消費者に対して、不動産取引に関する総合情報を提供したい
――国土交通省が支援する公的サイト「不動産ジャパン」が、4月から大きくリニューアルされましたが、どのような背景があるのでしょう?
消費者庁の設置などをはじめ、消費者保護の観点が行政の大きな課題となっています。国土交通省でも以前から、消費者に対して不動産取引に関する総合情報を提供することを、重要課題としていました。
今回のリニューアルは、業界団体が一体となって協力し、「不動産ジャパン」を使って消費者に広く、不動産に関する総合情報を提供するということで、国土交通省も支援をしています。消費者がこのサイトを見て、取引のための物件情報だけではなく、不動産取引についての基礎的な知識や、不動産に関連する行政の情報を把握してもらえればと思っています。
また、2008年9月から国土交通省・社会資本整備審議会の不動産部会でも、既存住宅の流通促進などについて具体的な検討を進めています。不動産の流通を促進することは、資産の有効活用という観点からも、個人のライフスタイルに応じた住み替えができる市場形成という観点からも、重要だと思います。その一環として、不動産ジャパンのリニューアルも位置づけられると思います。消費者が総合的な情報を得ることで、不動産取引に安心感を持っていただければ、不動産の流通促進につながると期待しています。
消費者が安心して不動産を取引するためのバイブルに
――新しい不動産ジャパンは、消費者が安心・安全に取引するための知識や情報が網羅されて、さながら「不動産取引の百科事典」のようですね。
消費者の皆さんに安心して不動産を取引していただくためには、不動産取引に必要な幅広い情報や知識を気軽に入手することができる、信頼性の高い情報インフラが必要ではないかと考えていました。それが不動産ジャパンというわけです。このことは、不動産ジャパンを運営している不動産流通近代化センターとも共有し、業界団体からの賛同も得られました。その点では、今回のリニューアルによって、公的サイトらしい、信頼性の高い情報提供サイトを目指しています。
消費者がこのサイトを見れば、物件情報を見る上での注意点はもちろん、住環境についても、相場についてもわかりますし、重要事項の説明や契約書の締結などの専門的な知識もわかります。不動産取引でわからないことがあれば「まずは不動産ジャパンを見る」というように使っていただきたいと思っています。
――不動産取引に臨む消費者にとって、不動産ジャパンが“心強いバイブル”になればよいということですね。
行政としては、不動産取引において、不動産会社と消費者とのトラブルを解消していく、という観点にも着目しています。そのためには、不動産会社において顧客視点に立った業務運営が徹底されることはもちろんのこと、消費者が正しい知識に基づいて取引に臨むことも大切だと考えています。不動産ジャパンを活用していただくことで不動産についての情報を提供させていただき、より健全な取引ができるようになることを期待しています。
サイトの信頼性を高めるために、情報の更新や各種サービスが必要
――コンテンツのリニューアルだけでなく、消費者に活用してもらえるサイトにするために、どんなことをお考えでしょうか?
もちろん、サイトを作りっ放しではいけないと思います。消費者や不動産会社が活用できるように、取引時のチェックリストなども盛り込んだコンテンツになっていますし、不動産ジャパンのPRや消費者と不動産会社向けに活用方法の広報を積極的に行うことも必要でしょう。
また、運営上では、物件情報の更新頻度を高めていかないと、情報の信頼性が損なわれてしまいます。不動産ジャパンに参加している業界団体においても、自主的にチェックや更新を行う体制を取っていただきたいと思います。
――今年の秋には、不動産会社検索や査定依頼サービスなども開始するとお聞きしていますが……。
自宅がどのくらいの資産価値を持っているかを知ることは難しいことですし、すぐに売る予定もないのに、いきなり不動産会社に行くのも、消費者の方にとっては勇気のいることでしょう。また、住み替えを考えている消費者に「この街にはこんなに地域の情報に詳しい不動産会社がある」ということを知っていただくことも重要です。
そこで、2009年10月頃に、不動産会社情報の検索と簡単な査定を匿名で依頼できるサービスの提供を予定しています。提供開始の時点では、一部の会社に限定されるでしょうが、こうしたサービスを利用した良い事例が増えることによって、サイトの信頼性が向上するのではないかと思っています。
国土交通省の最新の動向を、直接消費者に提供できる場にもしたい
――リニューアルの一環として、当コーナー「国土交通省・最新の動き」を設けられました。積極的に消費者へ情報発信されるのは、どういった目的でしょう?
不動産取引にかかわる人に、国土交通省が直接情報を発信するということは、消費者保護を強化していくという上でも、大切な取組です。このコーナーは、国土交通省のホームページなどで発信するだけでなく、不動産取引をしたい人に向けて、我々が直接情報提供できる良い場だと思います。不動産取引とは直接関係がないテーマもあるかもしれませんが、消費者の方々により多くの情報を提供させていただきたいと考えています。
※情報提供日:2009年2月
インタビューの内容は、2009年2月時点の取材によるものです。
注:平成27年4月1日から(公財)不動産流通近代化センターの名称は(公財)不動産流通推進センターに変更されました。