トップ > 国土交通省・最新の動き > VOL.158 『「ひと」と「くらし」の未来研究会』について
2022
1.12
国土交通省では、行政及び不動産業界・不動産管理業界が、地域に新たな価値を創造し、未来に「幸せなくらし」を提供し続けていくにあたっての役割や可能性について考えていくため、『「ひと」と「くらし」の未来研究会』を2021年5月に立ち上げました。
今回は研究会での検討状況などについてご紹介します。
コロナ禍を経て人々の生活様式が大きく変化し、住まい方・働き方などのライフスタイルの多様化や人口の流動化等が進む中で、人と人とのつながりの希薄化や、くらしに対する満足度の低下、孤独の常態化などが深刻化しています。快適で心地よい状態、いわゆるウェルビーイングの実現のためには、それぞれの「ひと」が自分らしく充実した「くらし」を送れる社会を目指す必要があります。
そこで、人々の生活様式が刻々と変化していく今日において、「ひと」と「くらし」の未来を構想するべく、民間の実務者たちの最先端の知見や事例の紹介を中心に、従来の行政にはない発想・視点から自由闊達に議論する新たな研究会を設けることとしました。研究会には、「ひと」と「くらし」に関わる取り組みの最前線で活躍中の3名の実務家を中心に、関係協会の皆様にもご参画いただきました。
研究会では介護・福祉からエネルギー資源の循環、地域モビリティの在り方まで、あらゆる分野の実務家を招き、幅広く議論を行いました。各回での議論では、共通して「コミュニティ」がキーワードとなり、「幸せなくらし」を目指すうえで身近な「コミュニティ」がいかに大切であるかが示されたほか、将来自分たちの住む地域をどのように価値あるコミュニティにしていくか、といった視点が示されました。
そして、2021年6月に中間整理を行い、道路や交通、情報通信といったいわゆるハード的な要素を表すものとして通常用いられる「インフラ」同様、コミュニティは社会を構築するうえで必要不可欠なインフラと呼べるのではないかと考え、「コミュニティ」を「未来に向けた新たなインフラ」と位置付けました。
その上で、下図のとおり、「コミュニティ」の「空間」・「場」、すなわちインフラとしてのコミュニティの基盤を提供するのは、この分野のプロフェッショナルである不動産業界です。これからの不動産業・不動産管理業には、この図に示すように、あらゆる産業と連携を深めながら、地域づくりの中心的なプレイヤーとして参画することで、各地域の個性を見極めた「空間」・「場」を提供し、多くの人たちが参画できる「プレイフル」なコミュニティを創出することが求められます。すなわち、不動産業・不動産管理業は、建物や土地といったハードの売買・仲介・管理のみを行う産業ではなく、社会に必要不可欠なコンテンツや文化を創造し提供するクリエイティブな要素を併せ持つ産業であると結論付けました。
上記のような中間整理を行った一方で、「一歩を踏み出したいが何から始めてよいか分からない」、「プロジェクトが頓挫してしまった」という声もあります。
そこで、2021年10月からは『「ひと」と「くらし」の未来研究会Season2』を始動し、中間整理で示した理念を実践へとつなげるべく、不動産業・不動産管理業界で「一歩を踏み出す人を発掘し、巻き込む」をコンセプトに、新たに1名の実務家を加え、全国各地で「幸せなくらし」の実現に向けた取り組みの実地調査を行うこととしました。2021年11月末には、香川県三豊市・広島県尾道市にて実地調査を行ったところです。
業種間連携やコミュニティ形成において、何から始めてよいか分からないと思案している事業者や地方自治体を巻き込み、本研究会自体が「共に楽しみ・悩み・実行するプロジェクト」として、未来指向型の変革の価値や意義を考える一助となれば良いと考えています。
変化する暮らし方や多様化する個人のニーズに対応しながら、地域の価値を向上させていくにあたり、不動産業者・不動産管理業者はコミュニティ形成を支える、地域に必要不可欠な存在です。国土交通省としても引き続き研究を進めるとともに、この研究会の取り組みが次世代の業界を担う方の新たな一歩を踏み出す一助となり、ひいては不動産業・不動産管理業が「ひと」の「くらし」にますますの幸せをもたらす産業となることにつながるよう、これからも力を尽くして参ります。
詳しくは、国土交通省ホームページ「「ひと」と「くらし」の未来研究会 ~新たな地域価値創造に向けて~」 を参照ください。
※執筆の内容は、2021年12月末時点によるものです。
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