構想検討会(座長:家田 仁 政策研究大学院大学 教授)を設置し、検討会委員及び17名のゲストスピーカーによる意見交換を進めてきました。

図をクリックすると拡大表示されます
図表1 リニア中央新幹線の概要

リニア中央新幹線による劇的な時間短縮がもたらすインパクト

これから我が国は、世界で激化する都市間競争やアジアダイナミズムの進展に加え、産業構造や価値観の転換等、様々な変化に直面していくことになります。そうした中、リニアによる劇的な時間短縮が我が国にもたらすインパクトについて、以下のとおり整理しました。

●フェイス・トゥ・フェイスコミュニケーションが生み出す新たなイノベーション

第四次産業革命がもたらす産業構造の変化によって、各産業の分野間の融合と「モノをつくる」から「価値をつくる」社会への転換が進む中、我が国はイノベーション創出により付加価値を高め、生産性を向上させていくことが求められます。新たなアイデアやビジネスの種(シーズ)を生み出すためには、様々な分野の人との積極的なフェイス・トゥ・フェイスコミュニケーションを通じた「予定調和なき対流」が重要となり、リニア開通がもたらす移動時間の劇的な短縮は、こうした「価値をつくる」ための試行錯誤に必要な交流時間の拡大等につながることが期待されます。

●「時間」と「場所」からの解放による新たなビジネススタイル・ライフスタイル

リニアの開通による劇的な時間短縮は、AI、IoT化等の進展とあいまって、これまでの働き方や暮らし方を制約していた「時間」と「場所」から人々を解放し、多様な選択肢をもたらすことが期待されます。加えて、大都市に住みながら地方のサービスを享受したり、地方から大都市への通勤や通学、二地域居住等、「都市と都市」や「都市と地方」等にまたがった新しいビジネススタイル、ライフスタイルが生まれる可能性もあります。また、こうした地域内外の多様な人材の交流・対流が、新たな価値を創造し、持続可能な社会の構築に寄与していくことも期待されます。

【ゲストスピーカーの発表要旨】 大和ハウス工業株式会社 芳井 敬一代表取締役社長 大和ハウス工業株式会社 芳井 敬一代表取締役社長
  • リニアが開業する時代には、家やコミュニティ、通勤の概念も変わっていく。自動運転技術の進展や在宅勤務の広がり等を通じて、通勤の概念や本社の立地も変化していくことが見込まれる。平均寿命が延伸する中で、100歳まで過ごす家の形、高齢者中心のコミュニティについて考えることも必要。
  • 中間駅には人を呼び込める何かを持つことが求められる。これまでは単身向け賃貸アパートに始まり、ファミリー向け賃貸マンション、分譲マンション、持ち家一戸建てという「住宅すごろく」が一般的だったが、これからは、「好きな場所」に「好きな形態」で住み替えるという住まい方、家自体が移動していくような未来もありうる。

(平成30年3月22日 第9回SMR構想検討会)

●海外からの人や投資の積極的な呼び込み

激しいグローバル競争の中で、我が国が経済的に確固たる地位を確立するためには、海外から企業や人材、投資を積極的に呼び込んでいく必要があります。また、国内の各研究拠点を結ぶナレッジ・リンクの形成により、新たな価値と成長産業を生み出し、世界に展開する成長のプラットフォームとなることが期待されます。観光面では、全国の高速交通ネットワークとつながることで、訪日外国人旅行者の地方への誘客の促進が期待されます。

●災害リスクへの対応

リニアの開通は、東海道新幹線とともに三大都市圏を結ぶ大動脈の二重系化をもたらすほか、高速道路等とも有機的につながり、国土の骨格の多重性・代替性を強化することが期待されます。また、東京圏に集中する人口及び企業の中枢機能等の分散等に寄与することも考えられます。

スーパー・メガリージョンの形成により実現が望まれる将来の姿

SMR構想検討会では、上記のリニアによる劇的な時間短縮がもたらすインパクトを踏まえ、SMRの形成により実現が望まれる将来の姿について、以下のとおり整理しました。

図表2 スーパー・メガリージョンのイメージ図

●三大都市圏の一体化による巨大経済圏の誕生と我が国の経済の飛躍

リニアの開通により、三大都市圏は人口7千万人を超える市場規模を有する巨大経済圏となり、経済発展のコアとして成長していくことが期待されます。そのためには、各都市圏が個性を伸ばし、各分野の優れた企業や人材、投資の集積を目指す必要があるほか、都市圏同士が相互に連携し、その魅力を海外に発信していくことで、SMRの期待値を高めていくことが求められます。
また、中枢・中核都市等においては、三大都市圏とのつながりをより強固にしながら自らも世界に直結することで、更なる成長の拠点となることが期待されます。

●クリエイティビティと地域の魅力の融合による新たな拠点の誕生

中間駅は、多様な人材が活発に行き交う知的対流拠点となり、地域の強みと融合した産業の発展に寄与することが期待されるほか、その周辺地域は、大都市で働きながら自然豊かな地域で暮らしたり、ライフステージに応じた住み替え先となるなど、新たな居住の選択肢を提供する地域に発展していく可能性があります。また、Society5.0()の技術と豊かな自然環境が融合した、独自性と先進性の高い地域として発展を目指すことも期待されます。
狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱されたもの

●広域的に波及するスーパー・メガリージョンの効果

SMRの効果を広域的に波及させるためには、鉄道、高速道路、空港、港湾とのアクセス強化等、既存交通のストック効果を高め、リニア駅を交通結節の核とした高速交通ネットワークの形成が求められます。4つの主要国際空港については、リニアが三大都市圏を結ぶことで相互補完的に機能していくことが期待されるほか、東京・大阪間の旅客輸送ニーズの転換による新たな航空需要への対応や、東海道新幹線沿線地域の利便性向上も期待されます。加えて、自動運転等、新たなモビリティの活用も期待されます。
また、各都市圏、各地域が自らの個性を伸ばし、移動の価値を高めるとともに、濃密なフェイス・トゥ・フェイスコミュニケーションを生み出しやすい環境整備を進めていく必要があります。

将来の社会経済の有り様を正確に見定めることは容易ではありませんが、SMRの形成により期待される様々な可能性を実現していくためには、国、地方公共団体、民間企業等、様々な主体が、中長期的な視点に立ち、広域的な連携を構想しながら、今から積極的な行動を起こす必要があります。今後は、本中間とりまとめの内容を踏まえつつ、関係自治体、経済団体等と意見交換しながら、2019年夏頃の最終とりまとめを目指して、検討を進めていくこととしています。

※執筆の内容は、2018年9月末時点によるものです。

国土交通省


SMR構想中間とりまとめの全文及び参考資料、ゲストスピーカーの発表要旨については、国土交通省HP「スーパー・メガリージョン構想検討会」において公開しています。

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