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VOL.190「不動産業による空き家対策推進プログラム」について

低廉な空き家等に係る媒介報酬規制の見直しを行いました

Report
  • 国土交通省
  • 不動産・建設経済局
  • 不動産業課

2024

9.11

vol.189で紹介したとおり、国土交通省では、本プログラムの一環として、宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第46条第1項の規定に基づき国土交通大臣が告示で定める媒介報酬の上限額について改正が行われ、本年(2024年)7月1日から施行されました。今回はその内容についてご紹介します。

改正までの経緯

宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号。以下「宅建業法」という。)では、宅地建物取引業者が不動産の売買や賃貸借等の媒介・代理の依頼者に請求できる報酬額に上限を設定しております(宅建業法第46条)。
具体的には報酬告示においてその額が規定されており、原則として、宅地建物取引業者が、売買取引について依頼者の一方から受けることのできる報酬額は、物件価格に応じて一定の料率を乗じて得た金額を合計した金額以内であり、また、賃貸借取引に係る報酬額について依頼者の双方から受けることのできる報酬の額の合計は、1ヶ月分の借賃に1.1を乗じた金額以内としております。
2017年12月には、遠隔地における老朽化した空き家の現地調査等には通常より調査費用等を要するにもかかわらず、物件価額が低いために成約しても報酬が伴わず赤字になるなど、媒介業務に要する費用の負担が宅地建物取引業者の重荷となって空き家等の媒介が避けられる傾向にあった事を踏まえ、報酬告示を改正(2018年1月1日施行)し、売買取引の媒介のうち、物件価格が400万円以下の宅地・建物であって、その媒介において通常の売買取引の媒介と比較して現地調査等の費用を要するものについては、売主である依頼者から受けることのできる報酬額の上限について、原則の報酬の上限額に当該現地調査等の費用に相当する額を上乗せした額とすることができる規定を創設しておりましたが、今般、プログラムの一環として、改めて報酬告示を改正し、本年(2024年)7月1日から施行されました。

媒介報酬規制の見直しの概要

空き家等に係る媒介報酬規制の見直し

この改正により、まず、物件価格800万円以下の宅地・建物の売買取引の媒介については、当該媒介に要する費用を勘案して、原則の上限を超えて、30万円の1.1倍を上限として報酬を受領できるようになりました。この特例は、上記の2017年12月創設の低廉な空き家等に係る特例を改正して設けたものであり、改正前と比較して、大きく3つの点で違いがあります。

  • 対象となる低廉な空き家等の定義を400万円以下から800万円以下へと拡大し、併せて報酬の上限額を18万円の1.1倍から30万円の1.1倍へと見直し。
  • 改正前の「通常の媒介と比較して要する」「現地調査等の」費用に限らず、当該媒介業務に要すると見込まれる費用の全てを勘案して受領可能。
  • 売主から受ける報酬に加え、買主から受ける報酬についても特例の対象に追加。

なお、「低廉な空き家等」は、改正前の特例と同様、あくまでも物件価格のみで判断されるものであり、800万円以下であれば、宅地・建物の使用の状態を問わず、さらに宅地のみであっても対象に含まれます。
次に、賃貸借取引の媒介についても、新たに長期の空き家等についての特例が創設され、貸主(空き家等の所有者)から受ける報酬に限り、原則の上限(貸主・借主合計で借賃1月分の1.1倍)を超えて、最大で借賃1月分の1.1倍を上乗せして報酬を受けることができるようになりました。特例の対象となる「長期の空き家等」は、①現に長期間にわたって居住・事業等の用途に供されていないもの、②将来にわたり居住・事業等の用途に供される見込みがないもの、のいずれかに該当するものです。戸建の空き家だけでなく、分譲マンションの空き室や、使われていない宅地等も対象となりますが、賃貸集合住宅の空き室については、事業の用途に供されていると解されることから、長期の空き家等には該当しません。
なお、これらの特例に基づき報酬を受ける際は、媒介契約の締結時に、報酬額について依頼者に説明し、合意する必要があることに、特に留意が必要です。例えば、宅建業法第34条の2第1項の規定に基づき交付する書面等(媒介契約書)において、報酬額のほか、特例を活用する旨を注記し、依頼者に説明を行う等の方法が考えられます。

媒介報酬とは別の関連業務について

「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(通達)の改正(令和6年7月1日施行)

プログラムでは、不動産業者の強みである包括的な課題解決の提供を後押しするため、空き家等の所有者のニーズに対応して行う媒介業務以外の関連業務についても、その実施の促進を図ることとしています。
一つは、不動産業者が所有者から空き家等の管理を受託する場合の標準的なルールとして、新たに「不動産業者による空き家管理受託のガイドライン」を策定したところであり、所有者からの信頼を得て適正な管理サービスを提供する事業者の育成を図ります。もう一つは、媒介業務に先立って、又は媒介業務とは別に、空き家等の所有者に対して提供される助言、総合調整等のコンサルティングサービスについて、関係者のネットワークを通じた先進的な取組事例の横展開や、経験・知見の共有等を図ります。
さらに、これらの関連業務について、書面等により締結した契約に基づいて報酬を受ける場合には、媒介報酬とは別に報酬を受けることが可能であることを明確化するため、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の改正が行われ、本年(2024年)7月1日から施行されました。これにより、今後、不動産業者においては、その有するノウハウを活かした、空き家等の管理やコンサルティングサービスなど、媒介業務にとどまらないサービスの提供が促進されることが期待されます。

不動産マスター検索サービスについて

(公財)不動産流通推進センターが公表している、不動産マスター検索サービスでは、全国の「公認 不動産コンサルティングマスター(旧 不動産コンサルティング技能登録者)」を検索していただくことができます。検索サービスでは、業務対応可能地域や相談したい業務内容別にマスターの検索が可能ですが、本年(2024年)7月に、相談したい内容を選択する項目に、新たに「空き家対策分野」が追加されました。

「公認 不動産コンサルティングマスター」

公認 不動産コンサルティングマスターとは、宅地建物取引士、不動産鑑定士及び一級建築士のうち、「不動産コンサルティング技能試験」に合格し、かつ、不動産等に関する実務経験を有する等の基準を満たす者として、(公財)不動産流通推進センターの認定を受けた者であり、公正かつ客観的な立場から、不動産の利用等について、依頼者が最善の選択や意思決定を行えるように提案等をする「不動産コンサルティング業務」を実施することが可能な専門的な知識・技能を有しております。

国土交通省

詳しくは、国土交通省ホームページ「不動産業による空き家対策推進プログラムについて」を参照ください。

※執筆の内容は、2024年8月末時点によるものです。

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