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VOL.85
住宅確保要配慮者家賃債務保証保険
執筆東京グリーン法律事務所 弁護士 伊豆隆義
2026
2.18
現在多くの賃貸住宅では、家賃保証事業者の家賃保証を前提に、賃貸借契約がなされている。住宅確保要配慮者(以下、要配慮者)の多くも家賃保証事業者の保証を求められることが多い。賃貸人としては、家賃不払いを懸念して、家賃保証事業者の家賃保証を求めるのであるが、要配慮者の場合、延滞リスクや原状回復未履行リスクを懸念して、家賃保証が困難となる例もあった。少子高齢化社会が進み、これからますます増えていくであろう要配慮者の住まいの問題。賃貸人にとってより安全な家賃保証、賃貸事業者にとっても延滞の心配が減り、要配慮者への賃貸物件の円滑な供給を促進することが期待される「家賃債務保証保険」についてみていこう。
2024年、誰もが安心して賃貸住宅に居住できる社会の実現を目指して、次の3つを柱に住宅セーフティネット法が改正された(話題の不動産キーワードVol.80)。
このうち1番目の柱を支える住宅金融支援機構による家賃債務保証保険制度とはどのようなものか、改正された点もあわせてみていきたい。
住宅金融支援機構の家賃債務保証保険制度とは、家賃債務保証事業者が、住宅セーフティネット法に規定する要配慮者の家賃債務を保証する場合に、同機構がその保証の保険を引き受ける制度。住宅セーフティネット法の改正に伴い、従来の「登録住宅入居者家賃債務保証保険」に加えて、「住宅確保要配慮者家賃債務保証保険」が新設された。
この新制度では、一般住宅も含めて、対象を限定せずに、家賃保証保険の付保が可能となった。また、原状回復費用も保険に含めることができることとなり、賃貸事業者にとっての懸念が減ることになる。
制度の概要は、下記の図及び表をみていただきたい。なお、図のとおり、この保険は、家賃債務保証事業者の保険であって、賃貸人や入居者向けの保険ではない。
家賃債務保証保険
【求償権】
住宅金融支援機構の家賃保証保険新旧対比表
(図・表とも住宅金融支援機構のホームページを参考に作成)
住宅金融支援機構の家賃保証保険を付保するためには、家賃債務保証事業者につき、同機構が保証保険約款で定める要件を充足する必要がある。
具体的には、
などがある。詳細は、同機構に確認してほしい。
要配慮者にとっては、そもそも住まいがみつからないということがもっとも大きな問題だ。もとより、要配慮者のためのセーフティネット住宅が拡充されていくべきだが、現実にはその供給は足りない。このたびの改正では、要配慮者が居住する場合には、一般の住宅であっても、認定債務保証事業者による家賃債務保証がなされる場合に住宅金融支援機構の家賃債務保証保険に加入できることが大きな特徴。民間賃貸住宅の大家にとっても、要配慮者に賃貸した場合に家賃債務保証が得やすくなるからだ。
また、従来、家賃債務保証保険は、家賃の保証だけであったが、改正法では、原状回復費用についても保証保険の範囲を拡大可能とした(保険料はアップする)。賃貸事業において、賃借人退去時の原状回復が大きな課題だが、これを解決する一助となると思われる。
この原稿を書いている時(2026年1月)に、明け渡し執行の現場で、入居者による執行官や立会人への殺傷という痛ましい事件の報道に接した。
この報道からはすべてをうかがいしれないが、今後、もし入居者が要配慮者であった場合でも、住宅セーフティネット法が存分に機能し、このような事件が起こらない社会になってほしいと心から願う。
貸す側も借りる側も安心できる、この住宅金融支援機構の家賃保証保険制度をうまく活用して、要配慮者への賃貸物件の供給が促進されることを期待したい。
(参考 住宅金融支援機構ホームページ https://www.jhf.go.jp/about/financial/yachinhoken/index.html)