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VOL.87
空き家にしない「実家の活用方法」
執筆住まい・まちづくり研究家 桑島良紀(明海大不動産学研究科博士課程)
2026
4.15
実家を相続したものの、自分は別の場所に住んでいる――。こうしたケースは珍しくありません。「実家、どうする?」と考えながらも、結論を先延ばしにしている方も多いのではないでしょうか。放置すれば、実家はやがて空き家になってしまうこともあります。相続後の実家、売る?住む?貸す?あなたならどうしますか。
国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査」によると、空き家の取得理由で最も多いのは相続で、全体の約6割を占めています。相続以外でも、実家に住んでいた親の入院や施設に入所したことをきっかけに空き家になるケースがあります。実家が空き家になることは決して珍しいことではありません。
一方、同じ調査では、相続前に兄弟や親族と実家の扱いについて話し合っている人は2割強にとどまっています。話し合いをしていない場合、空き家になる割合は話し合いをしている場合の約1.5倍に上るとされています。実家を空き家にしないためには、事前の話し合いが重要だといえるでしょう。
ただ、何から始めればよいのか分からないという人も多いはずです。その参考になるのが、国などが公開している「住まいのエンディングノート」(話題の不動産キーワードvol.68)です。実家の管理や相続に備えて整理しておく情報や制度などがまとめられています。
最も割合が多いのは「相続」。このうち7割超が1980年以前の新耐震前の建物が占めている
(出所=国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」)
事前の話し合いが大事ですが、実際にはなかなか難しい面もあります。相続が絡むので、親が元気であれば話をすること自体を嫌がるということもあるでしょう。そうしているうちに実家が空き家となり、どうするのか決まらないまま放置してしまうケースもあります。
では、空き家を放置するとどのようなデメリットがあるのでしょうか。
まずは、放置する期間が長引けば建物の老朽化が進んでいきます。老朽化が進むほど売却が難しくなり、何かに使おうと思っても修繕にお金がかかります。ボロボロのまま放置すれば迷惑な空き家になってしまいます。虫や生き物が住みついたり、ゴミが捨てられたりしていきます。結局、これらを処分するために費用がかかってしまいます。
さらに、空き家を放置しておくと固定資産税が上がる場合や、強制的に取り壊され、その費用を請求されるケースもあります。
いずれにせよ、空き家を長い期間、放置しておくことには大きなデメリットを覚悟しなければなりません。
空き家は放置されると建物が老朽化して様々なデメリットがある
では、実家を空き家にしないために、どのような選択肢があるのでしょうか?
・手放す
一つは、売却することです。その際には、売却が見込めるエリアなのかチェックする必要があります。建物がある状態と更地の状態のどちらのほうが売りやすいかも確認が必要です。更地のほうがいい場合は、建物を取り壊す費用も考えておかねばなりません。信頼できる不動産会社を知っているのであれば、いろいろと相談できると思います。
売却が難しい場合は、お金を払って引き取ってもらう「不動産引き取りサービス」(話題の不動産キーワードVOL.78)もあります。このサービスは注意する点も多いので事前に十分に情報を集めておくことが重要です。
・住む
売却をしない場合の選択としては、自分や家族が住むことでしょう。場合によってはリフォームが必要になるかもしれませんが、かつて住んでいた地域でしたら近隣との付き合いも問題は起きにくいでしょう。立地によっては、親と同居する二世帯住宅という選択もできます。リモートワークの普及で実家が地方であっても現実的な選択肢になっています。また、平日は都市部で生活し、休日は地方の実家に行く二地域居住もいいかもしれません。
・活用する
貸し出すという活用方法もあります。建物の状態が良ければ、家財を整理した後に、そのまま賃貸住宅として貸し出すことができるでしょう。ただ、水回りを中心に、古くなっている場合にはリフォームをして貸し出すというのが現実的な選択肢になると思います。賃貸住宅として貸し出す場合は、一定期間後に契約が終了する定期借家という手法もあります。住宅として貸し出す以外でも、古民家カフェや民泊として貸し出すことも可能かもしれません。
ここまで空き家の利活用を選択肢としてみてきましたが、何もしないというのも選択肢の一つです。この選択肢は実家をどうするのか決められなかった場合の現実的な選択肢です。管理をしっかりとして、将来的に売却やリフォームなどをできるように維持していくことが大前提になります。
実家を賃貸住宅として貸し出すという選択肢とリフォームする選択肢について、もう少し深掘りしていきます。前述のとおり、賃貸として貸し出す場合、何らかのリフォームが必要になるケースが一般的でしょう。その場合、リフォームの費用や維持管理の費用が賃料で回収できるかを事前に計算する必要があります。自分で計算することが前提ですが、市場にあった適切な賃料を設定できるのかは別の問題です。不動産会社などプロの力を借りるのが賢明でしょう。
リフォームをする場合も自分で住むケースを除けば、どのようなリフォームをすればいいのかを検討する必要があります。住宅以外で貸すケースとして、たとえば都市部以外でも、カフェなどの飲食店や民泊施設などが外国人観光客のニーズをつかめるかもしれませんし、昨今話題の二地域居住希望者にも需要があるかもしれません。ただ、住宅として貸す場合とは、リフォームする内容や費用が変わってきます。どのような活用方法が地域の不動産市場にマッチしているのかは、プロの意見を参考にする必要があるでしょう。
このように、実家を空き家にしないための選択肢は数多く存在します。その選択肢を適切に選ぶには、繰り返しになりますが、事前の準備が必要になります。家族などとの話し合いはもちろんですが、専門的なことはプロの意見を採り入れることが大切です。信頼できる地域の不動産会社はもちろんのこと、自治体の相談窓口をインターネットで探してみるといいでしょう。
例えば「東京都 空き家 相談窓口」で検索すると、東京都住宅政策本部の「東京都空き家ワンストップ相談窓口」が検索結果として表示されます。調べたい自治体に置き換えて「●●●市(区) 空き家 相談窓口」などと検索してみてください。
また、各都道府県の宅地建物取引業協会、全日本不動産協会などでは、一般消費者向けの相談窓口や情報提供を行っている場合があります。こうした窓口を活用し、早めに情報を集めておくことをおすすめします。