トップ > 国土交通省・最新の動き > VOL.189 「不動産業による空き家対策推進プログラム」の概要
2024
8.19
国土交通省では、近年、喫緊の課題となっている空き家等の流通促進のため、「不動産業による空き家対策推進プログラム」を策定し、2024年6月21日に公表しましたので、その内容についてご紹介します。
人口減少や少子高齢化を背景として、近年、利用目的のない空き家(以下、空き家等)の数が大きく増加しており、都市部・地方部を問わず、今後も増加が見込まれる状況にあります。
空き家等を放置すると、劣化が急速に進行し使用困難となり、やがて周辺環境等に様々な悪影響を及ぼすこと等から、「使える」空き家等は、なるべく早く有効に利活用を図ることが効果的と考えられます。この点、不動産業者は、物件調査や価格査定、売買・賃貸の仲介など、空き家等の発生から流通・利活用まで一括してサポートできるノウハウを有しており、所有者の抱える課題の解決や、新たなニーズへの対応が期待されます。不動産業者がこうしたノウハウを発揮できるよう策定したものが「不動産業による空き家対策推進プログラム」です。
不動産業による空き家対策推進プログラム(以下、プログラム)では、不動産業への後押しを通じた空き家の流通拡大を図るため、「流通に適した空き家等の掘り起こし」と「空き家流通のビジネス化支援」の2点について、それぞれ施策を取りまとめています。
(1)流通に適した空き家等の掘り起こし
総務省が発表した「令和5年住宅・土地統計調査」では、空き家が900万戸と過去最多となり、そのうち賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家(いわゆる「その他空き家」)は385万戸と増加傾向にあります。こうした空き家等の中には、築年数が浅く、状態が良いものも一定数存在すると見込まれ、なるべく早期に利活用を図ることが必要です。一方で、空き家等の市場における流通状況についてみると、全国版空き家・空き地バンクにおける掲載物件が約1.3万戸と、いわゆる「その他空き家」の戸数(385万戸)と比較しても非常に大きな開きがあり、利用目的のない空き家等の多くは、マーケット(不動産流通市場)に出てきていない状況といえます。
このため、空き家等の所有者に対するアプローチを拡大し、流通に適した空き家等の掘り起こしの強化を図ることが重要な課題であり、プログラムでは、これに関して次の①~④の取組をまとめています。
①所有者への相談体制の強化
②不動産業における空き家対策の担い手育成
③地方公共団体との連携による不動産業の活動拡大
④官民一体となった情報発信の強化
中でもポイントとなるのは、不動産業者による相談体制の強化です。空き家や、分譲マンションの空き室の所有者は、相続で取得する者が多く、空き家等の所在地から遠方に居住しているケースも見られます。こうした所有者に対しては、空き家等となって日が浅い早期の段階(相続発生前の空き家予備軍の段階を含む。)から、気軽に相談でき、適切なアドバイスや専門家の紹介等のサポートを受けられる相談窓口が、全国それぞれの地域において十分に用意されることにより、相談機会の拡大を入口とした掘り起こしの効果が強く期待されます。この相談体制の充実こそ、不動産業の強みである、空き家等について包括的な課題解決を提供できる点や、不動産業関係団体の全国的なネットワークを、最も活かすことができる取組であると考えられます。
(2)空き家流通のビジネス化支援
(1)の相談体制の強化を含め、不動産業において空き家等の流通拡大に向けた取組を進めるためには、こうした取組がビジネスとしても成り立ち、持続可能であることが不可欠です。しかし、多くの不動産業者にとって空き家の取扱いについては、業務上の負担が大きい一方で収益性が低いというビジネス上の課題があり、積極的に空き家の流通等に係る取組を拡大することが難しい状況にありました。この点に関し、プログラムでは次の①~④の取組をまとめています。
① 空き家等に係る媒介報酬規制の見直し
②「空き家管理受託のガイドライン」の策定・普及
③ 媒介業務に含まれないコンサルティング業務の促進
④ 不動産DXにより業務を効率化し、担い手を確保
中でもポイントとなるのは、空き家等に係る媒介報酬規制の見直しと「空き家管理受託のガイドライン」の策定となります。媒介報酬規制の見直しに関しては、宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第46条第1項の規定に基づき国土交通大臣が告示で定める媒介報酬の上限額について改正が行われ、本年(2024年)7月1日から施行されました。この改正により、まず、物件価格800万円以下の宅地・建物(低廉な空家等)の売買取引の媒介については、当該媒介に要する費用を勘案して、原則の上限を超えて、30万円の1.1倍を上限として報酬を受領できるようになりました。また、空き家管理受託のガイドラインに関しては、不動産業者が所有者から空き家等の管理を受託する場合の標準的なルールの普及を図るため策定されました。
上記①空き家等に係る媒介報酬規制の見直し ②「空き家管理受託のガイドライン」の策定・普及の詳細については、次号vol.190以降にてご説明します。
空き家等の流通・活用の促進においては、不動産流通に関する優れたノウハウを有する宅地建物取引業者の役割が重要と考えています。空き家対策における課題について整理・検討を行い、不動産業による空き家等の流通の取組を後押しできるような環境の更なる整備に努めてまいります。
詳しくは、国土交通省ホームページ「不動産業による空き家対策推進プログラムについて」を参照ください。
※執筆の内容は、2024年7月末時点によるものです。
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