トップ > 国土交通省・最新の動き > VOL.175 『「ひと」と「くらし」の未来研究会』について(2)
2023
6.14
国土交通省では、行政及び不動産業界・不動産管理業界が、地域に新たな価値を創造し、未来に「幸せなくらし」を提供し続けていくにあたっての役割や可能性について考えていくため、『「ひと」と「くらし」の未来研究会』を2021年5月に立ち上げました。
VOL.158において、研究会での検討状況などについてご紹介しましたが、2023年3月にとりまとめを行いましたので、今回はその概要をご紹介します。
コロナ禍において、居心地がよい日常の「幸せなくらし」を実現するには、各地域に住まい、集う「ひと」に着目し、「くらし」に関わるあらゆる産業分野や地域づくりの担い手が連携することで、地域の新たな価値や可能性を創造していくことが必要です。 そこで、民間の実務者の最先端の知見や事例を集め、従来の行政にはない発想・視点から自由闊達に議論する場を設けるため、5名の実務家等をコアアドバイザーと位置づけ、関係協会等の皆様にもご参画いただきました。
これまでの研究会での議論を踏まえ、不動産業・不動産管理業における新たな地域価値創造に向け、以下3つの方向性に沿って取り組んでいきます。
(1)不動産業者等の「共創」の見える化の推進
不動産業者等は、人々のくらしを支える身近な存在であり、共創の取り組みの中心的な役割を担うことができます。各地域に住まい、集う「ひと」と、人々の「くらし」の舞台である地域の両面に接点を持つ不動産業者等が幸せなくらしの場を創出する取り組みを支えるため、人々が認知し、評価し、選択できるよう、そうした取り組みを見える化する仕組みを創出・改善していくことが重要です。
(2)コミュニティ財としての空き家の管理・活用の推進
空き家は、適切に管理し、活用の仕方を工夫すれば地域コミュニティになくてはならないものとなり得る資源です。不動産業者等が中心となり、市町村等公的主体と連携して相続等を契機に増加する空き家の放置を防ぎ、共創による活用へとつなげていくことが必要です。
(3)地域の宝となる不動産を地域で守り育てるためのファイナンスの充実
築年数の古い建築物は担保価値が低く、信用力や資金力が乏しい者が活用を試みてもファイナンスによる支援を受けづらいという現状があります。一方で、歴史的・文化的な価値があったり、地域の人々等が新たな価値を見いだしたいと思ったりするような地域の宝でもあるため、そのような不動産を地域で守り育てるためには、地域の事情に応じて自治体が建築規制の緩和を進めつつ、担保価値の低い物件に対するファイナンスを充実させていく必要があります。
上記の3つの方向性のもと、以下5つの施策を提言(今後新たに講ずべき施策)として示しました。
(1)不動産業者等の「共創」の見える化の推進
○「地域価値を共創する不動産業アワード」での表彰・奨励
2022年度に国土交通省において創設された「地域価値を共創する不動産業アワード」について、「共創型サブリース」や「コミュニケーション・マネジメント」等を推進するため、表彰部門の再編を検討します。
○業界団体と連携した集合住宅のコミュニティ形成の状況を客観的に評価できる基準等の検討
人々のくらしを身近に支える不動産業者等が居住者同士や地域とのつながりを生み出す役割を果たすことを促すべく、業界団体と連携し、地域での防災に関する取り組み等の集合住宅のコミュニティ形成を客観的に評価できる基準等を検討します。
(2)コミュニティ財としての空き家の管理・活用の推進
○所有者等が空き家の管理を第三者に委託する場合の標準的な契約モデル、ガイドライン等の検討
空き家管理を専門的に行う事業者の確保・育成のため、事業者が行う業務の明確化と適切かつ標準的な業務のあり方を示すためのガイドライン及び標準的な契約モデルの作成等について2023年度内を目途に検討します。
○地方部での住宅宿泊管理業者の担い手育成に向けた規制緩和の実施
地方部で不足している管理業の担い手を確保するため、住宅宿泊管理業を的確に遂行するための必要な体制の要件として、所定の講習の受講修了者も新たに認め、2023年夏頃までに講習実施機関の公募を行うことにより、空き家の住宅宿泊事業による活用を推進します。
(3)地域の宝となる不動産を地域で守り育てるためのファイナンスの充実
○「京町家カルテ・プロフィール」及び「京町家ローン」の仕組みを参考にしたモデル事例の創出
築古物件の文化的・歴史的価値を公的な団体が評価し、その評価を基に物件の活用を資金面で支援する京都市の仕組みを始めとする担保価値評価の不足を補うことができる評価の仕組みの他地域での展開に向けて、既存の取り組みについての自治体や金融機関への周知・普及を図ります。また、築年数が古い建築物を活用して不動産ビジネスを行っている事業者が活動しているエリアの自治体や金融機関と意見交換等を行い、障壁となる点を具体的に把握するとともに、不動産特定共同事業の活用可能性やファイナンスを充実させる手段を検討し、モデル事例の創出を図ります。
研究会がスタートしたきっかけの一つである新型コロナウイルス感染による社会の混乱も沈静化し、終わりが見えてきましたが、共創で地域価値を生み出す取り組みの歩みを止めてはなりません。不動産業者等は人々のくらしを支える身近な存在であり、共創の取り組みの中心となり得る者です。
国土交通省としては、提言の実現に向けて取り組むとともに、コアアドバイザーとの間で、年1回程度、進捗状況について報告しフォローアップを行う場を設定することで、着実に「地域価値共創」が進展するよう努めて参ります。
詳しくは、国土交通省ホームページ「「ひと」と「くらし」の未来研究会 ~新たな地域価値創造に向けて~」を参照ください。
※執筆の内容は、2023年5月末時点によるものです。
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